プロローグ










 平赤羽市。
 十年前まではまるで名前を知られていなかったのに、
 今や何処かのネットの掲示板でこの名前を持ち出すと『ああ、あの変な街ね』という返しが数レス内に返ってくる位の認知度になった街。

 街の特色はなんと言えばいいのか……いや、もう、正直に言おう。

 カオス。その一言に尽きる。
 生まれてずっとこの街に住む一高校生、俺こと艮野灰路から言わせてもらえれば、どうしてこうなったんだか、と言いたくもなる。

 平赤羽市は、十年前に全てのキッカケである不思議な雪が降るまでは、特徴のないのが特徴、みたいな街だった。
 それが雪が降ってから色々な事が変わったのをいい事に、この街を活気付けようと皆が皆やりたい放題改造しまくった結果、いつしか現在の街が出来上がっていた。
 勿論、今に至るまでには様々な出来事があった……んだと思う。
 子供だった俺の視線からで分かるだけでも、住宅的な意味以外で十年前と変わらない場所はそう多くない。

 そうしてなんだかんだ、良いもの悪いものよくわからないものを山のように積み重ねた結果、現在の平赤羽市が出来たわけなのだが。
 そんな積み重ねが最もあったであろう、平赤羽市の中心。
 その一部は、今現在壊されている真っ最中であった。

「うっわぁ……どうしよ、この状況」

 夏休みの終わり一歩手前の真夏の日差しを浴びて、汗を流し、
 若干顔を引き攣らせつつ呟いたのは魔法少女オーナ。
 この街を守る存在の先駆者。

 そんな彼女の前には、四人の異能者達。
 なんか不敵な笑みを浮かべてるが……女の子相手にそれなりの歳の人間が、そういう表情してる絵面はどうよ。



 平赤羽市の危機的状況。
 こんな時、いつもなら真っ先に……場所や状況にもよるが……現れるだろう魔法多少少女・ヴァレットは、ここにはいなかった。






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