1.光

 深く、どこまでも深く、永遠にはてしなく続く闇。

その闇の中できらめく、限りの無い光の群れ。

その光は時に激しく、時には弱々しく輝く。

その光の一粒一粒は、それぞれが数億,数兆もの星々をしたがえ巨大な渦を描く銀河である。

 あまりに深い宇宙の闇の中、小さな小さな点にしか過ぎぬその銀河達も、近づいて見ればそれは、ごく小さな物でも、銀河の端から端まで、光の速度でも数百年から数千年かからなければ、とてもたどりつけぬ大きさであり、このような銀河達が、これまた数千、数万と集まり銀河団を形成している。

 そんな銀河団すらも、ほんの小さな星の瞬き程度にしか見えぬ宇宙の闇の中を、今一筋の光が横切っていく。

いや、それは光ではない。

ただ、周囲にあふれる銀河の光のように、いずれは宇宙の果てしない闇の中に拡散し、弱々しく消え去る光とは違っていた。

それはまるで明確な意図をもっているかのごとく、宇宙の闇を、そしてそこに浮かぶいくつもの光点を切り裂きながら進んでいった。

それは光ではない。

それには意思とでも言うようなものがあった。いや意思そのものが宇宙を飛んでいるのだ。

 その意思の目指す先に一つの銀河団があった。意思はその銀河団の片隅に浮かぶ銀河を目指し進む。

だがいくら意思が光と同じ速度で進んでいようとも、その銀河にたどり着くまでにはまだ膨大な時の流れが必要であった。

 一つの太陽がその銀河の片隅に産まれ、その太陽の重力に引かれ集まってきた宇宙のチリたちが、互いに引かれ合い、固まり、いくつもの星へと成長した頃、ようやくあの意志は、それが目指す銀河の近くへとたどり着いた。

 銀河の片隅の小さな太陽は、己の周りを巡る九人の子供達に、光の恵みを与えていた。

子供達のうち、太陽から三番目に近い場所を巡る星では、太陽の光と、ときたまその星の重力に引かれ落ちてくる隕石に含まれる様々な成分によって、他の星には存在しなかった、自分の意思を持つものが誕生しようとしていた。

だがそれは意思と呼ぶにはあまりに単純過ぎるものであった。

太陽の光と熱。そして水とその中に溶け出した多様な成分が偶然にも結びついた化学変化の一つに過ぎないものであった。

 だが、たとえそれが単純な意思しか持たなくても、そしてほんの数種類の分子がつながっただけの身体しか持たずともそれは生きていた。

それは生命をもっていたのだ。

それは単純な体で、周囲の養分を貪欲なまでに取りこみ成長していった。

 意思が宇宙を旅していた時間に比べれば、その星はついさっき産まれたばかりであるが、意思が目指した場所こそがその星であった。

意思がその星にたどり着いたとき、その星は小さな小さな生命と意思に満ち溢れていた。

 宇宙からやってきた意思は己を光に変えた。そしてこの星を包み込み、その星に生まれ成長した意思と溶け合っていった。

 

それから、数十億年の歳月が流れ

 

その星には幾多の生命が生まれ、増え、成長し

 

そして、滅びていった

 

数え切れぬ繁栄と、終焉

 

その全ては光の意思によるもの

 

やがて、光の意思は最後の選択を下す

 

その意思に従い、繁栄を極めるものは何か

 

その意思に従い、滅び去るものは何か

 

ついに来る、黙示録

 

世界終末の日、これはその、始まりの日の記録である。

 

 

GetterRobo Kanon

 

 

 

 

 

2.プロローグ

 

 20xx年3月。日本近海上空

 海を覆い尽くす分厚い雨雲に向かって三機の飛行機が編隊を組んで上昇していく。それぞれ、赤、白、黄色に塗り分けられたその機体は一般的に知られている他の飛行機とは違った奇妙な形状をしていた。

 まず、機体には翼が無かった。

そのかわりに機体の形は横に平べったく伸びており、翼の代わりに機体自体が揚力を生み出す仕組みになっていた。

さらに機体後部には二発のエンジンが炎を吹き出しているが、そのエンジンとエンジンの間はがらんどうの空間になっていた。

 やがて三機の飛行機は雨雲をぬけて雲の上に出た。

眼下には雲の平原が広がる。そんな三機の様子を、とある陸地の、さらに地下二十メートルの場所に造られた総合司令室で見守る者達がいた。

そこでは衛星軌道上に浮かぶ人工衛星や、地表に存在するレーダー。さらに三機の飛行機から送られてくるいくつものデータなど、あらゆるものを使って三機の様子を追っていた。

「ゲッターチーム。訓練空域に到達しました」

オペレーターの女性がレーダーで三機の現在地を確認して言った。

彼女は自衛軍と同じような制服を着てはいるが、その容貌は幼さを感じさせ、軍服の硬いイメージとは酷く不釣り合いだ。彼女のそのよくとおる声はマイクを介さずとも広い司令室に届くだろう。

その司令室には他にも十数名の人々が各々の仕事をこなしていた。

だが彼らは制服ではなく、白衣を身にまとっていた。

制服を着ているのは先の少女と、その隣に座って飛行機のパイロットのデータを管理している、もう一人の黒髪の女性オペレーター。

そして二人のオペレーターの後ろに立ち、モニターに映る三機の飛行機を食い入るように見つめている三十前後と思われる一人の女性だけであった。ちなにこちらの女性は制服の上から白衣をまとっていた。

もし、この三人がいなければ、この場所はどこかの研究室を思わせる雰囲気があった。

「各パイロット。脈拍・血圧ともに異常ありません」

「各ゲットマシンにも異常はみられません」

 二人のオペレーターがかわるがわる報告する。

 後ろの女性が、その報告を受けていった。

「ゲッターチーム。訓練を開始せよ」

オペレーターがパイロットに訓練開始を告げる。

『イーグル号了解』

 という一機からの返信に続き、残りの二機からも、

『ベアー号了解』

『ジャガー号了解』

 と、こちらは女性の声で通信が入る。ベアー号とジャガー号のパイロットは女性だった。

 三機は編隊を組んだまま、エンジンの出力を最大にまで上げて急速上昇を開始した。

そのまま空中で急旋回に入る。

だがそれには猛烈な加速と遠心力による巨大なG(重力)が、機体とパイロットの両方にかかる。ましてその三機の飛行機のエンジン出力と旋回性能は既存のあらゆる戦闘機をはるかに凌駕していた。

 旋回を開始したとき、パイロットの身体は猛烈なGによってシートに押し付けられた。

操縦桿を握る両腕が、鉛になってしまったように重く感じられる。目の前が少し暗くなる。遠心力によって、上半身の血液が足元にむかって逆流するブラックアウトと呼ばれる現象だ。

パイロット達は必死に歯を食いしばり、息を止め、全身の筋肉に力を入れた。身体を締め付ける飛行服とシートのベルトが血管に圧力を加えて逆流を防がなければ、瞬く間に意識を失っていただろう。

 眼下にあった雲の平原が頭上に見え、そしてやっと、また雲が眼下に戻ってきたとき、パイロット達は今まで止めていた息を、ふっと吐き出し全身の力を抜いた。

 三機は編隊を一切崩さずに、続けて左に急旋回を開始した。

今度は速度を変えずに先ほどよりも回転半径をさらに小さくしての旋回である。

それが終わると次は右に急旋回。

その後また急上昇を行い、そして今度は機体を横に回転させ、きりもみの状態のまま降下した。

 これをさらに繰り返す。

いずれもピッタリと編隊を組んだままで。

「イーグル、ジャガー、ベアー。三機ともGによる機体異常は見られません」

「イーグル号パイロットの脳波が乱れています。血圧も上昇」

 オペレーターが訓練後の状況を報告した。パイロット担当のオペレーターがパイロットの危険を報告する。

(北川君ね…。無理も無いわ)

 その女性、水瀬秋子は赤い機体の飛行機、イーグル号のパイロット・北川潤のことを思った。

二等空尉・北川潤。

三機のパイロットのなかで唯一の男性パイロットであり、空軍の飛行士養成過程を終えたばかりのところを引きぬいた新人だ。

しかし、未完成もいいところのプロトタイプマシンのテストパイロット任務は、空軍のベテランパイロットでも厳しい仕事だ。新人には酷すぎたのだろうか、と秋子は思う。

もっとも、他の二機のパイロットもベテランというわけではない。二人とも同じように養成課程を終えたばかりだ。

 だが、このマシンを動かすには、単なる操縦技術以上に全く別の適性が必要になってくるのだ。そして、その適性を満たす者は今のところ彼と、彼女達だけなのだ。

ならばやってもらうしかない。

 秋子はイーグル号のパイロットに呼びかけた。

「北川二尉、どう、まだやれそう?」

 パイロットから通信が入る。

『心配いりませんよ…、まだ…まだやれます』

 そう答える北川の声は息も荒く、つらそうだ。秋子はその声を聞いて、訓練を続行すべきか悩んだ。

そこへ別の通信が入った。

『情けないわね、北川君。この程度でもうリタイアする気?』

 白い機体の飛行機。ジャガー号のパイロット。

美坂香里だった。

『…おいおい、美坂、俺は大丈夫だって言ってるだろう。お、俺のとりえはな、体力とド根性だぜ』

 北川が息も絶え絶えながら、香里に言い返した。

『自分自身が見えていないようね。そんなヨレヨレの状態で強がるんじゃないわよ』

『強がりってのは、ド根性の基本なんだよ。男がこの程度で泣き言なんか言ってられるか。…ああ、そうか美坂、お前、俺のこと心配してくれてたのか』

『な、何よいきなり。そんな筈ないでしょう』

『意地はるなよ。お前に心配されるなんて嬉しいね。サンキューな香里』

『勝手に名前で呼ばないでよ』

 北川と香里のやりとりに、司令室のあちらこちらで失笑が起きた。

秋子もこの通信を聞いて思わず苦笑する。

「北川二尉の脳波・脈拍ともに正常値にもどりました」

 オペレーターが報告した。それを聞いて秋子は、北川も香里も大丈夫だなと感じた。

『二人とも、まだ訓練は終わってない』

 淡々とした声で通信が入る。

黄色い機体の飛行機、ベアー号のパイロット。川澄舞だ。

放っておけばいつまでも続きそうな、北川と香里の会話に終止符を打った。

『痴話ケンカなら、後で』

『誰が、痴話喧嘩よ!』

『そうだな、正確にいえば夫婦喧嘩だよな』

『誰が、夫婦よ!!』

『……訓練、進まない。まじめにやって』

『くっ、判ったわよ。北川君、後で覚えておきなさい』

『おお、こわ』

 そして訓練が再開される。

秋子が言った。

「訓練を第二段階に移行します。ゲッターチーム。合体訓練を開始せよ」

『了解』

 三人が同時に答える。三機は編隊を組みなおした。

まずイーグル号が速度を上げ、先頭に立つ。

そのすぐ後ろにジャガー号、ベアー号の順で三機が一直線に並んだ。

Change!』

 舞はそう言うと、ベアー号の出力を上げ、正面に位置するジャガー号に向かって直進した。

ベアー号の目の前にグングンとジャガー号の後部が近づいてくる。

舞は操縦席の計器類やレーダーなどで、自機と相手の位置、速度を確認しながら、慎重に、かつ大胆に機体を操る。

 ベアー号は勢いよくジャガー号の後部に突っ込んだ。

ベアー号の機首がジャガー号の二つのエンジンブロックの間に収納され、二つの機体がドッキングした。

「ジャガー号、ベアー号、合体完了。続いてイーグル号への合体開始」

とオペレーターが告げた。

 合体した二機は、イーグル号へと接近する。

イーグル号もまた後方から迫る機体にあわせ、速度を調節する。

空中で、しかも時速数百キロにも及ぶ高速で飛ぶ飛行機同士が合体しようとするのだ。一歩間違えれば、空中衝突を引き起こしあっさりと墜落してしまう。北川は慎重に操縦桿を操る。

後方の機体は香里が操縦をしていた。

すぐ目の前でイーグル号エンジンが紅蓮の炎を吹き出している。ゆれる機体をイーグル号の真後ろになるよう調節する。しかし二機が合体した状態のため、機体のバランスが変わりうまくいかない。

『香里、落ち着いて。機体バランスを頭に入れて、計器を見る』

と、舞が忠告した。

『言われなくても判ってるわよ』

 香里はそう口では言ったものの、実際、自分が緊張のため落ち着きを無くしていると感じていた。

一度深呼吸をし、冷静さを取り戻す。そして。

Change!』

 香里は合体を開始した。勢いよく機体をイーグル号めがけ直進させる。

鈍い衝撃と共に機体がドッキングした。

イーグル号の後部がジャガー号の機首を包み込むように変形する。

 北川が号令を発した。

Change GetterONE Switch On

三機が一つに合体し、さらに変形が始まった。

最後尾に位置するベアー号のエンジンブロックが機体の外に張り出し、後ろに向かって伸び始めた。

剥き出しのエンジンブロックの周りをまるで皮膚が張りついていくかのように装甲が表面を覆っていく。それは巨大な二本の脚部に変形した。

続いてジャガー号の両側端から長大な機械のアームが伸び出した。

ひょろ長い棒状の腕と、骨のような細い指。これまた機械剥き出しのアームの表面を装甲がどこからともなく覆っていき、見るからにたくましい巨腕へと変貌する。

 三機の飛行機が順繰りにつながっただけの飛行機は、今では長く太い腕と足を持つ、不恰好なロボットもどきの飛行機となった。先頭のイーグル号の機首の表面にも亀裂が入り、変形を開始した。

だが、ここで異常が起きた。

 突然、機体の表面を青白いスパークが走った。

計器類も一斉に狂いだし、機体同士の結合部から火花が飛び、エンジンが一瞬停止した。

Emergency!? 拙い、失速した!?

 機体が空中でバランスを崩し、地上に向かって落下を始める。

「ゲッターに異常発生。このままでは墜落します!」

 突然の異常事態に司令部は騒然となった。

 秋子が叫んだ。

「合体の解除! 急いで!」

 制御を失った機体の中でパイロット達は必死に機体を操縦しようともがいた。

だが機体はすでにキリモミ状態におちいり、パイロットの肉体を限界にまで揺さ振る。

激しい揺れと遠心力の中で三人は必死にシートのそばにある合体解除レバーをつかもうとした。

誰か一人でもいいからレバーを引ければすぐに合体は解除される。だがすぐ近くにあるのにもかかわらず、なかなか掴む事が出来ない。レバーに向かって伸ばされた腕は、むなしく空中に振り回されるだけであった。

「高度二千を切りました。早く脱出を!」

 オペレーターが悲鳴に近い声を出す。

そのときやっと、舞が合体解除レバーをつかむことに成功した。レバーをいっきに引き上げる。

三機の結合部で小さな爆発が起きた。

爆発によって、それぞれの機体をつなげていたドッキングユニットが吹き飛び、三機は再び分裂した。

 自由を得た三機はそれぞれコントロールを取り戻した。エンジンに火がともり、上昇に転じる。墜落の危機は去ったかに見えた。

だが。

『こちらイーグル。エンジンの出力が上がらない。ダメだ、このままじゃあ高度を維持できねぇ!』

 北川から機体異常を知らせる通信が入った。

見ればイーグル号だけが、今だ表面に幾つものスパークが走らせていた。

 北川は必死に機体を操る。

だがイーグル号はバランスこそ保っていたものの、徐々に高度を下げていく。機体はふらつきながら、雲の中へと突っ込んでいった。

『潤っ!!』

雲間に消えていく僚機に、香里が叫ぶ。

 赤い機体が雲の下に出た。

オペレーターが上ずった声で報告する。

「イーグル号が訓練空域から外れます。このまま進めば…!」

 レーダー上には三機の様子が映し出されている。そのうちの一機が大きく離れていく。

その進む先には陸地があった。

「イーグル号。訓練空域から大きく外れている。進路を変更せよ! このままでは、市街地に入る。繰り返す。進路を変更せよ!」

『りょ、了解!』

 北側の目にも、陸地が見えて来ていた。

海岸線沿いに街の灯が見える。そのまま進めば、市街地へ墜落してしまう。

 だが、すでに高度は千メートルを切った。

スパークは収まらず、計器類も狂いっぱなしだ。

進路を変更しようにも機体の現状維持で手一杯だった。

下手に旋回しようとすれば、再び制御不能におちいり海面へと激突する。

 市街地へ突っ込むか、それとも海面に叩きつけられるか二つに一つ。

北川には迷っている時間などなかった。

『こちらイーグル。これより海面への着水を試みる!』

 そう報告すると、機体をわずかに左にへとひねった。

それだけでたちまち機体がバランスを失い、海面へと落ちていく。

『潤! 潤っ! 早く脱出して!!』

 香里が叫ぶ。

 だが、高度はすでに五百メートルを切った。もはや、脱出する余裕はない。

残り三百、二百、百、……。

北川は、自分の内臓が口から飛び出すような感覚に襲われた。もう自分に出来ることは何もない。迫りくる衝撃に備えた。

 ついにイーグル号は海面に激突した。

いくら海面といえども、高速で突っ込んだのならば地面に激突したときと何も変わらない。

北川の肉体にも凄まじい衝撃が走り、前方へと放り出された。シートのベルトが身体に食い込む。

(グハァッ!!)

 ベルトに押さえつけられ、自分の肋骨がへし折れる音を聞いた。

 突入角度が浅かったのだろう。機体は海面から跳ね上がった。その後、いくども海面を叩きながら進んでいく。

 海岸の浅瀬にイーグルの機首が突っ込んだ。海水と砂を盛大に巻き上げ、ようやく赤い機体は止まった。

「イーグル号、不時着しました。付近に人的被害は見られません」

「パイロットの生命反応あり。重傷です!」

 オペレーターが次々と状況を報告する。

イーグル号は、海岸の砂浜で機体の半分以上を地面にめり込ませていた。驚くべきことに、機体はところどころひしゃげてはいたものの、ほぼ原型を保っていた。

 とりあえず大惨事が避けられたことで、司令室に一時安堵のため息が漏れる。だがすぐに次の仕事に取り掛かった。

 すぐさまパイロットの救助と機体の回収のため、部隊に出動命令が下る。上空に取り残されたジャガー号とベアー号の二機にも帰還命令が伝えられた。

 

 

 

 秋子が自分のオフィスに戻ってきた時、すでに時計の針は深夜の一時を回っていた。

部屋の中央にある来客用のソファにどっかりと腰を下ろすと、天井を見上げ、大きくため息を吐いた。

 幸いにもパイロットは無事だった。

だが酷い重傷のため、当分の間、あのマシンに乗ることは出来ない。

墜落の原因の調査と機体の修理も速やかに行わなくてはならない。だが、今日の墜落事故の事後処理によって、これからの開発スケジュールは大幅に変更される事になるだろう、という事は想像に難くない。

 ふと窓の外を見た。

外は雨であった。

夜空は雨雲に覆われ、雨は静かに外の暗闇を、さらに暗く塗りこめている。窓ガラスの内側には、部屋の様子が室内灯の明かりによって映し出されていた。

そこに自分の姿を観る。

(私も年を取ったわね…)

 秋子はそう思った。

この仕事に係わってからの数年間で、身も心も疲れ切ってしまった様に感じていた。

かつては二十代の半ばと言っても通じていたその美貌にも、今ではところどころに小皺が現れ始めている。この間など、髪の手入れ中に白髪を見つけてしまい、少し落ち込んだものだ。

 機体のトラブルによる実験の失敗は、何も今回に限ったことではない。ここまでの大事に至らずとも、理論道理に実験が成功したことなどなかった。それでも、何とか試行錯誤を繰り返しここまでこぎつけたのだ。

 だが、そこへ来て今回の実験の失敗である。

(少し、急ぎすぎたかしら)

 秋子は思う。

本来ならば以前の飛行実験のデータを時間をかけて研究し、さらにあらん限りのシュミレーションをやりたかった。そうすれば、今回の事故は防げたかもしれない。

 だが秋子には時間がなかった。

(また、上層部からやかましく言われるわね)

 事故により墜落した機体の回収と、その存在の秘匿。このマシンの開発計画は、国家の最高機密に属していた。このプロジェクトには一般人には決して知られることが無いよう、あらゆる手段が尽くされている。

それだけに今回の事故の処理は厄介である。下手をすると、プロジェクトの存亡にかかわる事態になる恐れがあった。

 気がつくと、外の雨はやんだようであった。

秋子は立ちあがり、窓のそばに立って夜空を見上げた。

雲はだいぶ薄くなっているようであった。空を覆い尽くす雲の一角から月の光が、ぼうっと透けて見える。やがてその雲も風に流され、雲間から満月が顔を出した。

 青白い月の光をみて、秋子はふと昔のことを思い出した。

(たしか、こんな月の夜だったわね…。ゲッター線を発見したのは)

 ゲッター線。常に宇宙から地球に降り注ぐ宇宙線の一種である。

かつて、秋子は宇宙線をエネルギーとして利用する為の研究を行っていた。

その時、偶然にエネルギーに転用可能な新種の宇宙線・ゲッター線を発見したのだ。

 もし、無尽蔵に地球にふりそそぐ膨大な量のゲッター線を、エネルギーに転換し、利用することが出来れば……。そうなれば、世界中のエネルギー問題は一挙に解決することができる。

これまでの化石燃料と違い、有害な物質を排出することの無い、クリーンでなおかつ無尽蔵に使える夢の新エネルギーとなる。

若き日の秋子は、ゲッター線の研究に没頭した。

 そして、長き歳月をかけたすえに、ついにゲッター線のエネルギー実用化に成功した。

秋子はその時の様子を、今でもはっきりと覚えている。

 あの日の夜。

彼女が苦心して完成させた、ゲッター線の収集装置が初めて動き出したときの感動を一生忘れないだろう。

明かりを消した研究室の中で、装置は集めたゲッター線により、部屋中を青白く、やわらかな光で満たしていた。そう、ちょうど今、秋子が眺めている月の光のように。

 そして現在。

このゲッター線によって様々な科学技術は飛躍的に進歩した。

例えば、ある金属に高純度のゲッター線を浴びせると、その金属は通常では考えられないような形状記憶性をもつ金属へと変貌した。

 さらにゲッター線を効率よくエネルギーへと変換する、ゲッターエネルギー反応炉も開発された。

だが、これらの発展した科学技術が世の中に出回ることは無かった。

 現在のところ、ゲッター線による技術を利用して造られたのは、あのゲットマシンと呼ばれた、イーグル号・ジャガー号・ベアー号の三機の飛行機だけである。今ではゲッター線に関係するものは全て国家機密扱いとなっていた。

 満月が夜空を照らしている。秋子は月を眺め続けていた。

 一瞬、月の前を巨大な影が横切った。それは鳥のようにも見えた。左右に伸びた大きな羽は、月の表面を覆い尽くした。背後に伸びる細長い三本の影。真ん中の一本は、しなやかに揺れ動き、両脇の二本は凶々しい程に節くれだったシルエットと恐ろしく尖った先端を持っていた。

 さらにもう一つ、同じような影が通り過ぎた。

 それを見たとき、秋子の表情が険しいものへと変化した。彼女はあの影の正体を知っていた。

あれは鳥などではない。

「急がないと………」

 秋子はつぶやいた。

 満月は、再び近づいてきた雨雲に隠されようとしていた。

 

 

 

 

 

3.相沢祐一

 

 季節の変わり目。

大気の不安定な時期。

雨はいっこうにやむ気配をみせず、すでに一週間以上も降り続いていた。

雨は街の灯を覆い尽くし、夜の闇を一層濃いものにしていた。

 そんな夜の闇の中を、一本の電車が街へ向かって走っていた。

車両には終電であるせいか、乗客はほんの数人だけだ。

 その中に一人の青年がいた。

肩を落とし、疲れきった様子で椅子に座っている。

色あせ、ヨレヨレの茶色のジャンパーを羽織い、はいているジーンズは、すそが泥で汚れている。

彼のスニーカーも、持ち主同様くたびれきっている。そのスニーカーもやはり泥で汚れてしまっていた。

『地震のため、ダイヤに若干の遅れが出ております。次の駅の到着予定時刻は………』

 車内アナウンスが告げる声を聞き、青年は顔を上げた。

 青年の名は、相沢祐一。

 祐一は腕時計に目を落とした。すでに深夜近い。

ふと、車両の窓を眺めた。

窓ガラスには降りつづける雨水がつたい流れていた。

ふう、と祐一は雨を見てため息をついた。彼は頭上の荷物置き場に置いてある自分のショルダーバッグを見上げた。

(あの傘、やっぱり持ってくるべきだったな)

 祐一は自宅においてきたコウモリ傘のことを考えた。

しかしコウモリ傘は、二日前に外出したときに強風にあおられて壊れてしまった。

だけど、使えないことはなかっただろう。完全に広げることは出来なくとも、頭上にかざせば少々の風雨はしのげたはずである。

 祐一は車内に視線を移した。

近くにサラリーマン風の男がいた。出張からの帰りだろうか。土産袋を脇に抱え、彼もまた疲れた顔で眠っていた。

少し離れた場所では、OL風の女性がイヤホンをつけ音楽を聞きながらマンガを読みふけっていた。

さらに塾帰りであろうか、小学生が携帯ゲームで遊んでいた。こんな遅くまでご苦労な事だ。

 視線を、車内の天井からぶらさがっている広告へと移す。

そこには週刊誌の広告があった。芸能人のゴシップネタや、世の中を騒がせた最近の事件に関する記事の見出しが並ぶ。

 ここしばらくの週刊誌の話題は、この長雨のため、どこかの県の農作物が危機に瀕しているだとか、そのことに対する行政の対応が遅れているが、それはある政治家が選挙の時の公約を守らないからだとか、今売り出し中のアイドルが、ある大物タレントと交際しているだとか、そのようなことである。

 それを見ながら祐一は、先月の週刊誌の見出しを思い出した。

ある海辺の街の海岸で起きた、飛行機の墜落事故。

市街地まで後少しというところで起きたこの事故は、あわや大惨事という所をギリギリのところで回避された。だがそれ以上に、墜落した機体が実に奇妙な形状をした国籍不明機だというので、マスコミが大騒ぎした。

 車内に広告を出している週刊誌も、その飛行機の正体について身勝手な推測を行っていたものだ。

だが、今はどのマスコミもそんな事件を取り上げてはいない。

 ある民間の航空会社が、テレビの記者会見で墜落したのは、我が社のセスナ機であると発表された次の日から、あらゆる報道機関はその事故のことを忘れてしまったようだ。

 車内に車掌のアナウンスが流れる。次の駅が近づいてきたようだ。祐一は広告から目を離すと、立ちあがってショルダーバッグを上の棚から下ろし、下車の用意をはじめた。

 やがて電車が駅に到着した。

ホームに降り立ったのは祐一ただ一人だった。改札口を通りぬけ、駅の出入口まできて足を止める。

 雨は相変わらず降り続いていた。

駅前には繁華街が広がり、深夜近くではあるが人影がまばらに見える。目前のビルに掛かっている電光掲示板に、地震速報が音もなく流れていく。

 祐一は少し考えた。

駅の近くにコンビ二エンス・ストアがある。そこで新しい傘を買うべきか、それとも否か。

 ズボンのポケットから財布を取りだし、中身を確認する。

五百円玉が一枚と十円玉が四枚。それと五円玉が一枚。

計、五四五円。

 祐一は自分の全財産を見て、再びため息をつく。

コンビニの傘は買えないことは無いが、そうすれば今後の生活費もままならない。少なくとも、アルバイトの給料が支払われる来週まで、手持ちのお金で暮らしていかなければならない。

 傘はあきらめることにした。

 自宅のアパートまでは駅から歩いて三十分ほどである。ちょうど雨も少し弱くなったようだ。祐一は雨の中を歩き出した。

 駅前の繁華街を通り過ぎ、住宅地に入ったあたりで一台のパトカーがサイレンを鳴らしながら通り過ぎていった。近くで事件でも起きたのだろうか。

 しばらくすると、遠くから幾つものサイレンが聞こえてきた。

(最近、多いな)

 歩きながら祐一は思った。

このところ毎日のようにパトカーのサイレンを聞くようになった。新聞やニュースでも、殺人や事故、テロ事件などの報道が増えている。

 雨がまた強くなってきた。

ジャンパーはすでに濡れ切っている。防水性は当の昔に無くなっていた。雨水が上着にまでしみ込んできた。春先の雨はまだ冷たい。身体が冷えてきた。

 しばらく歩くと、サイレンの音も聞こえなくなってきた。降りしきる雨と、自分の足音だけが夜道に響く。住宅地内の公園までやってくると、アパートまでの道のりも残りわずかだ。

 その公園は、ジャングルジムや滑り台。ブランコに砂場など、子供達が楽しく遊べるよう整備されてはいるのだが、その公園の片隅はゴミ収集場所となっている。

毎週、大量のゴミ袋が山のように積み上げられ、異臭を放つ。

それも毎週決まった日にだけゴミが出されるのならばとにかく、毎日誰かがその場所にゴミを捨てに来る。おかげでこの公園からゴミの山が消えることは決して無かった。無論、そんな公園で遊ぶような子供達なぞいない。

やってくるのは、カラスと野良犬ばかりだ。

 公園を通り過ぎてしばらくした時、どこからか犬がけたたましく吠えたのが聞こえた。祐一は声のしたほうに顔を向ける。

それは公園の方向から聞こえてきた。

 その吠え声はやがて相手に対し威嚇するような、低く怒気をはらんだ唸り声に変わった。

夜の闇と雨の為、祐一のいる場所からは公園の様子を見ることは出来なかった。だがどうやら、犬は祐一に向かって吠えているのでは無さそうだ。

 犬の唸り声がさらに低くなる。暗闇の向こう、公園の中で何かが動く気配があった。

 次の瞬間、あたりに犬の悲鳴が響き渡った。

その悲鳴は聞くだけでも無残で、残酷で、絶望的で、そしてあまりにも悲しく、いつまでも耳の奥に残った。

(何だ、今のは)

 祐一はその悲鳴に戦慄に近いものを覚えた。

 今のは、決して野良犬同士のケンカなどではない。そう感じた。

闇の向こうで、あの犬は何か得体の知れぬ絶対的な恐怖を感じるものと出会ってしまったのだ。あの悲鳴は、そう思えるほど恐怖にみちていた。

 もちろん、ただの思い過ごしかもしれない。

だが、闇を見つめていると、祐一は雨で濡れた身体がさらに冷えていくように感じた

 雨はさらに強くなり、土砂降りに近くなる。

あまりの寒さに、思わず身震いした。

祐一はきびすを返すとアパートに向かって走り出した。

 祐一の住んでいるアパートが見えてきた。

 築三十年。木造二階建てで、一階と二階それぞれに台所と浴室付の六畳一間の部屋が四部屋ずつ、計八部屋のおんぼろアパートだ。

光熱費込みで家賃はわずか月額一万五千円。

無論、敷金・礼金の類は無し。しかし、ガタガタの階段や、ひどい雨漏りなどを考えると、納得のいく数字かもしれない。祐一はそう思っている。

 祐一は、このアパートの二階、一番奥の部屋を借りていた。この部屋は、アパートの部屋の中で最も雨漏りのひどい部屋だった。これだけ強い雨ならば、すでに部屋の中は水浸しだろう。屋根などあっても、無いのと同じだ。

 祐一は、アパートの錆だらけの階段を上り自分の部屋へと向かった。

部屋の前まで来ると、扉の郵便受けに分厚い封筒が入っているのを見つけた。

差出人は祐一本人である。

郵便先が受け取りを拒否したため、差出人のもとへと送り返されてきたのだ。祐一はそれを見て、今日何度目になるか分からないため息を漏らした。

 祐一は部屋に入った。

案の定、部屋の中は水浸しとなっていた。

天井のあっちこっちにシミが広がり、部屋中に雨を降らせている。

だが、祐一もこの状況には慣れていた。雨水の落下地点には前もってバケツや鍋。お碗や、様々な種類の空き缶などが用意されている。

 しかし、今日は敵のほうが一枚上手であった。

帰宅時間が遅かったせいか、すでにお碗や空き缶など、たいした許容量を持たないものからは雨水が溢れ出ていた。

さらに強い雨のせいで、今まで安全地帯だと思われていた所にまで雨水が落ちていた。

 祐一はそれを見て、これ以上空き缶を置く気力も無くなった。もっとも、これ以上空き缶を畳の上に置いたならば、もはや彼の寝場所すら無くなっただろうが。

 祐一は玄関の片隅に置いてあったコウモリ傘を手に取ると、それを開こうとした。だが傘の支柱が途中で斜めに折れ曲がっていて、なかなか開こうとはしない。腕に力をこめて、無理やり傘を開こうとする。

バキリッ

という音がして、傘が開いた。

傘の骨が折れ、いびつな形になっている。まさしく、羽を広げたコウモリそのものだ。

 コウモリ傘を部屋の中に置くと、その下に封筒とショルダーバッグを置いた。そして玄関脇の狭い風呂場に入ると、びしょ濡れの服を脱ぎ、熱いシャワーを浴びる。

 冷え切った身体が、徐々に温まってきた。

祐一は送り返されてきた封筒のことを思った。封筒の中身は彼が書いた学術論文である。

 その論文にはこういう題名がついていた。

 

<白亜紀後期における文明の確立と、その可能性>

 

 白亜紀とは、今からおよそ一億五千万年前の時代のことである。

その頃の地球は、巨大な恐竜達の全盛期だった。その時代に文明が存在したと、この論文には書いてあるのだ。

 当然、この時代にはまだ人類は誕生していない。

それどころか、哺乳類自体、ネズミのような種類しか存在せず、恐竜の支配する世界の片隅で細々と生き長らえていた時代であった。

そのような世界で、文明などというものが存在するのであろうか。

またもし存在したとしても、それは一体何者によって創られた文明なのか。

 祐一はその論文を、様々な出版社に持ちこんだ。

だが、どこの会社も取り合ってはくれない。オカルト本を出しているマイナーな出版社さえ相手にしてくれなかった。

 シャワーを浴び終わり、服を着替え終えると、まだ雨漏りの無い部屋の片隅にうずくまった。

側らには窓ガラスがあり、前面には薄い毛布と大きな棚がおいてある。棚の中には、いくつもの分厚い学術書と大量の資料ファイルが並んでいた。上には携帯型ラジオが置いてあった。

近くに丸めてあった毛布を羽織り、ラジオのスイッチを入れる。

『―――地方で地震が発生しました。各地の震源は次の通りです。震度3は……………』

 このところ地震情報を毎日のように聞くようになった。

常に日本のどこかが揺れている。

幸い大きな被害は出ていないが、世間の不安は日増しに高まっていた。

 なんとなく窓の外に視線をやると、そこに一匹のヤモリがはりついているのが見えた。頭を下にし、白くノッペリとした腹部を部屋にみせている。

 いつの間にかラジオは天気予報に変わっていた。

この雨は、あと二・三日は降り続くそうだ。

 そんな放送を聞きながら、祐一は昔のことを思い出した。

 

 

 

 祐一がまだ学生を終えたばかりのころ発掘調査員のアルバイトをしていた時期があった。

そのとき、偶然あるものを見つけた

 それは、恐竜の骨の化石。

 調査の結果、その骨は今まで確認されたことの無い、新種の恐竜のものと判明した。

さらに、その恐竜の骨格は、かなり人類と似かよった構造を持つ、進化した恐竜であるとも推測された。

 祐一は、その恐竜の研究を始めた。

学生時代の恩師に頼み込み、そのツテで様々な発掘調査に参加した。

 だが、まだ学者として無名の若者では、おのずと研究にも限界がきた。さらに、あの恐竜の骨も、最初の一つ以外なかなか発見されなかった。

 研究にいき詰まりを感じ始めた頃、彼に協力者が現れた。

 水瀬秋子。

 新種の宇宙線・ゲッター線の発見者にして、新エネルギーの研究者の第一人者でもある人物。

 そしてまた、祐一の叔母にあたる人物でもあった。

秋子は、例の恐竜の骨から微量ながらもゲッター線が放出されていることを発見した。

 その発見がきっかけとなり、二人は共に研究を行うようになった。

学界でも有力な影響力を持つ科学者であった秋子は、無名だが、熱意あふれた甥っ子の研究に、協力を惜しまなかった。

 そしてついに、二人は、世界中を驚かすような世紀の大発見をしてみせた。

約一億年前の地層から、例の恐竜の完全な化石が見つかったのだ。それはまさしく人類と見まごう程の骨格を持っていた。

 ハ虫人類

 それはそう名付けられた。二本足で立ち、真っ直ぐな背骨を持ち、大きな頭脳を収めていたであろうその頭蓋骨には、人類には無いギザギザの牙が幾つも並んでいた。ハ虫人類達は、人類が誕生する遥か以前に、恐竜からさらに進化した者として存在したのだ。

 二人はさらに研究を続けた。

 秋子は、ハ虫人類の化石からゲッター線の反応があったことについて、ひとつの仮説を立てた。

それは宇宙から降り注ぐゲッター線が、地球上の生命の進化に関して何らかの影響を与えているのではないか。というものだった。

 その一方で祐一は、ハ虫人類が文明を築いた可能性を研究していた。

あれだけ、人類に近い進化をした生命体ならば、文明をもっていたとも考えたのだ。

事実、研究を進めていくと、まだ人類が誕生する以前の地層から、いくつもの石器や土器らしきものも発見されていた。

 その考えは、やがて証明された。

 二人は、とある山奥の地下で、大規模な洞窟と、その内部にハ虫人類の集落を発見した。そこからは、これまでに発見した物と同種類の石器・土器の数々と、いくつものハ虫人類の化石が発見された。

 この研究成果によって、二人の名声は世界中にとどろくことになった。

進化の歴史の常識はくつがえされ、人類は万物の霊長たる存在が、己だけではなかった事を知った。

 

 

 

 その後二人は、これまでの研究成果を学会で発表することになった。

学会の会場は、祐一の母校だった。祐一にとって、この学会は大きな意味を持っていた。

これまで数々の発見を行ってきた二人だが、まだ正式に学会で発表を行ったことは一度も無かった。研究内容が、当時あまりにも異端であるという理由のため学会での参加が認められ無かったのだ。

 だがついに学会は彼らの研究を認め、参加を許した。

それは二人の研究が世界中の学者達に受け入れられたことを意味する。今回の学会の主役は、祐一と秋子であった。

 だがその学会は、祐一の運命を変える日となった。

 学会当日、秋子は祐一の共同研究者として出席するはずであった。

しかし、秋子は来なかった。

やむなく、祐一は一人で発表を行うことになった。

 発表を控えていた祐一の元に、会場の役員がやってきて告げた。

「水瀬博士が、テレビで記者会見を行っている」

 知らせを受けて祐一は、テレビのあるロビーへと向かった。

ロビーはすでに人でいっぱいになっていた。

学会をすっぽかして秋子は何をしようとしているのか。皆、今日の主役の一人である研究者の奇妙な行動に注目していた。

 テレビの中で秋子は、殺風景な部屋の中、会見用テーブルの向こう側に一人で座っていた。他に人影は無い。

 秋子が口を開いた。

『本日、この場にお集まりいただいた皆様方。そして今現在、学会が開催されている会場の皆様方。及びこの放送をご覧になっておられる全ての方々。私はこれより皆様方に対し、まことに重要な事実を申し上げます。これから私が申し上げます事実は、全世界の学問に対し、あまりにも罪深き行為であり、決して繰り返されてはいけないものであります』

 彼女は一体、何をしたいのだろうか。と、近くの人が祐一に問い掛けてきた。

だが、祐一は困惑するばかりだ。

どこの放送局なのかと、問い返してみると、国営放送だという答えが返ってきた。

 テレビの中で秋子は続けた。

『私。水瀬秋子は、ある一人の研究者と共に一つの研究を行ってきました。その研究は幸いにも、皆様方から一定の評価をお受けいただきました。そう、ご存知の方も居られるかと存じますが、その研究とは<ハ虫人類>と呼ばれる新種の恐竜に関するものでございます。今ではすっかり、世界中をにぎわす斬新な説として有名となりました……』

 秋子はそこで少し、語るのをやめた。テーブルの上で組んだ両の手を見つめ、押し黙る。

 やがて彼女は、再び語り出した。

『しかし……、しかし私は語らなければなりません。この説に秘められた真実を……。学問を志すものにとって、決して許されるはずの無い過ちを告げなければならないのです。たとえ、それが彼を裏切ることになろうとも………。そう、この<ハ虫人類存在説>に関する、全ての調査報告書。及び、全ての出土品は、我が共同研究者による捏造によるものであった事を、ここに告白いたします。そしてその事実を知りながらも、その行為を黙認していた私の過失と罪を認め、ここにいない我が共同研究者に成り代わり、深く謝罪の意を表明いたす所存にございます………』

 そういうと秋子は立ちあがり、カメラに向かって深々と頭を下げた。

 この秋子の発言に、学会会場は大混乱におちいった。

会場のロビーにいる全員が、祐一の元へと押しかけてくる。

 祐一はただ呆然と立ち尽くしていた。

頭の中では、さっきの言葉が渦を巻いていた。

(何だ………、今何と言っていたんだ。捏造って言っていたぞ。捏造だと!? そんなバカな! 誰がでっち上げなんかするものか! あれは本物だ。全部、二人で発見してきたじゃないか! だいたいなぜ、あのような事をテレビでいうんだ。なぜ、ここで言わない。なぜここにいないんだ!)

 いつのまにか祐一は、人々の大群の渦に囲まれていた。

皆が一斉に問い掛けてきた。

 水瀬博士が言った言葉は真実かどうか。

 祐一は、デタラメだ。自分は無実だ。と叫ぼうとした。

しかし、周囲の喧騒がその叫びをかき消した。

 学会会場の電話という電話が、一斉に鳴り始めた。会場に大勢のマスコミが駆けつけ、混乱を一層大きくした。

 祐一は必死の思いで会場を逃げ出した。

 

 

 

 その後、祐一は秋子を探した。

だが、秋子はあの日以来、姿を消した。ハ虫人類に関する全ての資料と共に。

 残された資料は、全ていい加減な贋物ばかりであった。

遺跡や、発掘現場もいつのまにか崩されていた。捏造疑惑を解く証拠は一つも残されてはいなかった。

 祐一はテレビ局を訪れた。

しかし、誰もあの記者会見の場所を知らなかった。

やがて、祐一は捏造疑惑の汚名を着せられたまま、学界そのものを追われた。

 

 

 

 それからの年月。祐一は秋子の行方を探し続けながら、一方ではハ虫人類の研究も続けていた。

だが、秋子も見つからず、研究も受け入れられない。今ではその日の生活にも困るようになっていた。

(もう、限界かも知れないな……)

 祐一はそう思った。

おんぼろアパートの部屋の片隅で、雨漏りを避けつつ、薄い毛布にくるまっている自分。まだ借金こそしてないものの、このまま今の生活を続けていけばアルバイトだけでは暮らしてゆけなくなる。

いっそ、全部忘れて、捨て去ってしまえば楽になるかもしれない。アルバイトだけでなくちゃんと職を探そう。

そして、普通の生活を送ればいいじゃないか。

 だが、祐一はそんな思いを頭から振り払った。

まだ終われない。

いや、終わりたくない。

秋子を見つけ、真実を知るまでは。

そういう思いのほうが強かった。

 それは、意地かもしれなかった。

 外では雨に加えて、風も出てきたようだ。窓ガラスがガタガタとわめき、アパート全体はきしむような唸りを上げた。

 祐一の頭上に、雨水が落ちてきた。ついにその場所も雨漏りを始めたようだ。

(さすがに、これはまいったな)

 祐一は、不恰好なコウモリ傘を取りにいこうと立ちあがった。

 その時。

…………ボドッ。

という音と共に、何か黒っぽい影が部屋の隅に落ちるのを、彼は目にした。部屋の隅に目を向ける。

 そこにはヤモリがいた。

 背中から落ちたため、ノッペリとした白い腹部を上にしてもがいていた。

身体を向き直らせたそれは、表側は黒色をした大きなヤモリで、まるで血の様に赤い目をこちらに向けた。

 同じ場所に、さらに。

…………ボドドッ。

と、もう一匹ヤモリが落ちてきた。

 祐一は、ヤモリが落ちてきた天井を見上げて、思わず唸った。

「うっ…!?」

天井の隅には、何匹ものヤモリ達が張り付いていた。

二匹や三匹ではない。

数十匹、いやそれ以上の数が天井の片隅を黒く覆い尽くしていた。

 黒い固まりの表面がうごめく。また一匹、床に落ちた。

 天井に小さな穴が開いていた。ヤモリ達はその穴から、部屋へ侵入していた。部屋に入ろうとするヤモリの数はまだまだ多そうであった。

狭い入り口から何匹ものヤモリの顔が突き出ている。ぎゅうぎゅうに身を詰めながら、天井の穴から這い出そうとしていた。

…………ミシリッ。

 天井の板がきしむ音が聞こえた。

次の瞬間、穴の周りの板が割れた。広がった穴からは、

…………ボドドドドドッ。

と、大量のヤモリ達が落下してきた。

 祐一は、おもわず後ずさりした。背中が窓ガラスにぶつかった。

 そのとき、彼は背後に不気味な気配を感じた。

降り返って、窓ガラスを見る。

 窓ガラス一面が、大量のヤモリの白い腹部で埋め尽くされていた。

「うっ…、あぁ…………」

 一目散に窓から離れた。反対側の壁に身を寄せる。

 それはあまりに凄まじい光景であった。

部屋中の壁、床、天井のほとんどがヤモリの群れによって埋め尽くされた。

天井の穴は、休むことなく新たなヤモリを供給し続けている。

ヤモリの群れは、それ自体がまるで一個の黒い生き物のように部屋を飲み込んで行く。

 それは、にじり。

にじりっ。

と、ゆっくり祐一のほうへ近づいてきた。

 

 

 

 

 

4.エージェント久瀬

 

 先の出来事より数十分前。

 街の中心部。

駅の周辺に広がる繁華街の一角に、何台ものパトカーが集まっていた。

雨の中、ネオンきらめくビルの隙間の路地で、警官達がビニールテープをはり、立ち入り禁止区域を作っていた。

 通りを歩いていた人々が、何事かと野次馬にやってくる。たちまち、周囲に人垣ができあがった。

 テープの向こう側。路地の奥から、ときおりカメラのフラッシュが光る。

その路地から、一人の警官が口を押さえながら駆け出してきた。そのまま近くのパトカーのかげにうずくまると、その場所に胃袋の中身を全部吐き戻した。

 通りの近くに一台の車がやってきた。

黒色の国産車。

これといった特徴の無い、どこにでも走っているような車だ。

車からスーツ姿の男が二人、降り立った。鋭い目つきを縁無しの眼鏡で隠した男と、もう一人は若者の雰囲気を色濃く残した男。灰色の背広を、二人は一分の隙も無く着こなしていた。

 二人は現場にむかって歩き出す。

周囲の野次馬をかき分け、立ち入り禁止のテープくぐろうとした。二人に気づいた警官がそれを押し止めた。

 現場の奥からコートを着た一人の刑事が出てきた。

二人の男に気づき、そばにやって来る。二人の男のうち、鋭い目つきの眼鏡をかけた方が、懐から一枚の紙を取りだし見せた。

刑事がそれを見て、驚いたような表情で顔を上げた。

その男は刑事に言った。

「私達に、現場を見せてもらいたい」

 刑事は二人を路地へと案内した。

路地の狭い道は、ビルの勝手口から出された様々なゴミ袋や、ダンボール箱。空のビール瓶のケースが山のように積み上げられていた。地面には雨でいくつも水溜りがあった。

 そんな路地の片隅に、青いシートが掛けられていた。

シートの端から人間の足が突き出している。周囲にはどす黒い血溜りが広がっていた。

「これが被害者の遺体です」

 刑事はシートを示し言った。二人に振り返り、続ける。

「はっきり言って、ひどい状態です。この遺体を見て、若い警官が三人も吐き戻してしまいました」

「構わない。こういった死体には慣れている」

 若い方の男はそう言うと、シートをめくり上げた。

 そこには、背広姿の男が仰向けに倒れていた。

腹部が切り裂かれ、大穴が開いている。穴の中は空洞だった。そこに有るべきはずの内臓類が無かった。

背広は血に染まり、あちこちが破れている。

両腕は引きちぎられ、首が奇妙な方向にねじまがっている。

その顔の眼窩から瞳が失われていた。顔の中心に、ぽっかりとした空洞が二つ、闇をたたえている。顔面の肉は引き裂かれ、すでに人相に区別はつかない。

 若い男は、思わず顔をそむけて後ずさりした。

眼鏡の男がかわりに、遺体を見た。

彼は、しばらくそれを眺めていたが、やがて血まみれの背広の内側に手を伸ばした。しばらく探った後、一冊の手帳を取り出した。開いて中を確かめると、それを自分の懐に収めた。

 刑事がそれを見て、慌てて注意した。

「ちょっ、ちょっと待ってください。勝手に現場の物を持ち出されては困ります。被害者の身元の確認は、まだ終わってないのですよ。あなた達は一体何の権限があって…………」

「私達は特務で動いている。これ以上の検索は無用に願う」眼鏡の男が、さえぎって言った。「それと、私達がこの場所にやって来た事は、決して記録には残さないでもらいたい」

 そう刑事に言い残すと、眼鏡の男は若い男と共に現場を後にした。

 二人は車に乗り込んだ。

眼鏡の男が助手席に座り、携帯電話を取り出し、記憶している電話番号をすばやく押した。彼の携帯電話には、通話記録や電話番号などは一切登録されていなかった。必要な情報は全て、彼の頭脳に記憶してある。

 短い呼び出し音の後、電話がつながった。

 眼鏡の男は、相手が誰かも聞かずに、いきなり話し出した。

「私だ。一課の久瀬だ。報告のあった例の遺体だが、やはり沢井だった。…………そうだ、対象者二〇三の監視任務についていた三課の沢井だ」

 若い男が、運転席につき、車を発進させた。顔色が少し青ざめている。

 久瀬と名乗った、眼鏡の男は電話を続けた。

「…………ああ、間違い無い。沢井を殺したのは、ヤツらだろう。警察のほうへの対処を急いで頼む。ヤツらは対象者の命を狙っている。これより我々は、対象者二〇三の身柄の確保に移る。以上だ」

久瀬は携帯を切り、懐に戻した。

 車は繁華街の通りを進む。雨だというのに、通りは人であふれていた。

 若い男が、口を開いた。

「久瀬さん。………やはり、沢井だったんですか」

「そうだ。君も確認したろう」

久瀬は、相棒の問いにそっけなく答えた。

「………すいません。自分は、思わず目を逸らしてしまったもので…………」

若い男は、そう言うと押し黙った。

 久瀬は、自分の懐から、あの遺体から取り上げた手帳を取りだし、開いた。

手帳のカバーと表紙の間に、隠してあったかのように一枚の写真が挟まっていた。

写真には、数人の男が肩を組みあって写っていた。その中に、手帳の持ち主であった男と、今、車を運転している若い男の姿もあった。

「井田。たしか君は、沢井と同期だったな」

久瀬は、相棒の名を口にしていった。

 井田と呼ばれた若い男は、黙ったままだった。

 久瀬は続けた。

「気持ちは判る。だが、任務中だ。死者の事を思うのは仕事が片付いてからにしろ。感情を乱せば、状況に対処できなくなる。………そうなれば、次に死ぬのはお前だ」

 久瀬は写真を手帳に戻した。

車が交差点にさしかかり、赤信号のために止まる。

 久瀬は、手帳を井田に差し出した。

「身元が判るような物を持ち歩くのは感心しないが…………これは、君に預けておく。帰ったら弔ってやれ」

「…………ありがとうございます」

井田が手帳を受け取った。

 久瀬は窓の外を見た。

繁華街は、会社帰りのサラリーマンやOL。若者達で賑わっている。

彼はその様子を見て思う。

(俺達は、彼らと何と違った世界に住んでいるのだろうか)

 彼らは、この世界の影の住人。

世の理を裏から見つめ、夜の世界に暗躍するものたち。

この国の政治を決して表舞台に立つことの無く支える、政府の秘密諜報機関の工作員。

俗に言うなればスパイである。

彼らは、表の世界の住人達には想像もつかない、常に死と隣り合わせの世界に生きていた。

 彼自身、すでに同僚を何人も失っている。

だが、親しい友の死を悲しむヒマなど無かった。その事で冷静さを失ってしまえば、次に死ぬのは自分であった。久瀬はその事を、嫌になるほど経験してきた。

 信号が青になり、車が発進した。

 繁華街を過ぎ、簡素な住宅街へと車は進む。街の明かりから遠ざかるにつれ、人影はまばらになり、周囲は闇に包まれていく。

 住宅街の奥にはいり、公園の近くにきた。

「たしか、このあたりのアパートに住んでいるはずです」

井田はそう言って、車の速度を落とした。

 久瀬の目が、公園の奥に何かをとらえた。

「車を止めろ」

久瀬の言葉に、車が止まる。

 彼は車を降りると、公園に向かって行った。

「どうかしましたか」

井田も久瀬の後を追って、車を降りた。

 二人は公園の奥にある、ゴミ袋の山の近くにやってきた。

「こいつはひどいですね。なんてゴミの山だ。ここの住民は、分別も、リサイクルも、おまけに収集日も、まるで関係なしのようだ」

「問題は、こいつだ」

久瀬がゴミ山の一角を示していった。そこは滅茶苦茶にあらされ、ゴミ袋の中身が周囲に散乱していた。

 その中に一匹の犬の屍骸が混ざっていた。

白目をむき、あごが外れんばかりに開かれた口からは、長い舌がはみ出ていた。

体毛は薄汚れていたが、それは雨だけのせいではない。全身に泥と、どす黒い血液がこびり付き、固まっていた。

もっとも、全身といってもその屍骸は、後ろ足が下半身ごと失われ、引き千切られたような傷跡を露呈していた。

「久瀬さん。これもヤツらの仕業と思いますか」

「ああ、その可能性は高いな。おそらく、喰い千切っていったのだろう」久瀬は犬の屍骸を手にとって調べる。「…………まだ傷口が新しいな。襲われてから、そう時間が経っていない」

「ということは、ヤツらはもう近くに…………」

二人に緊張が走った。

「急ごう。ヤツらより先に彼を確保せねば」

そう言うと、二人は車を発進させた。

 

 

 

 

 

5.トカゲ

 

 壮絶。

 アパートの一室の風景はその一言に尽きた。

狭い部屋は黒く蠢いていた。

祐一はヤモリに囲まれ、壁に身を寄せつつ玄関に向かってゆっくりと進んでいった。

(…………殺される)

 祐一は本能的にそう直感した。

 部屋を占拠している、数千匹にも達しようかという数のヤモリ達が一斉に祐一のほうへ向いた。

血のような赤い目にじっとみすえられる。その目はまさしく獲物を狙う目だった。

祐一はトカゲに対する嫌悪感からではなく自分に対する明確な殺意から、ゾッとするものを感じた。

(……間違い無い。このままでは殺される!)

 彼は玄関に向かって走り出そうとした。

ヤモリに背を向けた次の瞬間、ヤモリが一斉に飛びかかって来た。

足に、腕に、背中に、数十匹のヤモリがはりつく。

頭上から降ってきた数匹のヤモリに顔面を覆われた。顔にヤモリの冷やりとした感触を感じた。視界がふさがれ、思わず足がもつれる。

玄関まで後少しというところで倒れこんだ。全身にヤモリ達が這い登ってくる。とりわけ大きな一匹のヤモリが首筋にはりついた。

 祐一の意識が朦朧としはじめた。

全身から力が抜けていく。

黒い固まりが祐一の身体を完全に飲み込もうとした。その時、

―バーン!

 アパートの戸がいきおいよく蹴り飛ばされた。

一人のスーツ姿の男が部屋の中へ飛び込んでくる。男は部屋の中の光景に一瞬ギョッとしたものの祐一の姿を見つけると、その襟首をつかみ外へ一気に引きずり出した。

 スーツ姿の男は、祐一の首筋にはりついている大きなヤモリを引き剥がした。

それを床に叩きつけ、力いっぱいに足を踏み下ろす。

ヤモリの頭部が嫌な音を立ててつぶれた。血と肉片が周りに飛び散る。頭部を失ったものの残った身体は手足をバタバタとふりまわし抵抗を続けようともがいた。

男はそれを蹴り飛ばすと、祐一の身体にはりついている残りのヤモリをはらいながら、彼をアパートの階下へと引きずっていった。

 祐一の身体に力が戻り、意識が再びはっきりとしてきた。

スーツの男が、アパートの外に向かって怒鳴った。

「井田、火炎放射器を持って来い! 部屋ごと焼き払うんだ!」

「了解!」

外から誰かが答えた。

「や、焼き払うだと!?」

 祐一は焼き払えという言葉を聞いて、思わず声を上げた。意識が戻ったばかりで状況が理解できなかった。

 いきなり、祐一の身体が階段に投げ出された。

声を上げる暇も無く、彼は階段を転げ落ちて雨が降りしきる中に放り出された。

その時、そのすぐそばをスーツ姿の男がもう一人、階段を駆け上がって行った。

 入れ違いに、祐一を突き落とした男が下りてくると祐一を無理やり立たせ、通りへと引っ張って行った。

 祐一の全身が、足を一歩一歩踏み出すごとに悲鳴をあげた。痛みに耐え切れず足が止まりそうになった時、背後が急に明るくなった。思わず振り返る。

―ゴオオオォォォォォ!

 轟音と共にアパートの祐一の部屋が炎に包まれていた。

さっきの男が戸口のところで大きな筒のようなものを抱え、仁王立ちになっていた。筒の先から、強力な炎が噴き出される。炎は部屋に収まりきらず、壁の隙間から吹き上がった。

 それを見て、祐一は思わず叫んだ。

「あんた達、何をやっているんだ!?」

 グイッと身体が後ろから引っ張られた。

もう一人の男が、有無を言わさず祐一を通りへと連れて行く。通りには一台の車が止められていた。

「早く乗るんだっ!」

 男は祐一を車の後部座席に押し込もうとした。

祐一はその手を振りほどいた。

「やめろっ、よせっ! 一体あんた達は何者だ。何が起こっているんだ!」

 男は、その問いには答えず再び彼を車に押し込めようとした。

その時、アパートから悲鳴と共に三つの人影が飛び出してきた。

 それはアパートに住む、他の住人達だった。

祐一は隣人達の姿を見て息を呑んだ。

彼らは三人とも、全身をヤモリに覆われていた。

首筋にはとりわけ大きなヤモリがはりついている。皆、白目をむき、口は開かれ舌がダランと垂れ下がっている。

その口から意味不明な呻き声を上げながら、まるで助けを請うかのように腕を前方に掲げ、祐一と男のほうへ近づいてきた。

 そばにいた男が懐から大型の自動拳銃を取り出した。

それをヤモリに取りつかれたアパートの住人に向けると、躊躇無く引き金を引いた。

―ガ、ガ、ガーン!

 轟音と共に撃ち出された三発の銃弾は、正確に彼らの頭蓋を撃ちぬいた。

頭の半分が砕け散り、脳しょうが撒き散らされる。

「撃つなッ、やめろっ、やめるんだ!」祐一は男の腕に飛びついた。「彼らを殺すつもりか!」

 男は祐一を突き飛ばした。

「黙れッ! 彼らはもう死んでいる!」そう言うと再び拳銃を構える。「見ろ。彼らはトカゲどもに操られているんだ。ああなってしまったら、もう手遅れなんだよ!」

 みれば彼らは、頭の半分を吹き飛ばされながらも、なおも手を前に突き出しゾンビのように歩み寄ってくる。

「ヤツらは。トカゲどもは、君を狙っているんだ。君を殺そうと狙っているんだよ!」

 言うと同時に拳銃を撃つ。

轟音と共にゾンビ達がよろめいた。だが、その歩みはまったく衰えない。

その時、火炎放射器を持った男がアパートから駆け降りてきた。ゾンビ達に向かって火炎を放つ。

 強力な炎が不幸な住民達を飲み込んだ。

しかし全身を紅蓮の炎に包まれながらも、なおも歩みを止めようとしない。

肉が焼け焦げ、ブシブシと音を立てた。

再び火炎が浴びせられ、彼らは今度こそ消し炭と化した。

 あたり一面に、生き物の焼けた匂いがひろがった。

アパートの火はすでに全体に燃え広がり、祐一はあまりの出来事に言葉を失った。

 スーツ姿の二人の男が、祐一のほうを見ていた。

「…………あんた達は、いったい何者なんだ」

 祐一はやっとの事で、声をしぼりだして聞いた。

アパートの近くから火炎放射器を抱えた男が近づいてくる。その男がそれに答えようと口を開いた。

「我々は…………」

 そのとき炎の中から、また人影が飛び出し、彼を弾き飛ばした。

男の身体が空高く舞い上がる。

空中でクルクルと回転すると、祐一のそばに頭から叩きつけられた。

―グシャリ

 骨がつぶれる鈍い音がした。

顔面がつぶれ、周囲に鮮血が飛び散る。

男はうつ伏せに倒れ、全身を二・三度ビクビクと痙攣させるとそれっきり動かなくなった。

「い、井田っ!」

 スーツの男は、相棒の身に起こった突然の事態に声を上げた。

井田と呼ばれた男は、すでに息絶えていた。

 残された二人は、彼が投げ飛ばされた場所に顔を向けた。

アパートの炎に照らし出された、一つの人影があった。

それは二メートルを越す大きな人影。

広い肩幅とたくましい手足は発達した筋肉が大きく盛り上がっている。

手足の先には、ナイフのような鋭いカギ爪が禍禍しく伸びていた。

全身は堅そうなウロコによって覆われている。

その顔は、背後から炎で照らされて影になっていたものの、それでも真っ赤に輝く両眼がハッキリと見て取れた。

その目は部屋を襲ったヤモリ達と同じ、血のような真紅の目だった。

―グウルルゥアァァァ………

 そいつは地獄の底から響いてくるかのような、重く低い唸り声を上げた。

開かれた口は、その目と同じく真っ赤に燃え盛り、鋭い牙と蛇のような舌をのぞかせた。

「…………こ、こいつは!」祐一はそいつの姿を見て、愕然としながら叫んだ。「こいつは、ハ虫人類!」

 まさしくその姿は、祐一が発掘し、研究していたあのハ虫人類の姿形そのものだった。

まさしく、それは骨格模型から復元された姿そのままに存在していた。

太古の昔に滅び去ったはずの、幻の生命体が今まさに目の前に現れ、一人の人間を瞬時に殺して見せたのだ。

 ハ虫人類はその赤い目を祐一に向けた。

殺意がこもり、血に飢えた目。

それは肉食動物が獲物を捕らえる時に見せる表情だった。

紅い目に捉えられ、祐一の首筋にサアッと冷たいものが走った。目をそらす事が出来ない。そらした瞬間に襲いかかられ、その鋭い爪でズタズタに引き裂かれるような気がした。

 すぐそばでスーツの男が銃を構えた。

大口径の銃口が凄まじい轟音と共に火を吹いた。弾丸がハ虫人類の顔面に炸裂する。

―ガアァアアアア!!

 ハ虫人類の身体が、後ろに吹っ飛ばされた。

しかし、すぐに身を起こす。弾丸は堅いウロコに阻まれ、大したダメージを与える事が出来なかったのだ。

 それを見て、スーツの男が叫んだ。

「車に乗るんだッ!はやくッ!」

 その声に、祐一は素早く身をひるがえし、車の後部座席にもぐり込んだ。

間をおかず、スーツの男も運転席に飛び込んでくる。

 ハ虫人類は身をかがめると、カギ爪のついたその太い足で大地を蹴り、車めがけて飛びかかってきた。

スーツの男が目いっぱいアクセルを踏み込む。

ハ虫人類が襲いかかる寸前の所で、車は急発進した。

 車は住宅地の狭い通りを凄まじい速度で駆け抜けた。しかし、後ろからハ虫人類が負けじと追いすがってくる。

スーツの男の運転技術は素晴らしかった。

車は、狭い路面、雨に濡れた曲がり角を、激しい水飛沫と爆音を轟かせながら、速度をほとんど落とさずに通り過ぎる。祐一は車が曲がる度に後部座席でふりまわされた。

 車は住宅地をぬけ、大きな広い道路に出る。

祐一は背後を振り返った。ハ虫人類の姿はすでに無かった。スーツの男もバックミラーで後ろを確認した。

「……もう追ってこないな。振り切ったのか」

 祐一の言葉に、スーツの男は答えなかった。黙ってアクセルを踏み込む。

車はさらにスピードを上げ、前を走っている車を次々と追い抜いていった。

 祐一は、また振り廻されてはかなわないと思い、シートベルトを探した。しかし後部座席にベルトがなかったので、彼は助手席のシートを後ろに倒すと、その上を乗り越え助手席に座った。

シートを起こしベルトを締めると、スーツの男に対し口を開いた。

「何度も聞くが、あんた達は何者だ。それにアパートを襲ったアレは一体なんだったんだ。知っているのなら教えてくれ」

 その問いにスーツの男も口を開いた。

「奴らはハ虫人類。君を殺そうと狙っている。そして我々は………いや、私は君を守るため政府から派遣された者だ」

 そう言いながら彼は、車の速度をさらに上げ、前を走っていたトラックを強引に追い越した。

後ろでトラックが激しくクラクションを鳴らした。

「やっぱりアレはハ虫人類だったのか………。それに政府の人間だって。さっぱり分からない事だらけだ。だいたいなぜハ虫人類が存在しているんだ。それになぜ俺が狙われなくちゃならないんだ。そして、なぜあんた達がそれを知っている?」

「私に関しては、君にこれ以上しゃべる事は無い。君がなぜ狙われているかということも私は知らん。私はただ自分の任務を遂行しているだけだ。もっとも、ハ虫人類に関しては君のほうが詳しいんじゃないか」

「あんた………俺が何者か知っているのか」

「当然だ。我々はずっと君を監視していたのだからな」

 祐一は驚いた。

いったいいつから監視されていたのだろうか。

そもそもなぜ監視されなければならなかったのか。

 一瞬、祐一の頭の中でこれまでの事柄が一本につながった。

生きていたハ虫人類。

ずっと監視されていた自分。

そして………

(まさか………まさかあの時の事も!)

 祐一がある結論に至ったとき、サイドミラーに映るトラックが突然よろめいたのが見えた。

祐一はトラックを見るなり叫んだ。

「奴だッ。追いつかれたぞッ!」

 トラックの屋根の上にあのハ虫人類がしがみついていた。

走行している車の上を次々に飛び移りながら追い掛けてきたのだ。

 トラックの屋根からハ虫人類の姿が消えた。次の瞬間、車が大きく揺れ、天井が大きくへこんだ。窓ガラスにヒビが入り、爪で車体を引っかく音が響く。

「くそおっ!」

 スーツの男は悪態をつきながら、ハンドルを必死に操った。

 助手席の窓ガラスに巨大な手の平が押し付けられた。ガラスに鋭い爪が食い込む。上からヌウッと、逆さまにハ虫人類が顔をのぞかせた。

祐一は間近でその顔を見た。

表面は全てウロコで覆われ、体毛といったものは一本も無い。冷たい感触を思わせる皮膚。爛爛と光る紅いトカゲの目。顔の中心には小さな鼻孔が開き、たくましく大きなアゴにはギザギザにとがった大きな歯と牙が整然と並んでいる。

その口の端がニイッとつりあげられた。

(笑った!?)

 祐一にはそう見えた。だがそれは、凄惨で残忍な笑みだった。

「チイッ!」

 スーツの男が舌打ちし左手で拳銃を取りだすと、助手席の窓に向けた。

祐一のすぐ目の前に拳銃が突き出される。祐一はとっさに両手で耳をふさいだ。

―ガァーン!!!

 間近で激しい轟音がはじけ、祐一は鼓膜が破れそうになった。

窓ガラスは粉々に砕け散り、弾丸はハ虫人類の口の中に撃ちこまれた。大きなアゴが砕け、思いっきり身をそらした。窓からハ虫人類の姿が消えた。頭上で屋根をかきむしる甲高い音が響いた。

 祐一はまだ激しい耳鳴りがしていた。

スーツの男は伸ばした左腕を戻そうとした。その時、ドカッという音と共に天井からふしくれだった太い腕が突き出され、銃を握った左腕を鷲掴みにした。

鋭いカギ爪が、容赦無く腕に食い込んでいく。

「グァァァアッ!」

激しい痛みにスーツの男は悲鳴を上げた。左手から力が失われ、拳銃が祐一のヒザの上に落ちた。

 祐一はとっさに拳銃を拾い上げると、身をよじって天井から突き出されているゴツゴツとした太い腕に銃口を押し付けた。

拳銃を両手で構え、引き金を引く。

 猛烈な衝撃が両腕をつきぬけた。

ハ虫人類の腕はヒジの付け根から撃ち砕かれ、血と肉片が車内に飛び散った。

―ウオオオオオオオオオオオオオオッ!!??

 苦痛の叫びと共に、短くなった腕が血を滴らせながら上へ引き抜かれた。

祐一は男を見た。スーツの男は痛みのあまり気絶していた。

 ハ虫人類がボンネットの上に飛び降りた。

アゴを砕かれ、片腕を失い、両眼を憤怒で燃やしながら、残った片腕をフロントガラスに突き立てた。

ガラス一面が細かくヒビ割れ真っ白になる。

祐一は運転席に足を伸ばし、ブレーキぺダルを力いっぱい踏み込んだ。

 急ブレーキに車体がうなりを上げ、ボンネット上のハ虫人類は前方へ投げ出された。

祐一も身体をフロントガラスに打ちつけた。そのショックでガラスは完全に砕けたが、祐一はシートベルトによってかろうじて車外に放り出されるのを免れた。

車体は横に水平に一回点スピンして止まった。

 祐一は前方に投げ出されたハ虫人類がうめきながらも再び身を起そうともがいているのを目にした。

(奴を殺さなければ、こちらが殺される……)

祐一の心の奥で何かが燃え上がった。

(殺す。完全にとどめを刺すっ!)

運転席に身を乗り出すと、燃え上がる衝動のままにハンドルをつかみアクセルを踏み込んだ。

車は猛然とハ虫人類めがけて走り出す。

身を起しかけたハ虫人類は、車のバンパーに腹部を激しく打ちつけた。

上半身がボンネット上に折れ曲がる。

口からどす黒い血が吐き出され、むき出しの運転席にとんだ。

下半身を車体の下に引きずりながら、車はエンジン音を上げて突っ走った。

 道路脇に一台の車が停車していた。車はそこへ追突した。

ハ虫人類の身体は車と車のあいだでつぶされ悲鳴を上げた。

ぶつかったショックでエアバッグが開く。

運転席に身を乗り出していた祐一は、身体の側面をエアバッグに激しく打たれ、シートに押し返された。

 全身に痛みが走った。

あまりの苦痛に息ができない。

祐一は激しく咳き込んだ。だんだんと意識が遠くなっていった。

 薄れゆく意識の中、祐一はハ虫人類が断末魔の咆哮をあげるのを聞いた。

 

 

 

 

 

 

ゲッター華音その1 あとがき

 

今晩は。特撮大好き素人物書き、+9です。

普段は仮面ライダーばかり書いている人間が、ついに、あの名作ゲーム「Kanon」の二次創作に手を出してしまいました。

しかも、よりにもよって、スーパーロボットの金字塔「ゲッターロボ」とのクロスオーバーという無謀な試み。

しかも「ゲッターロボ」は原作版の、ちょっとバイオレンスちっくなテイストを目指してしまったものだから、さぁ大変。

Kanon」登場人物たちのキャラクターが、どんどん、どんどん、違う方向へ行ってしまうという二次創作にあるまじき状況になってしまいました。

はっきり言って、キャラの名前以外、どこがKanon」なんだ、と言われても反論できないくらい、オリジナル設定になってしまいました。うむ、笑って誤魔化そう。テヘッ♪

と、言う訳で、読者様の大きく温かな心に期待したいと思います。

 

と、ゆーわけで

・言い訳代わりの登場人物紹介。

 

1/相沢祐一

 言わずと知れた「Kanon」の主人公。今作品では「Kanon」本編は“無かったこと”として進んでおります。…って、これじゃあ、原作ぶち壊しどころかガン無視なわけですが。

 まぁつまり、この世界での祐一は学生時代、雪の舞うあの街に引っ越してもいなければ、あの奇跡に纏わる物語も経験していないのです。

 つまり、現時点で登場人物の大半とは面識がありません。だから、久瀬とも初顔合わせです。ですが一応、水瀬母娘とは関わりを持っています。

 この世界での祐一の年齢は、原作よりもかなり高めな二十代半ばから、やや後半より。当然、その他の登場人物も同様の年齢設定となっています。

 しっかし、今回の祐一はひたすら暗いなぁ……

 

 

2/水瀬秋子

 言わずと知れた「Kanon」の母性の象徴にして、「Kanon」の最強(?)キャラ。経歴・職業・年齢・ついでに旦那の存在に至るまで一切が謎の、謎多き天然癒し系奥様。おかげで、二次創作ではとっても使い勝手のいい人。

 と、ゆー訳でこの世界ではゲッターロボの開発者の立場に収まっていただきました。祐一の年齢設定に合わせて、少し年を食ってしまい白髪なんかも混じってしまいしたが………でも外見はそんなに変って無いでしょうね、多分。

 この世界では、なんか過去に祐一を見捨てていたりと、少し腹黒いです。

 

 

3/北川潤

 なんとびっくり、ゲッターのパイロット!? と、思ったら墜落して退場。ご冥福をお祈りします……って、死んで無いか。

 この世界では航空自衛“軍”出身の新人パイロット。もちろん、祐一とは面識がありません。後述する美坂香里とは、飛行士養成課程での同期。とりあえず、危機に陥った時に「潤!」と名前で呼ばれたあたり、それなりに脈はあるかと。

 

 

4/美坂香里

 ゲッターパイロット。ゲットマシン・ジャガー号担当。北川とは航空自衛軍の飛行士養成課程での同期という設定。

この二人の関係は、まぁ本編と似たようなものでしょう。もっとも、北川の軽口に多少反応している当たり、ちょっとは意識しているかも。

 

 

5/川澄舞

 ゲッターパイロット。ゲットマシン・ベアー号担当。パイロットの選出理由はもちろん、彼女の口癖(?)である「はちみつくまさん」から。

はい、クマさんです。ベアーです。でも、この三人組って、絡みづらいなぁ…。

 

 

6/久瀬

 祐一を護衛する、政府の秘密エージェント。なんか黒スーツにサングラスという、こてこてのファッションが凄い似合いそうな気がして、こんな配役になりました。

 

 

 残りの未登場キャラは、ゲッター華音その2で登場予定!

 でもやっぱり色々原作無視だ(←ダメ








戻ります