第二十一話 それぞれの時間、それぞれの『空白』








「あー、そうなんだ」
『うん。……ごめんね』

携帯から聞こえてくる薫の声に、陸は少し肩を落とした。

それは夏休みのとある一日の昼下がり。
夏休みも序盤を消化した今、宿題もある程度、過ぎた時間分位は消化しておこう……陸はその日そんな気分になっていた。
そしてその流れから、先日の夏祭りに薫と交わした宿題の会話が頭を過ぎった。

(なら、薫さんと一緒に宿題をするのはどうだろ。
 つーか、したい)

そう思いつくまま、図書室なり図書館なりで勉強しようかという誘いの電話を薫に掛けてみた……のだが。
唐突だったので駄目元覚悟ではあったが、断られると断られるでやっぱり少し痛かったりする。

『今日はちょっと用事あって……。ホントゴメンッ』

携帯の向こう側で手を合わせてゴメンしている薫の姿が陸の頭に過ぎり、そんな自分のイメージに苦笑する。
そのイメージのお陰か、痛みを和らげた陸は、少し自分勝手だったかもしれない自分を反省しつつ、言った。

「いや、俺が突然すぎたんだし。
 気にしないでいいから」
『うー……そう言ってもらえると助かるかな。
 えと、明日以降時間出来たら連絡するね。
 それでいいかな』
「うん、サンクスっす」
『あはは、こっちこそサンクスっす。……………』
「薫さん?」

突然生まれた沈黙。
それに陸が首を傾げていると、少し慌てた風の薫の声が響いた。

『あ、えと、陸君。その……』
「ん? なに?」
『ごめん、なんでもない。
 あ、ううん、なんでもないことないんだけど……その……いつか、話すから』
「……うん。
 何の話かは分からないけど……薫さんが話したいって思った時でいいから」
『ありがと。あ、電車来た』

薫の言葉に思わず耳を澄ます。
受話器の向こうから聞こえるのは、
微かなざわめきと、電車がホームに入ってきた事を知らせているらしいベル。

『じゃあ、またね』
「あ、うん、また。
 何処に行くかは分からないけど気をつけてね」
『うん、ありがと』

プツ、ツー、ツー……と電話が切れるのを確認して、陸は耳に当てていた携帯を下ろした。

「うーん、薫さん何処に行くんだろ」

正直、気にならない筈は無い。
なのだが、いつか話す……そう薫自身が言っているのなら気にしてもしょうがない。

そう考えた陸は別の事に思考を移した。
……まぁ、それにしても薫の事なのだが。

「それにしても……残念だなぁ」

はふぅ、と気持ちを込めた溜息に限りなく近い息を吐く。
吐いた息は付けっぱなしの扇風機の風に押し流され、散っていった。
電話を掛ける前の僅かな緊張と共に。

「しかし、そうなるとどうするかなー」

気分的には勉強モードのまま。
明日以降薫からのお誘いがあった時はあった時でやる気は即座に涌くだろうが、この気分を消すのは勿体無い。

「……となると」

呟きながら、陸は携帯の電話帳を開いた。
思いついた心当たりに連絡する為に。










時間と所変わって、市立図書館。
冷房が効きまくった館内には制服姿の学生をメインに、そこそこの人間が入っていた。

「……で、俺が呼ばれたわけか」

そんな館内の隅の席。
参考書やノートを広げる制服姿の陸……私服を選ぶ事と時間を億劫がった末の選択……の前に座り、陸と同様にノート類を広げる制服の少年が呟いた。

「まーな。
 最近会ってなかったし、丁度良い機会だって思ったから」
「違いない」

彼の名前は天神輝。
陸の一年の時のクラスメートで友人だ。

なのだが、二年のクラス替えで別クラスとなり、
陸は演劇その他(というかむしろ薫絡み)で、
輝は所属する生徒会の仕事で忙しかった事もあり、多少疎遠になっていた。
そんな背景もあって、今回連絡をとる事にしたのである。
ちなみに、現クラスメートにして友人の幾田道雄も呼ぼうとしたのだが、何故か連絡が取れなかったので断念した。

「だからって思い出したかのように連絡取るのはどうだろうなぁ」
「いや、正直すまんかった」

互いに緩く笑いながらの言葉。
最低限の気しか遣わない、楽な関係が其処には有った。

「まぁ、それはいいけどな。
 彼女が明日以降来てくれるかも、っていうなら別に今日はやらなくて良かったんじゃないか?」
「なんか珍しく勉強向きのテンションだったから勿体無くてな。
 あと、薫さんとの宿題消化の前に少しは進めておくなりして役に立ちたいし。
 というわけで難しめなココを教えてくれ学年二位」
「なるほどな」

実はこの天神輝、何気に学年二位の成績を誇っていたりするのだ。
今回陸が彼を呼んだのはその辺りの理由もあったりする。

「でもなぁ、そこはあえて一緒にやっていくもんじゃないか?
 難しい所を教え合ったりするのも悪いもんじゃないだろ」
「むむ。それもそうなんだけどな」
「見栄か?」
「それもあるとは思うけどな……少し違う気もする。
 大袈裟に言うと力になりたいって所かも。
 あーでも、天神が言うように一緒に考えるのも捨て難いな……」
「まぁ、煮詰まる所なんて他にいくらでもあるだろうから、
 深く考えなくても一緒に考える事になると思うけどな」
「あー……それもそうか」

輝の突っ込みに顔を顰める陸。
そんな陸を見て、輝は苦笑した。

「しかし、上手くいってるみたいで何よりだ」
「何が?」
「いや、分かるだろ。霧里薫さんとの事だよ」
「……ぬ。
 というか、何で別クラスのお前が薫さんのフルネーム知ってるんだ?
 確か名前までは教えてなかったと思うけど」

輝に薫の事を話したのは薫との付き合い当初。
当時の微妙な気恥ずかしさから、名前まで言えなかった事を陸は覚えていた。
そんな陸の疑問に対し、輝は肩を竦めて見せた。

「お前や彼女自身は意識してないかもしれんが、彼女は一年の頃から有名人だぞ?
 なんせこの学校での三大トラブルメイカーの一角だからな」
「そうなのか?」
「そうなの。
 まぁ、それでなくてもあの容姿だしな。
 ……そんなわけだから名前くらい自然に耳に入ってくるさ」
「ふーん、一年の頃か……」
「そりゃ、お前は知らんだろ。当時のお前は……」

そんな輝の言葉の途中だった。
唐突な第三者の声が二人の上に降りかかったのは。

「……すみません。
 空いてる席があまりないんで近くに失礼していいですか?」
「え? あ、はいどう、ぞ……」

声のした方に振り向きかけた陸は、動きを止めた。

其処に立つのは、陸達の学校の制服を着た女子生徒。
そこそこの利用者の中、同じ学校の生徒という事で声を掛けやすかったから誰とも知らず声を掛けたのだろうが……。

『あ』

陸と女子生徒は互いの顔をしっかり認識すると、同時に呆け気味な声を上げた。
ほんの僅かな沈黙の後、陸は彼女の名前を呟いた。

「乃暮、さん」
「……平良君。久しぶり」
「あ、うん。久しぶり」
「……噂をよく聞く。霧里さん、だったね」
「う。いや、まぁ、その」
「幸せそうで何より。
 やっぱり、あの時はあれでよかったんだって思えるから」

透明感のある声でそう言うと、彼女は静かに微笑んでみせた。
陸はその笑顔を見て幽かに表情を引き締めて、言った。

「……そう、かもね。
 なんて言って良いか……その、ありがとう」
「礼を言われるような事は何もしてないけど? むしろ……」
「でも、ここはありがとう、だと思う」
「そう。……じゃ、私はコレで」
「え?」
「席はいいのか?」

輝の問いに、彼女……乃暮そらは首を横に振った。

「私がいると落ち着かないみたいだから。
 他の適した席を探すわ。
 じゃあ、またいつかどこかで」

そうして。
彼女は現れた時と同様にあっという間に去っていった。

「……まさか彼女と会うとはな。
 驚いたろ?」
「いや、まぁ不思議でもなんでもないんだけどな。
 驚いたのは事実だけど」
 
彼女の後姿を見送った後、男二人はなんとも言えない表情で言葉を交わした。

「そう言えば、霧里さんには彼女の事を話したのか?」
「……なんで話す必要があるんだよ。
 乃暮さんと俺は付き合ってたわけじゃないぞ?」
「そりゃそうだが……話すタイミングを間違えると誤解になるかもしれんし。
 下手な事にならない内に話しといた方がいいと思うぞ」
「う、正論な気がする」
「……あら、面白そうな話ね平良君」
「ぶっ……つ、月穂さん?!」

これまた背後から突然に掛けられた声に振り向くと、
彼の知人にしてクラスメートにして友人の月穂由里奈が何冊かの分厚い本を抱えつつ、立っていた。

「あら、そちらにいるのは生徒会の……」
「あー……天神輝です。
 初めまして、月穂由里奈さん。お噂はかねがね窺ってます」
「そう。光栄ね。
 ……一緒にいるって事は平良君の友達なのかしら?」
「一年の頃のクラスメートだったんですよ」
「そうなの」
「というか、月穂さん何故ココに……?」

社交辞令のような会話の後、陸の言葉に由里奈は薄く笑った。

「自分で言ってたじゃない。不思議じゃないって。
 学生が夏休み宿題対策とか涼しさを求めて図書館に来るなんて特別な事じゃないでしょ?」
「そ、そうだね……」
「それはそれとして……さっきも言ったけど中々面白そうな状況だったわね」
「もしかして……見てた?」

多少顔を引き攣らせる陸に対し、由里奈は対照的に悪戯っぽい笑み……彼女らしからぬようで似合っている……を浮かべて見せた。

「まぁ、少しだけどね。
 それで、薫には言わない方が良いのかしらね?」
「……orz」

言葉も無くどんよりとした雰囲気で肩を落とし、息を吐く陸。
その姿を見て、由里奈は小さく肩を竦めた。

「どうやら言わない方が良いみたいね。
 というか、自分で言うのかしら?」
「……うん。近い内に話すよ」

それでも、どうにか自力で立ち直った陸は渋い顔ながらも肯定の意を返した。

「そう。じゃあ、黙っといてあげる。
 でも貸し一つだから。いつか何かで返してね」
「う、了解」
「……思わぬ所で思わぬ機会を得たわね」
「何か言った?」
「いえ、何も。
 じゃあ、私もコレで。
 あ、例の件は薫とまだ相談中だから。
 詳細が決まったら薫から伝えると思うからもう少しだけ待っててくれるかしら?」
「うん」

陸が頷くのを確認した由里奈は、眼鏡をクィッと押し上げた後、陸達に背を向け歩き出した。

「月穂由里奈さんか……噂に違わぬ美人さんだな」
「うん。相変わらず綺麗だ」
「……霧里さん居るのにそんな事言っていいのか?」
「綺麗なのは綺麗だから仕方ないじゃないか。
 それとも綺麗じゃないとか嘘を言えと?」
「いや、そういうわけじゃないけど。
 所でつかぬ事を聞くが、お前的に月穂さんが綺麗なら霧里さんはどう形容するんだ?」
「薫さんも綺麗だけど、綺麗というより可愛いかな。コレ以上ない位可愛い女の子」

殆ど迷う事無く陸は即答した。
しかも少し顔を赤くしながらも割と真顔で。
そんな陸に、輝は呆れ半分な表情で言った。

「あー……なんというか……本気で彼女に惚れてるんだな、陸……」
「他の友達にも同じ事を言われたよ。
 それはそれとして、天神。 
 えらく月穂さん気に掛けてる感じがするが、気のせいか?」

ですます口調で話してたし、と陸。
ソレに対し、輝は微苦笑を浮かべた。

「そりゃあ、ね。
 俺も一応健康的な男子生徒だし、あれだけ綺麗だと気に掛かるさ。
 それと、前に見かけた時と違って柔らかくなって、ますます綺麗になった感じがしたからな」
「そう……いえば、そうかもな」

思い返すと、同じクラスで言葉を交わすようになってから彼女の印象は少しだが変化している気がする。
以前はもう少し……取っ付き難い感じだったような気がするのだが。

「やっぱり、薫さんの影響かな。
 っと、そうだ。こうしてられない」

薫の名前を口にする事で、陸は気を取り直した。
明日以降薫と勉強する時の為にも、今は気を入れて勉強しなければ。

「うーん……月穂さん、気になるなぁ」
「……やれやれ」

その為には、とりあえず由里奈の去った方角を見てブツブツ呟く輝の処置を考えなければなるまい。
どうしたものかと思索しつつ、陸は深い息を吐いた。
今日は何かと重い息を吐く一日だな、と思いながら。




 


 


「うお、暑ぃ……」
「うう、暑いねぇ……」

ゲームセンターから出てきた道雄と明悟は、
冷房が効いた館内と夏らしい殺人的な日差しの圧倒的な差に思わず呻いた。

「しっかし、遊んだな〜」
「ゲーセンでこれだけ遊びまくったのは、夏休み前に皆で来た時以来だね」

この日、陸が勉強テンションだったのに対し、この二人は遊びテンションだった。
その為に二人して朝から街をふら付いていたのである。

ちなみに陸が連絡を取れなかったのは、道雄がゲームに集中し過ぎていた為で。
道雄が陸を呼ばなかったのは、明悟と陸の関係上、
薫や由里奈というクッション役がいない以上微妙な空気になる事を見越しての判断である。

「おいおい、ほんの一二週間前だろうが。
 そんな大袈裟に言う事じゃないだろ」
「気分だよ気分。さて、これからどうしようか?」
「とりあえず飯でも食べてから……」
「……? どうかした?」

急に言葉と動きが停止した道雄。
その視線は、買い物袋をぶら下げた、制服姿……二人の高校とは違う……の女の子を見据えていた。

「あ、あれって……」
「芽衣ちゃんっ」

道雄は割りと大きめな声で彼女を……芽衣を呼び止めた。
少しばかり周囲の視線が集まる中、その声とその源に気付いた芽衣は頭が痛そうな表情を浮かべた後、道雄の方に歩み寄った。

「……呼ぶのは構いませんけど、もう少し方法なりを考えてください。
 目立つのは余り好きじゃないんです、私」
「あ、悪い悪い。たまたま会ったのが嬉しくてつい」
「あのー……君達知り合いだったの?」

道雄と芽衣のやり取りに、一人取り残されていた明悟は声を上げた。
その言葉で、二人は明悟に視線を送った後、互いを見詰め合う。

「……明悟と知り合いなのか?」
「……久能さんとお友達だったんですか?
 って、事は、まさか……?」

そんな二人の様子を見て、明悟は何かピンとくるものがあったらしい。
「あーいいかな」などと言いながら、二人の注目を集めてから言った。

「知ってると思うけど、こっちは幾田道雄。
 平良陸君のクラスメートで友人」
「!」
「同じく知ってると思うけど、こっちは平良芽衣ちゃん。
 滅茶苦茶信じ難いけど、平良陸君の妹さん」
「な……なんとおおぉぉぉぉっっっ!?」

明悟の言葉で知らされた事実に、道雄は先程の芽衣の言葉も忘れ、驚きの咆哮を上げたのだった……。










そこは、都市部から少し離れた墓地。
緑に覆われていると言っても過言ではない墓地の片隅に、黒いワンピースを着た少女が……霧里薫がいた。

彼女の視界には一つの墓石が映っていた。
そして添えられたばかりらしい……少なくとも花の鮮度からして今日なのは確実だろう……花束も。

彼女が持ってきたものではない。
彼女が持ってきた花束は、まだ彼女自身の手に握られているからだ。

「……親父か。
 確か今日は仕事だったわよね」

である以上、こんな所に来る余裕なんか無かった筈なのだが……。

「ったく。
 そういうマメな所は認めないといけないかな。
 癪だけど、帰ったら礼を言っとかないとね」

ブツブツ言いながら薫は自身が持ってきた花を墓前に添えた。
そうした後、墓前にしゃがみ込んだ薫は手を合わせつつ、口を開いた。

「母さん。
 お盆には少し早いけど来たよ。
 お盆は遠出というか遊びに行くから、勘弁してね。
 まぁ命日は今日だから私的には問題ないと思うし、去年も説明したから分かってると思うけどね」

草の匂いを多く染み込ませた風が、花を、木々を、薫の髪を揺らす。

そんな風に包まれながら、薫は静かに語り続けた。
この場所に眠る……自分を生んだ母親へと。

色々な事を。
日々の事を。
友達の事を。
そして……。

「えと。
 今日はね、重大報告があるんだ。
 信じられる? 私に彼氏が出来たんだよ?」

少し顔を赤らめながら、薫は笑った。
何処か少しだけ誇らしげな表情で。

「名前は平良陸君。
 私なんかには勿体無い良いヒトなんだ。
 ちょっと不器用な所もあるけど、凄く真っ直ぐな男の子だよ。
 結構、っていうか、かなりかっこよかったりするし。
 ……うーん、惚気てるかな、これ」

照れ隠しに頬をポリポリ掻く。
それで少し気を落ち着けて、薫は言葉を続けた。

「今日事情を説明してついて来てもらって、母さんに紹介してもよかったんだけど……
 なんか今はまだ駄目な気がしたの。
 陸君じゃなくて、私の準備が出来てない気がしたから」

いくら語りかけても、墓は何も答えない。
その事は薫自身よく分かっている。
それでも語らずにはいられなかった。

「私の父親は……あの人だって母さん言ったよね。
 前は納得できなかったけど……最近、分かる気がしてきた。
 なんであの人が父親で、なんで母さんはあの人の子供を……私を生みたいと思ったのか。
 ホンの少しだけど、人を……オトコノコを好きになれたから、分かるような気がしてきた」

薫は墓の向こうに、記憶に残る母の姿を映していた。
記憶の中の母は、静かに微笑んで、薫の話を聞いていた。
そう信じて、薫は語り続けていく。

「分かるようになったらなったで色々疑問も出てきたんだけど……まぁ、その辺りは追々分かっていく事なんだろうね。
 だから、そういう事を私自身ちゃんと理解出来て、納得出来るようになったら……それが私の準備が出来た時だと思う。
 ……その時、まだ陸君が私の近くにいてくれたなら……紹介するから。
 多分そうじゃないといけないと思うから。
 ま、そんなに遅くならないと思うから楽しみに待ってて」

『その時』がいつなのか。
それは薫自身分からない。
でも……そんなに遠くはない……何故かそんな気がしていた。

「ま、次の墓参りはいつもどおり一年後の今日だけどね。
 その時辺りに紹介できたらいいな。
 ……じゃあ、また一年後に」

そう呟いて立ち上がった薫は、赤く染まりだした墓地を後にした。
その口に、母から教わった歌を口ずさみ、その歌を風に乗せながら。



薫は知らない。
次にここに来るのは一年後ではない事、
その時の薫自身に何が起こっているか……今の薫には知る由もなかった。







……続く。


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