○魔法多少少女ヴァレット 箸休め1〜ネット上での彼らの日常〜
















 これは、魔法多少少女ヴァレットこと草薙紫雲やその友人達の、ネット上でのちょっとしたオハナシである。
 














・始まりと禁止事項と



 征【テステス。皆、それぞれの端末から見えてるか? 読めてるか?】

 真唯子【問題ないわ】

 灰路【こっちOK】

 明【こっちも大丈夫】

 清子【こちら清子。ちゃんと見えてるし、読めてるわ】

 櫻奈【はーい、ちゃんと出来てるよー】

 紫雲【   】

 灰路【あ、早速手間取ってやがる】

 真唯子【何やってんだか……】

 征【いや、お前も結構苦戦してただろ。何度も聞きに来たし】

 真唯子【……】

 櫻奈【無言ってわざわざ入力するものかなぁ】

 明【そういう空気だったからかな、うん】

 紫雲【ごめん、なんとかなったよ。灰路君のお陰で。
     わざわざ電話で教えてくれてありがと】

 灰路【そういうことはわざわざ言わんでいい】

 征【なんにしても、とりあえずはこれで今は全員か】
 
 紫雲【姉さん、今は仕事中だからね。
    久遠君改めて招待ありがとう】

 櫻奈【ありがとうございます〜】

 明【ん。ほんとにな】

 灰路【右に同じく】

 真唯子【リアルで言ったけど、改めて右に同じく】

 清子【この事に関しては素直に御礼を言っておくわ。
    ありがと、征】

 征【……それは素直なんですかね】

 明【しかし、相変わらず征の知り合いはいろんな人がいるなぁ】

 灰路【個人開発の実質俺ら専用連絡網アプリってのは確かにすごいな。
    話し難い内容がてんこもりの俺らにはありがたい】

 紫雲【うぐぅ】

 櫻奈【あう】

 真唯子【……】

 明【いやいやいや、三人とも気にしないでいいから。
   三人の事情だとしょうがないんだから】

 清子【そうそう。艮野はもう少しこう……】

 紫雲【あ、いや、灰路君はむしろあえて言ってくれたんだよ。
    この使い初めに指摘しておけば、今後話題に出ても馴染みやすいというか】

 征【で、それに気付いた草薙は真っ先に乗ったってわけか。
   さすが幼馴染】

 櫻奈【わたしはなんとなくなんですが】

 征【それはそれでナイス連携。真唯子もな】

 真唯子【別に】

 明【うんうん、いいね】

 清子【……。ごめんね、艮野】

 灰路【気にすんな】

 紫雲【あ、えと、その】

 灰路【お前もいちいち反応せんでいい】

 清子【そうそう】

 紫雲【……ありがとう、二人とも】

 征【まとまったところで、話を変えるが。
   作ってもらったヤツには話を通してるし、基本的に情報漏れはないと思う。
   だが、コレも俺らそれぞれの回線から繋がってる以上、絶対に情報漏洩しないってわけじゃないからな】

 灰路【まぁ同じ人間が作ったものなら万が一ってのはあるよな】

 紫雲【今はそういう異能に特化した人もいるかもしれないし】

 明【そうだな。取り決めた禁止ワードは、緊急時以外なるべく使わないようにしよう、みんな】

 清子【ええ、十分に気をつけるわ】

 紫雲【みんな、ご迷惑を掛け】

 灰路【あ、そういう類の言葉も今後基本禁止ワードにしようぜ。特に草薙】
 
 征【いいぜ】

 明【いいよ】

 清子【それがいいわね】

 櫻奈【あー。分かります。りょーかいです】

 真唯子【スムーズな会話のためには当然の措置ね】

 紫雲【!!??】











・冷房と誤解




 灰路【あちーな、今日】

 紫雲【暑いね。
    こっちはエアコンが故障中だから尚更暑いよ】

 灰路【こないだ掃除して使えるようになったって言ってたのにもう壊れたのかよ】

 紫雲【うん……】

 明【その短い受け答えに深い悲しみを感じるなぁ】

 征【草薙はあんまり薄着とか出来ないだろ?
   エアコン壊れてる今どうしてんだ?】

 紫雲【窓とカーテンを閉め切って服脱いでる】

 灰路【?!】

 征【?!】

 明【?!】

 清子【ちょ!? 紫雲何やってるの?!】

 紫雲【え? 普段より薄着してるだけなんだけど……って、ハッ?!
    ちょ、訂正! 別に全裸じゃないからね?!】
 
 真唯子【アホね。誰も彼も】










・映画と女子力



 紫雲【あ、そうだ。久遠君、昨日はありがとうね】

 征【いや、俺も見に行く予定だったからな。
   礼を言われるような事じゃない】

 清子【え? なになに? どうかした?】

 紫雲【特撮映画を見に行くのに付き合ってくれたんだよ】

 清子【……あのさ、紫雲。こういう時に誘うべきじゃないの?】

 紫雲【え? 誰を? ……あ】

 清子【はぁ……女子力の訓練が必要なようね】

 紫雲【いや、だって、灰路君こういうのの付き合いがその、悪くはないけど、リアクションが微妙というか。
    付き合ってもらうんだから、出来れば楽しんで欲しいというか……】

 征【そうだぞー清子ー。
   映画とかは話が分かる奴と一緒に行くに限るからな。
   なんでもかんでも色恋に絡めて無理強いするのは良くない。
   というか、草薙の気遣いもある意味で女子力じゃないか?】

 清子【え? 私が悪いの? おかしくない?】

 真唯子【いえ、高崎さんは悪くないわ。
     言っている事は乙女的な意味で間違ってない。
     というか、悪いのは勝手に映画を見に行ったそこの二名よ】

 征【さらっと入ってきてさらっと無茶苦茶ないちゃもんをつけるなよ】

 真唯子【だって。……】

 征【分かった分かった。今度一緒に見に行ってやるから】

 真唯子【……別にそれを強要したつもりはないけど。
     まぁどうしてもっていうのなら】

 紫雲【真唯子ちゃんも見たかったんなら一緒に行けばよかったね、久遠君】

 征【そうだな。そうすれば入場特典の全種コンプリートが可能だったかもしれん】

 真唯子【……幾つか言いたい事はあるけど、あえてノーコメントにしておくわ】

 清子【……ど、何処から突っ込むべきなのか、あえて突っ込まない方がいいのか】

 命【なんにせよ、女子力で言えば愚妹は完敗だな】

 紫雲【!?】










・現状は仮姉妹



 命【おや、今は君だけか】

 真唯子【そうね】

 命【その後、どうかな? 体調など異常はないか?】

 真唯子【別にないわ。大丈夫よ。
     何度も看てもらってるんだから貴女の方が知ってるでしょう?】

 命【そうだが、やはり君の生まれ育ちを聞くとな。気になってしまうのさ】

 真唯子【……そう】

 命【……この際だから聞くが、私を避けてないか?】

 真唯子【……別にそのつもりはないけど。
     そう感じさせてたのなら、その、悪かったわ】

 命【いや、こちらこそすまなかったな。
   ただ、前にも現実で言ったが、私は君をもう一人の妹だと思っている。
   何かあったら遠慮なく言ってくれ】

 真唯子【ありがとう、ございます】

 命【敬語は要らんよ】

 真唯子【それを言うのなら、貴女も”君”じゃなくていいから。
     貴女のいうところの愚妹と同じ扱いでいいわ】

 命【了解した】

 真唯子【貴女位の距離感がありがたいわ。
     アレは、どうも距離感が極端というか、近すぎたり遠すぎたりで】

 命【それは許してやってくれ。
   今はまだ不慣れだが、いずれ適切な距離感を理解するだろう。
   妹が出来て嬉しがっているが戸惑ってもいるんでな】

 真唯子【……そう】

 命【あとはしゃいでもいる。珍しく】

 真唯子【それは知ってる】











・海水浴準備と女子トーク



 清子【ねぇ、紫雲。例の話どうするの?】

 紫雲【私としては嬉しいんだけど……いいのかな。
    清子さんに悪い気がして】

 櫻奈【なんのお話ですか?】

 清子【ああ、ほら、今度海水浴に行こう事になったじゃない。
    それ用に遠出して新しい水着を買いに行こうとかそういう話】

 櫻奈【遠出?】

 真唯子【ほら、そこの人は男のふりしてるから、近場で買い物してると知り合いに遭遇するかもしれないでしょ】

 紫雲【うん、だから隣の市に買いに行こうかなって。
    ……水着、持ってないわけじゃないんだけど、その】

 清子【適切な、皆で遊ぶ用の水着がないんだって】

 紫雲【そんな私個人の買い物に清子さんが付き合ってくれるっていうのは申し訳なくて。
    私一人だったら、ひとっ飛び出来るから】

 清子【私だって水着新調したいのよ。
    それに、私をアレに乗せてくれてもいいでしょ?
    艮野は乗った事があるって聞いたわよ。
    私だってそういうの体験してみたいのよ】

 真唯子【意外ね。貴方はそういうのを忌避するタイプだとばかり】

 清子【常識外のものにはちょっと戸惑うだけよ。
    憧れがないわけじゃないわ。
    というわけで、むしろお願い、紫雲】

 紫雲【そういう事なら喜んで】

 清子【ふふ、ありがと。じゃあ明後日に行きましょうか】

 紫雲【うん】

 櫻奈【いいなぁ。わたしも行きたいなぁ
    でも、わたし今年水着新しくしたばっかりだからなぁ。
    お母さんたちはもう駄目っていいそう】

 真唯子【別に買わなくても買い物に付き合ったっていいじゃない。
     しかし……うまいものね、高崎さん】

 櫻奈【え? なにが?】

 真唯子【分からないなら分からないでいいのよ】

 櫻奈【ふーん。真唯子ちゃんがそう言うんなら、そうなんだろうけど。
    でも、あれ?】

 紫雲【どうかしたの?】

 櫻奈【紫雲さん、毎年親戚の人とプールに行ったりしてるって前に言ってたような】

 紫雲【そうだけど?】

 櫻奈【その時の、去年までの水着は? 使えないの?】

 紫雲【……。
    えっと、その、去年までの水着が、きつくなっちゃって】

 櫻奈【そうなんだぁ。身体が大きくなったんだねー】

 紫雲【     そそっそういうことで】

 櫻奈【?? 清子さんもそうなんですか?】

 清子【わたしはみずぎをあたらしくしたいとおもっただけようん。
    とくにあたらしくするひつようはさいずてきにはまったくないんだけど】

 櫻奈【返事が早口みたいに早い?! それになんで平仮名……】

 真唯子【……何も聞かないであげなさい、櫻奈】

 櫻奈【そ、そう。ところで真唯子ちゃんは水着どうするの?】

 真唯子【そこの人のお下がりで済ませるわ】

 清子【いやいやいやいやいや。
    明後日貴女も来なさい。乙女的に見過ごせないわ、それは】

 紫雲【そうだね、真唯子ちゃんも一緒に行こうよ。
    私のお下がりなんて可愛くないんだから】

 櫻奈【うんうん、わたしも行くから真唯子ちゃんも行こうよ〜
    どんな水着があって、みんなどんな感じで似合うのか見てみたい〜】

 真唯子【……まったく。誰も彼もお節介ね】











・海水浴準備と男子トーク



 明【今度海水浴だが……皆、水着は?】

 灰路【適当に持ってるのでいいだろ】

 明【いやいや、新調したりとかしないのか?
   買いに行くんなら一緒に見に行かないかって、そういう話】

 灰路【……お前に高崎って彼女がいなかったら色々怪しく感じる発言だな】

 征【それに、二次元にせよ三次元にせよ、野郎が連れ立って水着を買いに行くのは絵面的にどうだ】

 明【いやいや、そういうのは普通にあるだろ。
   普通にダチと買いに行く人たちに謝れ、お前ら。
   ……まぁ女子と違って華がないのは事実だけど】

 灰路【直谷の方が男全般に対して失礼な事を言っている件について】

 征【まったくだ】

 明【えー。なんだこの理不尽感……。
   まぁいいけど……女子組はどうしてるんだろ】

 灰路【どうしてるって?】

 明【いや、水着の新調とか、そういうの】

 征【そりゃあするだろうよ。
   清子はそういうの毎年キッチリやってるしな。
   当然草薙や真唯子もそれに付き合わされるだろうし。
   ……清子はサイズ的には更新の必要性が、全く、微塵も、これぽっちも、ないだろうが】

 明【清子は乙女だからなぁ。
   まぁ、スタイルは一向にあれだろうけど】

 灰路【……そうか。うん、まぁ、スタイル=女の魅力じゃないからな。
    俺はできればあるところにはあった方がいいが】

 明【折角のフォローが機能しなくなるような発言はどうだろう】

 征【それはそれ、これはこれってやつだな。
   しかし、そういう意味なら草薙は艮野的には問題ないな】

 灰路【ああ、まぁ、そうだな】

 明【そうなの?】

 征【うむ。少なくとも、そういう意味では清子とは比べ物にならん。マジで】

 明【マジですか……。
   というか、なんで君らそれ知ってるの?】

 征【前の怪獣事件の時とか、コスプレの時とかでな】

 明【そんな事言ってたっけか。
   ふむ、女性陣の水着がより楽しみになってきた】

 灰路【コイツさらっと彼女だけじゃなく全員の水着を楽しみにしてるみたいなんだが】

 征【昔からこういう奴なんだよ】

 明【いやいやいや男ならみんなそうだろ?!
   俺がおかしいみたいな風潮おかしいよね?!】
 
 灰路【宮古守とか法杖もか?】

 明【その二人は清子や草薙とは違う意味でだよ。
   純粋かつ普通に子供的な、ほら、子猫とか子犬とかを可愛いと思う気持ちで……】

 征【コイツ守備範囲広いからな】

 明【だからそういう誤解を招く発言はやめろ。
   あと、征には二次元守備範囲的な意味で言われたくない】

 征【失礼だな。俺は好きになった子をありのままで受け入れているだけだ】

 灰路【……】

 明【それは自分はコイツラとは違う常識人なんだ的な無言なのか?】

 征【お前、それ本当にそう思うのか? 少し前まで女に声掛け捲ってたりとか……】

 灰路【まぁそれはそれとして】

 征【露骨に話を逸らそうとしてるのは丸分かりだが、なんだ?】

 灰路【いや、俺的にはアレだ。命さんが来ないのが残念だったりするんだが】

 明【ああ、忙しくて無理なんだってね】

 征【艮野も結構守備範囲が広いんじゃとか言いたくなるが……
   あの人は若くて美人さんだからな。正直俺らより少し上にしか見えん。
   実年齢は確実にもっと上だが】

 灰路【おいばかやめろ】

 征【まぁ、それはそれとして、艮野が残念だと言うのも分かる】

 明【二次元絶対主義の征が三次元を褒めるとは珍しい】

 征【おいおい、俺は確かに二次元の住人だが三次元のことも事実は事実として認めるぞ。
   しかし、命さんの水着か……】

 明【……】

 灰路【……】

 征【……】

 明【……想像出来ないんだけど】

 灰路【……想像出来ないな】

 征【……難しいな。どんな水着なのかスタイルはどうなのか、もろもろ分からん】

 明【艮野は見た事ないのか? 付き合い長いんだろ】

 灰路【いや、それが全く。
    ……もしかして、あの人でも恥ずかしがってたりするのかもしれん】

 征【歳を考えてとか、肌を晒すのが苦手とかで、か?
   そういう人には見えないが……だが、もしもそうだとすると】

 明【……】

 灰路【……】

 征【……】

 明【……なんだろう、リアクション含めてスゴイ見たいんだが】

 征【……ああ、分かる。俺とした事が、三次元なのにな】

 灰路【……これがギャップ萌えってやつなんだな】











・なんだかんだでいつもの彼ら



 灰路【そう言えば、久遠と特撮映画見に行ったって?】

 紫雲【あ、うん。灰路君はそっちあんまり興味なさげだから】

 灰路【ったく、無駄な気を遣うなよ。
    こちとらお前とは十年来の付き合いなんだ。
    趣味だってちゃんと分かってるっての】

 紫雲【……そうだね、ごめん。
    分かってたんだけど、その、なんというか、ちょっと色々と気後れしてたのかも】

 灰路【そうか】

 紫雲【うん】

 灰路【じゃあ、侘び代わりに今度俺の映画鑑賞に付き合え】

 紫雲【いいよ。なんの映画? 話題のアイドルさんが出てる邦画かな?】

 灰路【お前な、俺をなんだと……いや、アイドルは出てるし、邦画だけど】

 紫雲【だろうと思った】

 灰路【いやいやいや、目当てのアイドルとかじゃないぞ?
    というか、そっちが目的じゃなくてだな、内容的に面白そうだからで】

 紫雲【分かってるってばw】

 灰路【お、おぉ。お前が草生やすとか……進歩したというかある意味ガッカリというか】

 紫雲【それどういう意味っ?!】

 征【最近は、草を生やすのが不快とか古いとか、そういう意見もあるらしいからな】

 紫雲【久遠君?! というか、え? そうなの?!
    ネット見てると皆普通に使ってるものだとばかり】

 明【まぁその辺りはそれぞれの価値観によるんじゃないか?
   俺も普通に使うし】

 清子【そうねー。
    私もそういうのは流行り廃りで使う使わないを決めないでいいと思うわ】

 紫雲【そ、そう。そうだね。使い所はちゃんと考えて使う事にするよ。
    というか、あれ? 私と灰路君だけだったような】 

 征【草薙、操作間違えたんじゃないか?
   俺参加してもいい状態になってたぞ】

 明【俺も】

 清子【私も】

 櫻奈【わたしもー】

 真唯子【私も】

 命【私もだ】

 紫雲【……あなをほりたい。ほってうまりたい】

 灰路【その前に、使い方をちゃんと覚え直した方がよくないか?】

 紫雲【はい】

 櫻奈【うーん。そんなに恥ずかしい話じゃなかったと思うけど……】

 真唯子【この場合、内容は関係ないのよ。
     二人きりだと思ってた会話が実際は違ってたってのが気恥ずかしいってことだから】

 紫雲【うぅぅ、的確に指摘するのは勘弁して……】

 命【ふむ。こういうのはあまり使ってこなかったが、いいな。うむ】

 紫雲【そして、我が姉は何故か満足げだし】

 命【いや、なに、安心したのさ。それこそいろいろとな】










「……うん」

 自室で端末に触れていた命は、その先の言葉を入力しようとして、結局しなかった。
 古い人間の考えなのかもしれないが、その先はいずれ、実際に顔を合わせて言うべき機会が訪れた時にしたいと思ったからだ。
 会う事が難しい状況ならまだしも、それを伝えたい人間達は、自身のすぐ近くにいるのだから。

 端末越しだからこそ言える事があり、言えない事もある。言いたい事があり、言いたくない事もある。
 その取捨選択をした結果、今回は【言わなかった】……ただ、それだけのことだ。

「逆に、コレだからこそ言える事もあるんだろうが……私はどうにも、な」

 そう呟いて、命は笑った。

 現代のコミュケーションツールを上手く使えない無様な自身と、
 いつのまにか、しっかり作っていた友人達の中で歳相応の姿を見せる妹を、目の当たりにして。

 笑いたかったから、笑った。










 ……とりあえず終わり。






戻ります