華音ライダー龍騎 第五話 戦士たちの見解







夜の、校舎。
誰もいないはずのそこに、一人の少女がいた。

彼女の名は、川澄舞。

彼女にとって、この時間ここにいることは十年間積み重ねてきた日常だった。
ここで、やっていることも。

「・・・せいっ!」

舞は持っていた剣を渾身の力を持って振り下ろした。
そこには、何もない。
否。
そこには何もないように見えるだけだ。
そこに”それ”は存在していた。
彼女が魔物と呼ぶ、存在。
彼女はそれを討つ為にこの場所に居続けて来た。

・・・舞の剣はそこにいた魔物をかするのみだった。
だが、魔物はそれで危険を察したのか、すっ・・・どこかへと消えていった。

それを感じ取った舞はふう、と安堵の息を洩らした・・・

・・・・・その時。

キィィィィィ・・・・・ィィィィィン・・・・・・・!

その聞きなれない音が彼女の耳に入った。
音がした方を彼女は反射的に振り返った。
そこには、彼女が知りえない別の”魔物”がいた。

「・・・・・っ!!!」

彼女は本能的な感覚からか、剣の柄で、それが映っていた窓ガラスを撃ち割った。
・・・それが功を奏したのか。
その音はそれと同時に綺麗に消え去った。

「・・・・・あれは・・・・なに?」

舞の問いかけは返す者さえない廊下にただ響いて消えていった・・・





「・・・というわけで、今日はこれまで」

その担任・・・石橋の言葉に、教室にいた生徒達はそれぞれ開放感溢れる表情を浮かべた。
その瞬間を縫うように、石橋は言った。

「最近は物騒だから、早く家に戻るようにな」

朝にも、石橋は”その事”について触れていた。
念押しするようなその言葉で、彼らはその事実を改めて認識した。
だが、今のところは他人事に過ぎないのか、表情に特に変化はない。

「起立、礼」

学級委員である香里の声が響いて、その日の授業は幕を閉じた。

一週間の折り返しである水曜日の午後。
やっと半分・・・そんな気分で北川は席を立った。

「やれやれだな・・・」
「なんだもう疲れたのか?北川」

疲れた声を洩らした北川に、祐一が話し掛けてきた。

「今週の終わりまであと半分あるんだぞ。そんなんじゃもたないぜ」
「まあそうなんだけどな」

北川はそう言って困った笑みを浮かべた。

不可抗力とはいえ(しかも自分が原因ではない)割ってしまったガラスの代金を払うためにバイトを増やし、その際に拾ったカードデッキをめぐる様々な事についての思考に回す時間も増え、北川は心身ともに忙しい日々を送っていたのである。
日常から非日常へ、そしてさらにその非日常を含む日常への移行途中というややこしい状況・・・
疲れた声が洩れるのも止むを得ないところだろう。

・・・だというのに、今日は部活動があったりするのがさらに北川の心を重くしていた。

「・・・・・はあ・・・」
「重傷だな。
今日の部活は休んで早く帰った方が良くないか?」
「んにゃ。そうする方が気が滅入りそうだから行くさ。じゃな、相沢」
「・・・おう、また明日な」

北川は軽く手を上げて、祐一に背を向けて、教室を後にした。
・・・廊下に出たその時、扉の辺りで話し込んでいた香里と名雪にばったりと遭遇した。

「じゃな、美坂。またね水瀬さん」
「あら、今日は絡まないのね。
いつもなら鬱陶しいぐらいに何かしてくるのに」

冗談交じりに言った香里の言葉に北川は苦笑した。

「最近忙しくてな。お疲れモードなんだよ。
まあ、そういう日もあるさ」
「分かるよー。そういうときってあるよね」

うんうんと名雪が頷く様子を見て、香里にも苦笑が生まれ出た。
それを見て、北川はほう・・・と息を洩らした。
一時期、香里の様子がおかしくて見ていられなかった時期があった。
だが、この様子を見るとそれは解決したのだろう・・・北川はそう推察した。

「何よ、人の顔見て息を吐いて」
「いや、なんでもない。安心しただけだ」
「は?」
「んじゃ、改めて・・・・またな二人とも」

一方的にそう言って、北川はその場をパッと後にした。
香里は首を傾げながら、それをただなんとなく見送った。

「・・・なんだったのかしら」
「香里の事、心配してたんだよ、きっと。元気なかったから」
「そうなのかしらね。・・・まあ、どうでもいいけど」
「うわ〜、ひどいこと言ってるよ」
「・・・それより名雪。頼みたい事があるんだけど」

それまでの穏やかな表情を微妙に変化させて、香里は言った。
名雪の表情もそれにつられる形で硬化する。

「・・・なにかな?」
「前に話してた陸上部の先輩・・・その人のクラスはBだったわね?」
「うん・・・そうだけど・・・・?」

意図が見えない名雪は頭上にただ”?”を浮かべるばかりだった。
それに構うことなく、香里は言葉を続けた。

「その人からクラスの電話連絡表を借りてきて。学校側に直に聞く事はできそうにないから」
「・・・なんに使うの?」
「・・・・・ライダー同士の闘い。
その保険の一つとして、ね」

そう呟くように言った香里の表情は・・・ただ冷たかった。





「ん?」

北川はそこに思わず立ち止まっていた。

校舎の中なのに、そこだけ寒風吹きすさんでいた。
理由は見れば簡単であり、それが北川が立ち止まった理由だった。
ガラス窓に思いっきり穴が空いていたのである。
誰かがそこに狙いすませて割った・・・そんな感じだ。
何故そんなことが分かるのかというと、窓ガラスの割れ方が広くはなかったからだ。
ある一点・・・そこに綺麗な穴があり、そこからひび割れが派生していた。
偶然割れたのなら、こんな割れ方はしない。
あまりにも、綺麗すぎる。
例えるなら、銃弾で撃ち抜かれたようだった。
そんなことを考えていた北川の横を見知らぬ女生徒たちが通り過ぎていく。
その話声ははっきりと北川の耳に入った。

「あれってさ、例の川澄がやったんでしょ?」
「さあねー証拠は挙がってないらしいし・・・でも久瀬君はそう確信してるみたいよ」
「でもさ・・・・・」

聞き取る事ができたのはその辺りまでだったが、それで十分だった。

・・・川澄舞のことは、何度か北川の耳に入っていた。
あまり良くない噂ばかりだったが。

噂によれば、不良少女。
ガラスを叩き割ったり、学校の備品を破損したり、やった事を上げれば数限りない。
そして、本人もそれに関して弁明しない事から噂は尾ひれをつけて広がっていく一方だった。

だが。

(・・・悪い人じゃ、ないと思うんだけどな)

北川はかつて目撃した事があった。
登校の途中、川澄舞と思しき女生徒が学校に下りてきていた野犬に手を噛ませていた所を。
その場に居合わせた皆、川澄の事を悪く言っていたが、北川にはどう見てもその姿がみんなの言う”悪い事”には見えなかった。

あっという間の事で手助けできなかったことをいまだに北川は気にしていた。

(まあ、今考えても仕方ないか)

ふう、と今日何度目かの重い息を吐いて、北川は新聞部の部室へと歩き出そうとした。
その時だった。
ぼうっとしていたためか、北川はすぐ近くを歩く男子生徒にぶつかってしまった。

「・・・っと」
「不注意だぞ、気をつけたまえ」
「へ?は、はい。すみません」

いつもの北川ならその偉そうな口調にむっとしていたのだろうが、ぼうっとしていた負い目からか気にする事もなく、素直に頭を下げていた。
すると、その男子生徒は満足げな笑みを浮かべて、さっさとその場を去っていった。

北川はその先輩の顔に見覚えがあった。 川澄舞と対極的な意味で、彼は有名だったからだ。
生徒会長の久瀬。
彼はこの学校の生徒会の中心人物である。
ちなみの、この時期に三年生がまだ生徒会長というのは、この学校の特殊なシステム・・・卒業まで生徒会役員は継続されるというもの・・・によるものである。

彼は今の生徒会をまとめ上げ、この学校のためと、と数々の校則を新たに作るほどに生徒会活動に積極的だった。
その性質からか、不良生徒を嫌っており、件の川澄舞ともよく対立しているらしい。

「・・・ふう・・・」

その背中を見送って、なんとなく溜息を吐いた北川は再び目的地に向けて歩き出した・・・



「ちーす」

気のない挨拶とともに、北川は部室に入った。
そこにはすでにいつものメンバーが揃っていた。
・・・・・と言っても、七瀬留美と天野美汐の二人だけだが。

「遅いわよ。あんた私と同じクラスの癖に何でそんなに来るのが遅れるわけ?」
「七瀬が早すぎるだけだろうが。他にする事ないのか?この暇人」
「・・・死ぬ?」
「遠慮する」

いつものやり取りをしながら、北川は席についた。
美汐の一席分空けての隣に座る。

七瀬はホワイトボードの前に立って、ゴホンと咳払いをした。

「・・・前回、行方不明事件について、私たちなりに調べるというところで話は終わっていたわね」
「はい、そうです」
「まあ、実際の話。
私たちにできる事はたかが知れてるし、この新聞部のいつもの仕事もしなくちゃいけないわけだけど・・・」

新聞部のいつもの仕事。
それは校内新聞の作成、及び、その配布である。
他にも学校内の出版物の管理、その校正など実に仕事は多かったりするのだが、新聞部のメインはあくまで校内新聞を作る事、である。
その校内新聞の内容としては、校内のイベント内容の告知、校内だけでなく社会における事件の考察や意見などが主である。

指摘されるまでもなく、七瀬たちのやっている事は学生の領分を越えている。 だが、それでも。

「それはそれ、これはこれ。
私たちが追うと決めたからにはきっちりやるからそのつもりで」

にんまりと、七瀬は笑った。

「まあ、地道になるし、私たちがへーこらしてる間に警察が解決するのかもしれないけど・・・異論はないわね?」
「ありません」
「あったってやるだろ、お前」
「いい返事をありがと。
基本的に普通の新聞を優先、その合間をぬって調査・・・でいいわよね?」
「まあ、無難だな」
「そちらばかりを追って新聞部の活動がおろそかになって廃部、というは本末転倒ですからね・・・
多少酷ではありますが・・・止むを得ないでしょう」
「でも・・・今回は同時にやる事になりそうよ」

その七瀬の言葉を聞いて、北川はやっぱりそう来るか、と内心で頭を抱えた。

「聞いてるでしょうけど・・・この校内で行方不明者が数名出ているの。
家にも帰っていない。警察も捜索しているけど、見つかっていない。
多分これは、ここ最近起こっている、原因不明の行方不明事件と同質のものよ。
校外でなら難しいかもしれないけど・・・今回、この事件は校内で起こっている。
そして、この中のことなら、警察よりも私たちのほうが良く理解している。
だから・・・今回ばかりは、私たちが頑張らなければいけないと思う」

・・・今日新聞部に行きたくなくても来なければならなかった理由がこれである。
ここ数日の校内の騒ぎがミラーワールド絡みらしい事はライダーである北川からすれば火を見るより明らかだった。
となれば、この二人・・・特に七瀬はいてもたってもいられなくなり、すぐ調査に乗り出そうとするだろう。
だが、そうなると危険がついて回る。
校内の調査をして遅くまでここにいた分だけ、モンスターに狙われる可能性も高くなる。
・・・勿論そんな事が杞憂である可能性も捨てきれない。
だが、万が一そうなれば・・・取り返しがつかない。
もうすでに何人もの命が帰ってこない事態なのだ。
この上、知り合いの命まで奪われれば。

(俺が何のためにライダーになったんだか分からないじゃねーか・・・)

デッキがモンスターを索敵できる距離には限度がある。
だがその場所さえ限定できれば、そこに的を絞り、そのモンスターを潰せる可能性は高くなる。

そう思っていたからこそ、北川は今日は学校に泊り込んででもそのモンスターを倒そうと思っていたのだが・・・七瀬の動き、考えの速さはそれよりも一歩先となってしまったのである。

こうなってしまった以上、二人にきっちり張り付いておきつつモンスターが出たら迎撃するというシンプルなやり方しかない。
モンスターが校内にいると仮定できるのなら、別の場所に現れたとしても距離的にカバーできるだろうし、万が一の時のために往人を呼んでもいいだろう。
・・・そう北川は考えていたのである。

「・・・いなくなった人の共通点とかはないのですか?」

そんな北川の思考など知るはずもなく、美汐は言った。

「ん。ないことも、ないのよ。
少なくとも、この校内の事件に関しては。
いなくなった人たちはなんと言うか・・・
問題のある人たちばかりなのよ」
「・・・問題?」

そのフレーズが気になって、北川は思わず声を上げた。
それに対し、七瀬は顎に手を当てたいかにもなポーズで語った。

「そ。
校内外で傷害事件を起こしたり、万引きの常習犯だったり・・・そういう人たちがいなくなってるみたいなのよ。どーも。
犯人がいるとしたら世直しでも気取ってるのかしら?」

それを聞いて、北川は疑問を覚えた。
モンスターは基本的に人なら誰だっていいはずだ。
そうでなかったとしても、襲う人間がそういう人間ばかり、というのも腑に落ちない。

ミラーワールドがらみなのは間違いないだろう。
だが、そこには人の意志が見え隠れしているような・・・そんな感覚を北川は感じた。

・・・ミラーワールドにおける人の意志。
それは。

(まさかな。そんなはずはない。そんな理由、ないはずだ・・・)

それに思い当たった北川だったが、それは否定すべき事象だった。

「・・・ま、まあ、それはともかくとしてだな」

それをこれ以上考えまいと、北川は話を別の方向に向けた。

「実際問題、どうするつもりなんだ?
どうやって、この事件を調べる気なんだよ」
「この事件は一体何がなんなのかさっぱりわからないわ。
誘拐なのか、神隠しの類なのか・・・分からない以上、できる事は一つ」
「・・・それは?」
「地道に歩く事よ。
もし何かに巻き込まれたとするならそのときがチャンス。
巻き込まれないとしても、情報は集めなきゃいけないわけだから、結局歩く事になる。
まあ、そういうこと」
「・・・要するに」
「聞き込みついでの行き当たりばったり、ということか・・・はあ」

「そ・こ・で・な・ん・で・あ・ん・た・が・あ・き・れ・が・お・で・い・き・を・吐・く・の・か・し・ら・・・?!」
「おおお!のーもあぼうりょくぅー!!」

首を締められた上、体ごとシェイクされて、北川は悲鳴を上げた。





「・・・こっち、かしら」

香里は独り歩き慣れない道を歩いていた。

・・・あの後、名雪はすぐに自分の先輩に電話番号を聞きに行った。
香里にしてみれば、明日でも良かったのだが、止める間もなかったのである。

「・・・こういうとき、名雪の足の速さは役に立つんだか迷惑なんだか・・・」

ぼやいてはいるが、その表情には微かに笑みを浮べている。

まあ、ともかく。
名雪の持ってきた電話番号から”彼”の住所を突き止めた香里はとりあえずそこに向かう事にしたのである。
だが、この辺りはやや入り組んでいて少々分かり辛い所だった。
方向音痴というわけではない香里だったが、ここにはやや苦戦していた。

「・・・・・うーん・・・困ったわね・・・って・・・あれは・・・・」

香里がたまたま視線を向けた先。
そこには一軒の喫茶店があった。
なかなかにお洒落な感じで、入りやすそうな雰囲気を持っている。

「・・・・・そうね。そうしたほうがいいでしょうね」

ここに住んでいる人間ならこの辺りの事はわかるだろう。
ならコーヒー一杯と引き換えに道を聞くのもいいだろう・・・そう思って、香里はその喫茶店・・・”鳥の詩”に入る事にした。

からんからん・・・と音とたてて扉が開く。

「おーいらっしゃいー。何処でも好きな席に座ってなー」

関西弁の女性・・・言うまでもなく晴子である・・・・がカウンター席のむこうから笑顔で出迎えた。
香里は、店内を軽く見回しながらカウンター席に座った。

「見てのとおりの学生ですが、いいですか?」
「別に犯罪行為してるわけやない。問題なし、や。
それに、あんた以外に出入りしてる学生が少なくとも一人いるで」
「そうなんですか」
「んで、注文はなんにする?」
「あ、普通のコーヒーを一杯お願いします」
「よっしゃわかった。最初やからサービスでサンドイッチもただでつけたるけど・・・どない?」
「・・・いただけるのでしたら」

小腹がすいていたところだったので良かったのかもしれない。
香里はそう思いながら鞄を空いた席に置いた。

「観鈴〜居候〜客やから手伝いー」

その声に答えて、二人の男女が店の奥から出てきた。

黒っぽい服装で背が高めの青年とポニーテールが良く似合う穏やかな少女。
こちらも、言わずもがなの往人と観鈴である。

「なにすればいいのかな?」
「あんたはサンドイッチの用意。居候はこれ持ってき」
「・・・ああ」

そう言ってコーヒーカップの乗ったトレイを受け取った往人は、それを香里の下に運んだ。

「ほら、受け取れ」
「・・・あたし、客なんだけど」

往人の口調に半眼で香里は言った。

「知らん。俺はただカップを運ぶだけだ」

それに対し、往人は何でそんなに偉そうなのか問いただしたくなるほどに偉そうに答えた。

「・・・態度が悪いのは接客業として失格じゃない?」
「俺は態度が悪いわけじゃないぞ。態度がでかいだけだ」
「往人さん、それはなおのこと悪いと思う」

サンドイッチを持ってきた観鈴がにはは、と苦笑しながら突っ込みを入れた。

「ごめんなさい。この人、悪い人じゃないんですけど・・・・・」
「貴女が謝る必要はないわ。
それに実を言うと気にしてないし。あたしの友達にも、そういう人がいてね」

観鈴の謝罪を、香里は笑顔で受け入れた。
その笑顔がとても綺麗で、観鈴はこういう人と友達になれたらいいな、と思った。
だから、なのか。
香里と話していたいと思ったのか、関連のありそうな話題について思わず尋ねていた。

「あ、それはそれとして・・・あの・・・北川さんって知ってますか?
多分、同じ学校の人だと思うんですけど」

いきなり出てきた知り合いの名前に、香里は少なからず驚いた。

「え?北川って・・・北川潤君の事?」
「・・・頭にアンテナがついてる奴だ」

その往人の言葉で香里は確信した。
その容貌で北川を名乗る男はこの界隈ではあの男しかいない。

「・・・間違いなく、彼ね。
ふーん、北川君こういう所に出入りしてたの」
「あ、でも、来てくれるようになったのはつい最近なんですよ。
色々お世話になっちゃって・・・」
「違うぞ、観鈴。
こっちがお世話してやったんだろうが」
「そうでしょうね。
あの北川君が誰かをお世話できるとは到底思えないもの」
「あの、それは少し・・・」
「分かってくれるか」

香里の言葉にやや苦笑して観鈴が何か言いかけた瞬間、その言葉を打ち消して往人が言った。

「あんたもあいつの考え無しの行動に泣かされた事があるわけだな」
「泣かされた事はないけど、彼の考え無しの行動に辟易する事はあったわね」

二人は会話を交す内にお互いにフッと笑っていた。
・・・いつの間にやら妙な共感を覚えたらしい。

・・・その時だった。

キ・・・ィィィィィィ・・・・・イイイイイイ・・・イイイイン・・・・・!!

何かが共鳴するような音。
もう一つの世界からの誘いの音。

「・・・観鈴、後は頼む」

そう言って、往人はバッと走り出した。

「・・・やれやれ。こうも世間が狭いとは思わなかったわ」
「え・・・?」

その香里の言葉に観鈴は振り返った。
そして、自分と同じ様に往人の背中を見ていたその表情の冷たさにぞっとした。

「観鈴さん、だったわね。代金はここに置いておくわ・・・それじゃ」

そう言い残して、香里もまた店を飛び出していった・・・

店のすぐ近くにおいてあった、黒いバイク。
それは、往人が晴子に”赤いモンスター”に乗る以前のかつての愛車を譲ってもらったものだった。
かなりのチューンアップがされており、その性能は市販のバイクをあらゆる面で上回っている。

その前に立って往人は鴉の紋章の入ったカードデッキを突き出した。
・・・その時。

バッ!!

自分と同じ様にカードデッキを突き出している存在に気付いて、往人は横を見た。
そこにはさっき”鳥の詩”にいた少女が立っていた。
その手には、まごうことなくカードデッキが握られていた・・・

・・・眼が合う。
だが、それは一瞬でしかない。
次の瞬間には、二人とも自分のことのみに集中している。

「変身!!」

往人のベルトにデッキが装填され、その姿が変わる。
・・・華音ライダーナイト。

「・・・変身!」
下から振り上げた右腕の二の腕とそこから下の部位を90度の角度に固定・・・この際、肘から下はデッキを突き出した鏡とは並行になる・・・・してから、デッキをベルトに装填し、両手を広げる。
その瞬間、香里の姿が変わる。
・・・華音ライダーゾルダ。

もう一度、お互いの姿を見てから、二人はほぼ同じタイミングでミラーワールドに入っていった・・・





「・・・つまり、彼にはいなくなる理由がないのね?」

七瀬の問に、その茶髪の男子生徒はああ、と頷いた。

「あいつはこないだ彼女もできたばっかだったからな。
危ない橋を渡るような真似はしねーだろーし・・・」
「わかったわ、ありがと」
「・・・なあ、あいつ、見つかると思うか?」

その男子生徒は不安そうに言った。
七瀬は真剣に頷いて、言った。

「大丈夫。見つけてみせるわ」

そう言って、七瀬は彼に背を向けて歩いていった。
その後を、ただ黙って様子を見ていた美汐と北川がついていった・・・



「・・・これで大体聞き込みは終わったけど・・・・やっぱり自分からいなくなったって訳じゃないのは確実ね」

新聞部に戻ってきた三人は今日の部活を始めた時と同じに座って、聞き込みして得た情報を整理していた。

「怨恨の線もありません。
彼らは色々問題がありはしますが、人間関係においての粗は見られませんでした」
「でもさ、一つ、気にかかる情報があったよな。
ほら、誰かに呼び出しを受けたとか何とか・・・」

聞き込みをした一人に、関係しているかどうかはわからないがと、そう言った人物がいた。
いなくなった友人同様、自分もそれを受けたのだが、面倒くさかったので行かなかったという。

「確かに。そこは当たってみるべき所ではないでしょうか」
「そうね・・・今日は悪いから、明日もう少し詳しく聞いてみましょう。
・・・今日はこれ以上やっても何も起こりそうにないし、ここらでお開きにしましょうか」

その七瀬の言葉に、北川は安堵しとりあえず今日は何も起こらなかった事を神に感謝した。
・・・が。

キィィィィ・・・・ィィィィ・・・ィィィィン・・・・

(・・・前言撤回だな。いや、巻き込まなかったからよし、なのか)

そう思いながら北川は立ち上がった。

「・・・北川さん?」
「どしたの、北川」

そんな北川をやや不審気に七瀬と美汐は見た。
北川は二人に誤魔化しの笑いを浮かべて言った。

「いや、そろそろバイトの時間なもんで・・・じゃ」

それだけ言って、北川はその場を後にした・・・・・





その頃、ミラーワールドでは。

「はっ!!」

ナイトがランスベントで召還した槍・・・ブラックランサーを構えて、モンスターに斬りかかっていく・・・が、それを受けた蟹型のモンスターは微動だにすることなく、外皮でその一撃を完全に防いでいた。
当然ダメージらしいダメージはない。

「なっ・・・?!」

ナイトは驚きを隠せなかった。
幾多のモンスターを倒し、パワーアップしているはずの自身の槍が防がれたのだから当然といえよう。
だが、彼に驚いている暇はなかった。
モンスターが今度は自分の番だと言わんばかりにハサミ状の手を振るい、襲い掛かってきたのである。

「ちっ」

ナイトはその振り下ろされる手をギリギリで回避し、今度は貫かんと槍を突き出す・・・が、その時。

ド・・・ゥン!!!

その砲撃音が鳴り響いた。
「なに!?」

慌てて後ろに跳躍しようとするが、間に合わずモンスター共々、その砲撃に弾き飛ばされた。
その一撃は地面を狙ったものだったが、その余波のみでモンスターもナイトも簡単に空を舞い、地面に叩きつけられた。

「・・・・・」

それを放った砲手・・・ゾルダはその巨大な砲身を構えたまま、ずんずんと両者に近づいていく。
と、いきなりその大砲を捨て、腰に装備されていた銃器を振り向きざまに、撃ち放った。

「ぐあっ!!?」

空から襲い掛かろうとして”それ”はまともにその銃弾を浴び、地面を転がった。
鈍い金色の装甲を持つライダー・・・シザース。
それを冷酷に見下ろして、ゾルダ・・・香里は言った。

「貴方、自分が恥ずかしくないのかしら?
モンスターを野放しにしてパワーアップを測り、自分は背後からのだまし討ち・・・
卑怯ぶりもここまで来ると、哀れなものね」
「ふん、ライダー同士の戦いには”生き残る”以外のルールはないのだろう・・・?
しかし・・・まだ、力が足りないようだな・・・」

よろよろと起き上がりながら、シザースは呟いた。
それをフンと鼻で笑って、香里は銃を構えた。

「・・・もう、逃がすつもりはないわ。ここで、終わりなさい」
「ふふ、そういうわけにはいかんな・・・」

ダダダダダダダ・・・・!!

その音に、香里は振り返った。
先程弾き飛ばしたモンスターが、起き上がり香里に向かって突っ込んできたのである。

「・・・ち」

軽く舌打ちして、香里は地面を転がりそれを回避した。
迎撃もできなくはなかったろうが、背後にシザースがいては危険だと判断し、回避に専念したのだ。
その隙を付いて、シザースがカードを装填する。

『Strike Vent』

シザースの右腕に、蟹型モンスターの腕を模したハサミ状の武器が装着される。
それを見て、香里は自分の推測どおり、このモンスターがシザースの契約モンスターだと確信した。
シザースが構えたそれを、香里・・ゾルダに振り下ろす・・・!
起き上がったゾルダも銃器を構えるが間に合うタイミングではない。
・・・その刹那のタイミングに”それ”は割り込んできた。

ギィ・・・ィィン!!

「なに?!」

自分の武器が受け止められた事に、シザースは驚愕した。
その前に立つ、存在にもだが。

「くそ・・・・・!!」

剣を持つ、紅い華音ライダー・・・龍騎は悔しげな言葉を洩らし、続けた。

「あんたもライダーなんだろ?!後ろのあんたも!
何で協力してモンスターと戦おうとか思わないんだよ!?」

その吐いた言葉とともに、龍騎は力任せにシザースを押し飛ばした。

「・・・おおおっ!!」

そのシザースに、今度はナイトが横から切りかかった。
シザースはそれを受け止め、両者は拮抗状態となる。

「おい!国崎!!やめろって!!」

そう声を張り上げる龍騎の背にいきなり衝撃が走る。
・・・さっき庇ったライダー・・ゾルダが銃弾を撃ちつけたのである。
そのダメージに、龍騎は呻き声を上げながらも、振り返り剣の構えを解いて、言った。

「俺にあんたと戦うつもりはないんだ・・・!
頼むから下がってくれ・・・!」
「・・・断るわ」
「・え・・・女なのか・・・?って、うお?!」

問答無用に銃を構え、ゾルダは龍騎に狙いを定め、一発撃ち出した。
龍騎はそれをどうにか剣で受ける。
さらに攻撃を仕掛けようとゾルダがカードを引き抜いた・・・その時。

「・・・く・・・時間切れね・・・・」

カードを持つ手が粒子状になっているのに気付き、ゾルダは踵を返し、その場から離脱した。
・・・ナイト、シザースも同様で、お互いに敵意の視線をぶつけてから両者もまた何処かへと下がっていった。
シザースの契約モンスター・・・メタルキャンサーも同じく、いつのまにかその姿を消していた。
・・・ただ一人その場に残された龍騎、北川は持っていた剣を地面に叩きつけて、叫んだ。

「くそ!!なんでだ!!なんでなんだよっ!!」

その拳を硬く握りながら。北川もまた帰還して行った・・・・・





・・・喫茶店”鳥の詩”。
その近く、二つの影が鏡から現れた。

影の一つ、香里は髪をふぁさ・・とかき上げて、その場を歩み去ろうとする。
その背に、往人は声をかけた。

「おい、お前・・・」
「・・・話し掛けないでもらえるかしら。あたしはライダー同士で馴れ合うつもりはないのよ。
貴方と違って」
「・・・どういう意味だ?」
「北川君もライダーなんでしょ?声ですぐ分かったわ。
・・・ライダーが共存できないのは貴方も承知のはずよ」

ちっ・・・と舌打ちして往人は答えた。

「分かってる、そんな事は」
「本当かしらね?まあ、興味はないからいいけど・・・
そんなんじゃ、貴方死ぬわよ。
・・・あたしはその方が好都合だけどね」

そう告げて、今度こそ香里はその場を後にした。
後に残された往人はギリ・・・と歯を食いしばり、その背を眺める事しかできなかった・・・





「くそ・・・」

ぼやきながら、北川は現実空間に帰還した。
・・・その横に。

同様に、鏡の中から一つの影が飛び出した。
北川の方からは窓からの夕陽でその姿をしっかりと確認できなかったが、あの場にいた華音ライダーの一人であることは間違いない。
北川は慌てて声をかけた。

「おい、あんた!!」

その人物は、はっとしてその場から駆け出した。
北川はその後を追う。
・・・放課後、殆ど誰もいない校内で、しばらく追いかけっこは続いたが、やがて北川その影を見失ってしまった。

「ちくしょう・・・俺はただ話し合いがしたいだけなんだよ!!」

打つ手を無くして、北川はただ叫んだ。
ライダーが何処かで聞いてくれる事を願って。
・・・その時だった。

『・・・本当かな?それは』

何処からとも無く、その声は響いてきた。
北川は辺りを見回してみるが・・・誰もいなかった。

『おっと、探すのはよしてくれ。
僕はまだ君が信用できない』
「あ・・・わかった。探さない・・・」

話し合いがしたい一心の北川は相手の言葉にただ従った。

『素直で助かるよ。しかし、どういうことかな?
ライダー同士はただ戦うしかないと思っているのだけど・・・』
「俺は、違う!
俺はただ、モンスターから人を護りたいだけなんだ!
あんたがどういう目的でライダーになったのか知らないけど・・・戦う必要もないのに戦う事はないだろ!?」
『・・・ふむ。確かに、そうだね。
わかった。話し合いに応じようじゃないか』

その言葉に北川の表情はパアッと明るくなった。

『・・・だが、今はまずい。
僕はともかく、他のライダーは危険だ。
いつ何処でこの話を聞いているか分かったもんじゃない。
そこでだ。
今日の夜、十時頃、またここに来てくれないか?
その時、改めて話し合おう。・・・今後の事について。
そこも安全とは言えないが・・・二人いればどんなライダーにも対処できるさ・・・・』
「ああ、そうだな・・・! ・・・10時に、ここだな?」
『ああ。君一人で来るように。知り合いらしい、あの華音ライダーナイトを連れてくるような真似はしないでくれよ』
「・・・なんでだ?」
『彼はまだ納得できないだろう。まず、君と僕が手を結び、その事で示していくしかないじゃないか。
僕らが信用できる、ということを』
「確かに、そうだな・・・」
『それでは・・・・・』

その声を最後に、その声の主は何処かへと去っていったようだ。
・・・後に残された北川は嬉しさで胸が一杯だった。

ライダーにも、自分の話を理解できる人間がいる。
その事がただ嬉しかった。
その事実を噛み締めながら、北川も家路についた。
・・・・・夜のために。





「いらっしゃいませー」

・・・それから数時間後、北川は”鳥の詩”にいた。
色々探しても結局今のバイト以外にいいバイト先が見つからなかった北川は、バイト代は安いがと晴子に言われ、ここ”鳥の詩”のウェイターとして働く事となったのである。

「・・・コーヒー一つですね、かしこまりました。少々お待ちください」

様々なバイトを渡り歩いてきた北川にとって接客はお手の物だった。
北川自身が人と触れる事が好きだと言う事も、それに一役買っているのだろう。

「晴子さん、コーヒー一つお願いします」
「分かった」
「後、他には?」
「ないから、空いたテーブルを軽く掃除しといてな」
「わかりました」

言われた北川はテーブル拭きを観鈴から受け取って、空いたテーブルを鼻歌交じりに掃除し始めた。
その姿をコーヒーを注ぎながら眺めて、晴子は言った。

「いやー意外とやるもんやな。どこかの居候と違って接客をわきまえてる辺りが特に」
「・・・・・ぐ」
「でも、往人さんは・・・えと・・・・えと・・・」
「観鈴・・・いらないフォローをしようとするな・・・
余計虚しくなる・・・・」

ふう、と往人は息をはいた。
・・・とそこへ手早く掃除し終わった北川が話し掛けてくる。

「国崎どうかしたか?暗い顔してるが」
「・・・なんでもない。しかし・・・そっちこそえらく上機嫌に見えるが?」
「そりゃそうさ、なんたってライ・・・」

と、そこまで言いかけて北川は口をつぐんだ。

「なんだ?言いかけて止まると気になるぞ」
「・・・・・いや、まだ言えないんだ。悪い」

北川は素直に謝った。
・・・前回の一件から、北川自身は往人を少しは信用するようにしていた。
だからそれはそんな往人に全て話さない事は心苦しいことからの謝罪だった。
往人もそう言われると聞きづらく感じたのか”そうか”とだけ言って、接客に戻っていった・・・・・





・・・夜も更け。
言われたとおり、北川は夜の校舎に訪れていた。
正直入れるどうかを危惧してはいたが、思いのほか簡単に入れたので安堵した。

「うむ、早く来過ぎてしまった」

白い息を吐きつつ、北川はぼやいた。
嬉しさから、相手への失礼が無いようにと北川は約束の一時間前にそこに着いていたりする。

「ふあ・・・暇つぶしでもするかな・・・・」

少し暇を持て余した北川はその辺を回ってみる事にした。
・・・夜の校舎は、昼間とは全く違う顔を見せていた。
同じはずなのに、ただ色が、光が、冷たさが、そして人の有無が違うだけでこんなにも変わってしまうものだとは、正直北川は思っていなかった。
・・・見慣れたものでさえ、こんなにも綺麗に感じてしまう。

「・・・こういうのも、悪くないよな・・・・って・・・?」

ふと、自分の進路の先を見詰めて、北川は立ち止まった。
そこには一つの人影があった。

自分を呼んだライダーかとも思ったが、その姿は・・・女性・・・しかも、この学校の生徒のようだった。

不意に月の光が、その人物を照らし出した。
・・・そこにいたのは、北川の知った顔だった。

川澄舞。

不良少女と呼ばれている、そんな上級生だった。
彼女は剣を持って、そこに立っていた。

「って、剣?!」

思わず声を上げてしまったが、彼女はそれを意に介す様子も無く、ただじっと北川は見詰めていた。
その静かな様子に、北川も思わず黙り込んでしまった。
しばらく、その対峙は続いていた・・・が、それは長くは続かなかった。
いきなり、舞が北川に向かって走り出した・・・剣を構えて。

「・・・・な?・・・!」

一瞬、北川はたじろいだ。
だが・・・次の瞬間には分かっていた。

彼女の視線は自分の後ろを向いていて、そこに彼女の狙いはある。
・・・それは僅かながら、命のやり取りの経験がある北川だからこそ理解できる事だった。
おそらく、数日前の彼なら気付く事もできなかっただろう。

「!」

彼女の動きの阻害にならないように、北川は身体を動かす。
そして、その横を彼女は駆け抜けていく。

「は・・・・せいっ!!」

彼女はバッと跳躍すると、袈裟懸けに剣を振り下ろした。

ギイイイイイン!!

何かが削れ取れる音が、その場に響き渡った・・・!

・・・僅かな間隙の後。
地面に着地した、舞は予断無く辺りを見回した後、剣を下ろした。

「・・・・・・」
「・・・あの・・・先輩?今のは・・・?」

恐る恐る、北川は尋ねた。
舞はちらりと北川の方を見て、言った。

「・・・・・・私は、魔物を討つ者だから」
「魔物・・・?」

その言葉の余韻が北川を支配した。
・・・その時。

キィィィィィ・・・ィィィィ・・・・ィィキイイイイイン!

「な?!」
「・・・・また出た。
・・・・私の知らない魔物」

彼女の言う”魔物”は、理解できなかった。
だが”彼女が知らない魔物”は、北川の良く知る”モノ”だった。
彼女のすぐ横の窓ガラスが、石を投げ入れた水面の様に波紋が生まれ出る・・・!!

「先輩危ない!!」

北川は即座に動いた。
バッと地面を蹴り、舞の身体を押し倒すように抱えて、一緒に地面を転がった。

・・・先程まで舞がいた空間。
そこに、二つの手・・・いやハサミが突き出されていた。
それは北川にとって見まごうはずもない・・・・・夕方見たばかりの・・・・・!!

それは手応えが無い事を理解してか、ズズズ・・・と鏡の中へと帰って行く。

「ち・・・・・・!!」

わけがわからなかった。
何故あのモンスターが舞を襲うのか。
何故、人を襲うのか?

その答を得る為には・・・行かねばならない。
鏡の奥へと。

北川はポケットからカードデッキを取り出し、鏡に突き出した。

「変身!!」

デッキをベルトに装填し、北川の姿が変わる。
・・・華音ライダー龍騎。

「・・・・あなた、何者?」

その様子をじっと見詰めていた舞が囁くように問うた。
北川は振り向いて、答えた。
何故か、変身を見られたことへの焦燥は生まれなかった。

「・・・先輩の知らない魔物を討つ者、です」

その言葉を置いて、北川は鏡の向こう側へと消えていった・・・・・!!





・・・続く。





次回予告。

希望はあっさりと裏切られた。
しかし、それでも北川はあくまで話し合いを望む。
その裏ではライダー同士の牽制が行われていた。
・・・人を殺すと言う事。
その事実を知って、北川は・・・!?

「でも・・・あんただけは許せない・・・・・!!」

乞うご期待、はご自由に。





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閑話休題。

北川「まあ、いよいよ本題って感じだな」
往人「ライダー同士の戦い・・・良くも悪くもこのSSのメインだしな」
香里「・・・気のせいか、あたしがやや鬼に描かれてるような気がするけど?」
北川「・・・まあ、しょうがないだろ。このお人好しぞろいの面子の中でそういう役を張れる奴が少ないんだから・・・・・」
名雪「・・・私つかいっぱしりだよ」
北川「そういじけるなよー」
舞「・・・・・・・私はこれからどうなる?」
観鈴「その辺りは色々考えてるみたいですよ」
往人「果たして上手く設定を活かせるかどうか・・・凝り過ぎてミスをしなければいいがな」
香里「では、話の種も尽きたみたいだから、今日はこれまで。
じゃあ、またね」





第六話へ

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