第三十二話 誰が為の鎮魂歌・2















 その時の事を、祐一は覚えていない訳ではなかった。

 覚えてはいるのだ。
 自分が下した判断、行った動き、その結果を。

 だが、それが相沢祐一と繋がってはいなかった。
 記憶と行動が乖離した状態だった。
 
 そして行動と繋がっていたものがなんだったのか、その戦いが終わった後も祐一は理解できなかった。







 タイガーパーゼストが振り向いた瞬間、カノンは両手でその頭部を掴んでいた。
 同時に、ぶら下がっていた足をもう片方の足で蹴った反動で引き抜き、落下。
 そのまま、タイガーパーゼストの背後に着地する。

 同時に掴んでいた手はそのままに、天井を蹴った際の反動を含めつつ、
 カノンはバックドロップの動きでタイガーパーゼストを力任せに放り投げた。

「guygiggi?!」

 これら一連の流れは、一瞬。
 ゆえに、タイガーパーゼストは反応らしい反応さえ出来ず、地面に転がった。
 刻み込まれたプログラムもあり、すぐさま起き上がろうとするのだが。

「……」

 そのプログラムより、動きよりも先に、
 即座に体勢を整えていたカノンの足がタイガーパーゼストの顔面を踏みつけていく。
 何度も何度も。
 躊躇なく、容赦なく。

 いつしかタイガーパーゼストの顔面が崩れ始めた瞬間、カノンは動きを変えた。
 踏み付ける動きから、蹴り飛ばす動きへと。

「jgugiiiっ!!?」

 さながらサッカーボールの様に蹴り飛ばされるタイガーパーゼスト。
 トンネルの外にまで大きく飛ばされ、地面に叩き付けられ、転がっていく。

「iuiiibii……っ」

 この状況を打破すべく立ち上がるも、最早その動きはボロボロでフラフラ、無残なものでしかなかった。
 そんなタイガーパーゼストを追って、悠然とカノンがトンネルから姿を現す。

 最早敵ではないと判断したのか、
 あるいは『窮鼠猫を噛む』を警戒してか。
 いずれにせよ、じっくりと観察した後、カノンは腰低く構えた。
 カノンが最も得意し、最も破壊力のある一撃……蹴撃の構えを。

 その直後。
 カノンの双眸に変化が起こった。
 黒く染まっていた両目が、通常の赤いモノへと戻っていく。

「……っ!?」

 それと前後して、祐一の意識が体に再接続される。
 同時に、今までの自分の動きを思い返し、混乱に陥った。

「っ、一体、今、俺は……?」

 やった事の記憶はある。
 だが、それが『一致』しない。繋がらない。
 相沢祐一がやったとは思えない。

 あの動きは、何かが違っていた。

 草薙紫雲や川澄舞のような、天性の才を努力でさらに磨き上げたモノとは真逆のもの。
 本能という名のプログラムが叩き出した、ある意味での理想のような……。

 瞬間、何かが祐一の頭を過ぎった。
 仮面ライダーのような、パーゼストのような、何か理解できない姿が浮かび上がった。

 それがなんなのか、祐一には分からない。
 だが、分かる事が一つだけあった。

 それは、その姿の圧倒的な……。

「……っ!」

 浮かび掛けたモノを振り払う様に頭を振り、仮面ライダーカノンは再び敵に意識を向けた。

 今はそんな事を考えている場合ではない。

 レクイエムが使役するタイガーパーゼストが目の前にいるこの状況は、何かしらの黒い思惑が動いている、その可能性が高い。

 そして、目の前の敵を見逃す訳にはいかない。 

「悪いが……決めさせてもらうっ!」

 躊躇いを心の中で噛み殺したカノンはジャンプし、体を丸め一回転した後、足を力強く突き出して蹴撃の体勢を整えた。
 逃亡しようと背を向けていたタイガーパーゼストの背中に、赤い閃光を纏ったカノンの蹴撃が突き刺さる……!!

「ggohohohpphphphphbudtgloghoっ!!!」

 違う形ではあるが再度蹴り飛ばされたタイガーパーゼストは、人間には理解出来ない叫びを上げながら光の粉となって消滅していった。

「っ……」

 その様子を確認して、カノンは鍵を廻し、変身を解いた。

「……」

 光の粉が舞い散っていく中、祐一は頭を整理していく。

 正直、さっきの状況や感覚がなんなのか……気にはなる。
 気にはなるが、今は後回しでいいはずだ。

 意識があったという事は、制御だって出来る筈だ。
 いや、そもそも単純に身体の調子がおかしいだけで、なんでもない事なのかもしれない。

 どの道、今は考えていてもしょうがない。
 なら、後回しでいいだろう。

「ああ、今はそれでいい……。
 今は折原に連絡を取るのが先だ……」

 それが半ば誤魔化しだと分かっていながら、祐一は何度も頷き、そう判断するしかなかった。
 これが後々まで尾を引き、ある一つの悲劇を生む事になると知らずに。





 



   
 

 そうして祐一がパーゼストを撃破する少し前。
 大学の駐輪場にサイドカーを停めて降りた折原浩平は、人気のない……というより今は人がいない……裏口の方へと足を運んでいた。

「……いるんだろ?
 コソコソしてないで出て来いよ」

 人がいない事を確認した上で、浩平は周囲を警戒しつつ呼び掛けた。
 同時にベルトを既に装着、鍵も差し込み済みにしている。

 祐一と別れた後、浩平は長森瑞佳に会うつもりだった。
 しかし、サイドカーから降りた直後、自分に注がれる視線をなんとなく感じ取り、ルートを変更、この場所にやってきたのだ。

(さっさと片付けて瑞佳に会うんだよ。邪魔すんなクソが) 

 いち早く瑞佳に会いたいし、その無事を確認したくはあった。
 ファントムに護衛を任せてはいても不安が消える訳ではないのだから。

 だが、それを優先して瑞佳を危険に晒すのは本末転倒、馬鹿のやる事だと考えて、浩平は今ここにいた。

「やっぱりバレバレか」

 そんな浩平の呼び掛けに対し、そう言いながら現れたのは、浩平にとって馴染みの顔だった。  
 レクイエムに所属する、仮面ライダーフェイク・氷上シュン。

 薄い笑みを浮かべるその青年に、浩平は不敵な笑みを返しつつ言った。

「で? 今日は一体何の用だ?
 まぁ察するにベルトが欲しいとか、俺を抹殺とか、そんな所だろうが」
「うん、相変わらず察しが良いね。
 基本的にはそんな所。
 ただ、君を抹殺する、のは先延ばしするつもりだよ。
 価値は随分薄れてきてはいるけど、それなりに利用する価値はあるからね。
 出来れば利用したい、というのがレクイエムの本音らしいよ」
「正直に話してくれてどーも。
 だが、俺が素直に従うと思ってるのか?」

 そうして話しつつも、浩平は周囲の気配や状況を探るのを続けていた。
 どうやら近くには伏兵はいないらしいが……油断は出来ない。
 後からやってくる手筈なのかもしれないし、気配を読み損ねていないとも限らない。

 浩平はレクイエムにおける訓練で自分の身体能力にそれなりの自信を付けた。
 だが、同時にそれを過信する事の危険性も十二分に理解している。

 世界に『絶対』はない。
 様々な経験をしてきた浩平だからこそ、その真実を深く理解している。

 だからこそ、浩平は油断なく今ここにある自分の世界を見据えていた。

 そんな浩平に対し、シュンは苦笑してみせた。
 何処か楽しげに。それでいて何処か悲しげに。

「今の所は無理だろうね。
 だから、それを変えてみようと思う」
「……瑞佳を人質に取ったってところか?」

 長森瑞佳が折原浩平にとっての弱点である事はレクイエムにとっては周知の事実。
 だが、それは浩平自身もよく理解している。
 だからこそ、ファントムに周囲の安全を保障させていたのだが……。

「ああ、心配しなくても彼女は無事だよ」
「……??」
「ファントムの警護は中々のものだ。
 正直レクイエムでも『突破』するのが難しい位にはね。
 でも、そっちにかまけていてくれて助かったよ」
「どういう事だ……っとっ!?」

 突然。
 シュンが浩平に向って何かを投げ放った。
 浩平は反射的にソレを受け取る。
 ……と同時にそれが何かを把握し、どうすべきかを思考しようとするが。

「大丈夫。何の変哲もない携帯電話さ」
「……そう、みたいだな」

 受け取ったものは確かにどう見ても携帯電話だった。
 シュンとの距離を考えれば何か……爆弾など……の仕掛けも考え難い。

「通話状態になってるから電話に出てみてくれ。
 そうすれば、君がどうすべきなのかすぐに分かる」
「何……?」
「これは、君にとっては悪い話じゃない。
 その事は僕の魂に掛けて誓うよ。
 もし、何か不満があればこの場で僕を殺してもいい」

 浩平はシュンの眼を見据える。
 
 氷上シュン。
 付き合いは長くはないが短くもない。
 それなりに知った間柄であるし、共に死線を潜り抜けた事もある。

 だからこそ、分かる。
 シュンの眼に、その言葉に、嘘がない事が。

「……」

 その考えが甘い事を重々承知しながらも、浩平は携帯を開いた。
 どの道、こうしなければ始まらないのもまた事実なのだから。

(さぁて、鬼が出るか蛇が出るか。どちらかね)

 そうして気を引き締めて、浩平は電話の向こうに呼び掛けた。

「はいよ。こちら折原浩平様……」
『……―――――……』

 その瞬間。
 電話の向こう側にいる存在の声を、言葉を聞いた瞬間、浩平の表情が変わった。

 まるで世界そのものが変わったような、そんな表情の様にシュンには思えた……。






 




 

「……おかしい」

 川澄舞がポツリと呟いた。
 その側には、国崎往人が立っている。

 先日のファントムの施設強襲のゴタゴタが多少なりとも片付いた事もあり、
 国崎往人を水瀬秋子に会わせるべく舞が探し出し、食事を条件に行動を共にさせている……そんな状況での言葉だった。
 ……ちなみに食事を条件にする事については、往人を探し出す折に改めて知り合った神尾観鈴からのアイデアによるものである。

「何がだ?」

 舞の言葉に対し、往人が口を開いた。

 彼らがいるのは相沢祐一達が通っている大学の敷地内。
 二人の近くでは折原浩平の恋人である長森瑞佳やその友人達が談笑していた。

「ライダーの一人がここに……彼女の下に来るはずだったのに現れていない」

 折原浩平の各種データや人間関係については資料に目を通している。
 彼女は折原浩平にとってもっとも大切な人間。
 だからこそ、ゴタゴタが終われば無事を確かめる意味でもいの一番に彼女の所に顔を見せに来る筈だと思っていたのだ。

 舞としてはその様子を確認してから往人を伴い、秋子に会いに行くつもりだったのだが。

「腑に落ちない」
「そんなの、いくらでも都合で変わるだろ。
 さっきのパーゼスト、だっけか? そっちに向かったんだろ」

 祐一が倒したタイガーパーゼストの気配を二人も感じていた。
 だが、舞のバイク、コバルトハウンドで祐一が向かう事を確認出来た為、二人は動かなかったのである。
 協力するという選択肢もありはしたのだが、舞はあえてそれを却下、祐一に任せたのだ。

 そんな舞の判断とは逆に、祐一の協力の為、浩平が向かった可能性は確かにある。
 あるのだが。
  
「……そうかもしれない。でも、そうじゃないのかもしれない」

 何かが舞の中で引っ掛かっていた。
 言葉に出来ない、何かが。

「煮え切らないな、おい。
 というかだ、俺だって暇って訳じゃないんだぞ」

『……暇じゃないのか?』
(暇じゃないっ!
 食事が駄目なら駄目で食費を稼ぎに行かなきゃならないんだっ!)

『刀鍵』から聞こえる声に心だけで返す往人。

 往人にしてみれば怪しい女……共に戦った事からある程度信用はしていたが……の言う事を聞いているのは、ひとえに食事の誘惑によるものだった。
 だが、会う人物が会う人物……組織とやらのお偉いさん……なので状況によっては諦める覚悟もしている。

 何せ状況が状況だ。
 一度の食事で上手い事利用され、人生を棒に振る可能性も少なからずあるのだから。

 ソレを考えると、どう動くにせよ早い方がいい。
 そう思考している往人は舞にぶっきらぼうに告げた。

「このままココに居続けるなら俺は帰るぞ」
「……帰る場所あるの?」
『……帰る場所あるのか?』
「突っ込むな。言葉のあやだ。ともかく……」
「分かった。
 護衛をファントムのメンバーに連絡して引き継いでもらう。
 だから少し待って」
「……長くは待たないぞ」
「長くはない」

 正直、どうにも腑に落ちなかったが、判断する為の材料が少ないのも事実。
 であるならば、護衛を引き継いでもらい、状況の推移を報告してもらえばいいだろう……舞はそう判断した。

 そうして二人は水瀬秋子に会うべく大学を離れる事となった。
 その敷地内で行われていた浩平の異変に気付く事なく。










 
「……ここか」

 祐一がタイガーパーゼストを倒して約三十分後。
 浩平と連絡を付けた祐一は『厄介な事になっている』と彼の口から聞き、浩平と合流すべくとあるビルの近くにやってきた。

 そのビルとは、とある有名製薬会社の本社ビル。
 それなりに大きな高層ビルで、間近では少し見上げた程度では一番上の階が見えない。 
 一番上の階には会社のロゴマークが描かれた看板があるはずだが、少し見上げた程度の祐一には見えなかったし、興味はなかった。

 このビルを待ち合わせ場所にした理由。
 それは、祐一のいた場所と大学から適度な位置にあり、分かり易いからというのが浩平が口にした理由だったのだが。

「やぁ、相沢君」

 浩平の姿を探しつつ思考していた祐一に声を掛けたのは、約束の相手である折原浩平ではなかった。
 声のした方に顔を向けつつヘルメットを外した祐一は独り言のように呟いた。

「……どうにも胡散臭いと思ってたんだよ」
「へぇ、どうして?」

 声の主……今まで何度か遭遇している存在、氷上シュンの問い掛けに対し、祐一は答えた。

「こんな来た事もなさそうな場所を待ち合わせ場所に指定するのが如何にもだろ。
 知ってる人間同士が待ち合わせする場合、多少面倒でも互いに知ってる場所を選ぶだろ普通」
「さぁ、どうかなぁ。それは人それぞれだと思うけど」
「別に探偵推理ごっこをするつもりはないぞ。
 折原が指定した場所にお前がいる……俺にとってはそれで十分だ」

 バイク……クリムゾンハウンドから降りた祐一の腰には既にベルトと鍵が準備されていた。

 幸いにも周囲に人間はいない。
 変身するのに何の問題も……。

(……って、おかしくないか?)

 ベルトの鍵に手を伸ばしかけていた祐一はその思考の最中に気付いた。

 こんな大会社の『足元』に、人がいない。
 改めて冷静に周囲を見やれば、通行人はおろか、車の行き来さえない。
 まだ日中だというのにこれはいくらなんでもおかし過ぎる。

 そんな祐一の表情と思考を読み取ったのか、シュンは言った。

「気付いたみたいだね。
 君が気付いたように、ココに誘き寄せたのは罠。
 そして、この場所そのものも、罠」
「どういうことだ?」
「ここはね、レクイエムの隠れ蓑……というか表の顔の一つなのさ。
 だから色々細工し易かったりするし、罠も仕掛けやすい」

 そう言いながらシュンが指を鳴らした直後。

「っ!?」

 周囲の至る所からタイガーパーゼストが姿を現した。
 その数は十数体、いや、下手をすれば数十体……!!

「ちっ……!?」
「ああ、変身は待った」
「なに?」
「無駄な犠牲や怪我はお互いの為にならない。
 ここは素直に言う事を聞いてくれないか?」
「お前の言う、言う事ってなんだよ?」
「そのベルトをこちらに渡して、素直に捕まってほしい。
 少なくとも今は殺すつもりはないんだ。
 君の価値は君が思っている以上に高いから」
「へぇ、ソイツは嬉しいな。
 だがそれを素直に聞くと思って……」
「思ってるよ」

 言いながら、シュンが取り出したのは、少し通常のものとは意匠が異なっている拳銃。

 シュンはその拳銃を祐一に……ではなく、ビルの入口へと向けた。
 その行動の意味を測りかねていると、その答えがビルの入口……自動ドアの中から現れた。

「……悪いな相沢。こうなってる」
「折原っ!?」 

 ドアの中から現れた浩平は両手を後ろ手に縛られていた。
 浩平の隣には白衣を着た女性が立っており、その後方、数メートルほど離れた位置には見知らぬ人間二人が、シュン同様に浩平に銃口を向けていた。 
 
「とまぁ、こういうわけだから。
 別に変身するのを止めはしないけど、したら最終的にどうなるのかは予想できなくはないよね?」
「……くっそ、汚いぞ、それ」
「まぁ否定はしないけど、これでも随分紳士的だと思うよ。
 さて、どうする?」

 改めて周囲の状況を確認する祐一。
 だが、何処からどう見ても穴はなかった。

 抵抗すれば自分は助かる可能性は低くない。
 だが、浩平が殺される可能性もまた低くない。
 浩平や自分に価値を見出している隙を突く、という楽観的思考は出来そうになかった。
 判断する為には、あまりにも情報が少なすぎる。

「言っておくけど、長引かせて誰かの助けを当てにするのも無理だよ。
 この周辺に君の仲間がいないのは確認済みだし、今も警戒中だ。
 さらに言えば……」
「……分かった。分かったよ」   
 
 この状況は完全に詰んでしまっている。
 ここからの逆転は……第三者の介入がない限り不可能だ。
 念の為にしておいた連絡も、おそらくは間に合わないし、下手をすれば被害を増やすだけになりかねない。
 
(街中だし、普通の野良パーゼスト相手じゃないなら十分に警戒した上で変身出来ればなんとでもなると思ってたんだがな……)
 
 見通しが甘かった事への悔しさに唇を噛み締めながら、祐一はベルトを外した。

「で、コイツをどうしたらいいんだ?」
「折原君の側に美人の先生がいるだろう?
 その人に向かって投げてくれ」
「分かったよ」

 躊躇いながらも、祐一は言われるがままベルトを放り投げた。
 ガシャン、とそれなりの重さを感じさせる音と共に地面に落ちたそれを、浩平の側に立っていた女性……霧島聖が拾い上げる。
 
「どう? 間違いない?
 まぁ、この短期間に偽物なんかを準備できるとは思わないけど」

 シュンの言葉に対し聖はベルトや鍵の細部を隅々まで確認した上で答えた。
 
「ああ、間違いない。
 プログラムKEY……確かに受け取った。
 これは、我々レクイエムが使わせてもらう」
「……プログラムKEY? そうなのかねぇ」

 祐一は何処か挑発気味にその言葉を発した。
 そんな祐一に、聖は視線を向ける。

「ふむ? 何か言いたい事でも?」
「アンタら、プログラムKEYがなんなのか知ってるのか?」
「それなりに。
 三つの鍵を用いる事で発動する、アンチパーゼストプログラムだろう?」

 聖の言葉に、祐一はニヤリと笑って見せた。

「さてね。
 でも、それなら残念じゃないのか? ここにあるのは……」
「三つだよ、相沢君」
「……なに?」
「やけにあっさり渡したと思ったらそういう訳か。
 ……君が頼りにしていたであろう草薙紫雲も既に僕達の手中にある。
 つまり、鍵は既にココに全て揃ってるんだ」
「……っ!?」

 直後、祐一の表情が強張る。
 そんな祐一に銃口を向けてシュンは言った。

「ようこそ、レクイエムへ。
 歓迎するよ」
   
 その言葉を放つと同時にシュンは銃の引き金を引いた。

「っ!?」

 それに対し反応らしい反応をする事さえ出来ず。  
 祐一の意識はあっさりと闇に落ちていった……。












 ……続く。








 次回予告

 奪われてしまったベルト。
 その状況に気付いた者達が奪還の為に動き出す中、
 捕らわれた者達はそれぞれ出会い、再会する。

『ようやく会えたね、お兄ちゃん』

 乞うご期待はご自由に!!





第三十三話はもうしばらくお待ちください