第八話 悪夢の始まり






「舞?!……それに、佐祐理さんまで!?」

降り立った戦闘領域の中。
危機的状況に有ったパーソナルトルーパーの通信ウィンドウを開いた途端、向こうに現れた顔、そして同時に開いたもう一つのウィンドウの顔を見て、祐一は驚きを隠せなかった。

それは、当然と言えるだろう。
三年前の事件で生死不明だと思っていた人間が揃って顔を見せたのである。

「なんで、ここに……」

そう言い掛けた時。
熱源を知らせるアラームがコクピットに響いた。

「くっ!!」

自分の迂闊さを内心で罵りながら、祐一はコンソールに手を伸ばす。
が、その必要はなかった。

「迂闊」

今まさに祐一のゲシュペンスト・αに襲い掛かろうとしていた幻獣は舞のアルトアイゼンの三連マシンキャノンで肉片と化した。

「祐一は……昔と変わってないな。弱い」
「……その弱い奴に助けられたのは誰だって……の!!」

最後の言葉と同時に、祐一はロシュセイバーを振るい。
舞は再び三連マシンキャノンを解き放った。

それで、とりあえず周囲の敵は掃討される。
だが、広い視野で見ればまだ戦闘は継続されている。
現にこちらに気付いて何体かの幻獣がこちらに向かって動き出していた。

「とにかく。話は後だ。今は……」
「分かっています。後でゆっくりとお話しましょう……ね」

自分は自分で戦闘をこなしながらも、会話に入り込んだ佐祐理は、あえて笑った。
状況としては辛いし、そんな場合でもないが、再会の喜びがそれらを上回っていた。

そんな佐祐理の変わらない笑顔に頷いて、祐一は操縦桿を握り直した。

「了解、佐祐理さん。
 舞、とりあえずは力を貸してやるよ」
「この状況じゃ仕方ない」
「言ってろ」

そうして、祐一と舞は、動けない舞の機体周辺に殺到する敵の掃討に当たった……







「水瀬、行くぞ!」
「うん!」

北川の要請に応え、名雪は機体を操作する。

ゲシュペンスト・βとSR−1。
並んだ二体の連続射撃が少しずつ確実に、敵を打ち倒していく。

勿論、幻獣もそうやられてばかりではない。
二体の背後、死角から複数の幻獣が迫る。

だが。

「馬鹿ね……させる訳ないでしょ」
「覚悟してください!マキシブラスター!」

香里と栞、二人の言葉と共に放たれた、グルンガスト弐式改の光の奔流が、数体の幻獣を一片に消滅させた。



遠距離攻撃型の幻獣を優先的に射撃・攻撃する機体と、その射撃担当者に迫る他の幻獣を蹴散らす機体の連携。
それを複数グループ、それぞれの射程外で同時展開し、確実に敵を屠る。
それが今回のロンドベル隊が取った作戦だった。
作戦と呼ぶにはやや稚拙だが、息の合った連携はそれに作戦と呼ぶに相応しい戦果を上げさせていた。



「うちらも行くでぇっ!」
「了解!!」

帝国華撃団は、比較的遠距離型の幻獣が少ない一角を、紅蘭機を中核とした上で掃討。
……遠距離射撃・中距離戦型の機体としては他にマリア機や織姫機があるのだが、レ二を含めた彼女達三人は現在Gアイランドシティーで待機中だったりする。

「カミーユ、二時方向は任せる。アムロ、近接戦闘は任せた」
「Zガンダム、了解しました!」
「分かった、二人とも遅れを取るなよ!」

MS隊……今回はアムロ、カミーユ、クワトロの三機編成……は、百式とZガンダムで射撃、近場の敵をアムロのG3ガンダム……ハンマーやジャベリンを装備している事もあって……が叩くという構成になっていた。
三機のみではあるが、そこは数々の戦火を抜けたエースパイロット達。
的確な射撃、回避、判断力で確実に敵を減じていった。

そして、残るスーパーロボット達は……

「これでもくらえ!ブレストファイヤー!」
「ゲッタートマホゥクッ……ブゥメラン!!」

戦場を遊撃し、味方機それぞれの援護に回り続けた。

「おお、さすがにやるねぇ」

そんな戦況を指揮車で把握していた瀬戸口は呟いた。
同乗する指揮官である善行も、たった数分間での戦況の変化に驚いていた。

「……噂に違わぬ実力ですね、ロンドベル隊は」

スキュラを落とす事で既に傾いていたとは言え、戦局はロンドベル隊の参入によって決定的なものとなり、連邦軍極東支部・所属第5121独立駆逐戦車小隊は勝利を収めた。






戦い終わって、撤収作業その他が終わるとすでに日が落ちていた。

ロンドベル隊の母艦、アーガマはここから最寄の連邦軍の拠点に停泊、補給を行っていた。

各機体はというと、アーガマへの帰還を後回しにし、とりあえず第5121独立駆逐戦車小隊の所有する……厳密に言えば、彼らもそこを借りているのだが……グラウンドに並んでいる状態だった。

アーガマに帰還すればいいのでは、という意見もあるのだろうが、そうもいかなかったのである。

今回ロンドベル隊は、敵……幻獣に押されていた状況を踏まえ、アーガマを何処かに停泊させている余裕はなく、戦場上空からの緊急降下で戦闘に乱入した。
今回は敵の数を考え、飛べない機体さえも飛行能力を持つ機体に運搬させる形で無理に戦闘に参加させてしまったのだ。

当然と言えば当然だが、降下と上昇では掛かるエネルギーも違うし、状況もまったく違う。
ゆえに、戦闘後の帰還は難しく、アーガマの補給の後、可能な地形の場所で合流という事になったのである。

本来なら、それもすべきではない。
一刻も早い帰還・合流が適切ではあるだろう。

だが、今回彼らの戦場となった場所は友軍の領地内で、更に言えば幻獣という敵の特殊性もあった。
とりあえずは急ぐ必要性はないだろうと判断された結果、現状に至っていた。

まあ、その他にも幾つか理由やら事情があったのだが……

さておき。
結果、そこは見慣れぬ人間にとっては、一種の展示会の様相を呈していた。

「うわーすっげー!!マジンガーZやゲッターロボを実物で見れるなんて……!」

士魂号二番機のパイロット、滝川陽平は目を輝かせていた。

ロボット好きが高じて士魂号パイロットに志願した彼にとって、かつて世界を救ったスーパーロボットは憧れの対象である。
目を輝かせずにおれようか、というものなのだろう。

「お、嬉しいこと言ってくれるじゃねーか」
「ああ、悪い気分はしないな」
「か、兜甲児さん……それにゲッターチーム……!!
 それに、アムロ・レイまで……す、すごすぎる……」

感動の余り足元さえおぼつかないように見える滝川を近くで眺め、厚志は苦笑交じりに首を傾げた。

「……ねえ、滝川どうしてあんなに感動してるのかな」
「そなたは時々恐ろしく物を知らないな。
 マジンガーZ、ゲッターロボと言えば、先の大戦で地球の危機を救った特機。
 MS・ガンダムもまたそれに等しい存在と聞く。
 彼らはその操縦者として、度々報道に顔を見せているであろうに。
 滝川の反応は大袈裟すぎるものがあるが、そなたはそなたで多少問題があるぞ」
「そうかな」
「まあ、この世界の有名人だからな」

そう言って会話に入ってきたのは瀬戸口だった。

「知らない事が悪いわけじゃないが、知っておいてもよさそうな事なのは確かだな」
「そうですか……」
「別に気にする事はないさ」

その会話と、微かにうなだれる厚志に気付き、アムロは笑い掛けた。

「俺達は別に有名人になる為に戦っている訳じゃない。
 戦争を終わらせる為に戦って、その結果、こうなっただけだ」
「ふむ。まったくもってその通りだな」
「芝村……失礼だよ。すみません、その……」
「気にしなくていいよ。
 同じ人間同士、そう肩肘張ることはない」

厚志は、そう言って穏やかに笑うエースパイロットと呼ばれる人間の顔を眺めた。

この一見、物静かにさえ見える人物は、自分とは比べ物にならないほど数多くの戦場を潜り抜けて、ここにいる。

そう思うと、厚志は問うてみたい衝動に駆られた。
戦闘中に笑みを浮かべるという、自分の衝動について。

(この人なら、この人たちなら、何か分かるかもしれない……)

「あの……」
「そう言えば、相沢達は何処に行ったんだ?」

そんな厚志の言葉を心ならずも遮って、ゲッターチームの一人、武蔵が言う。
それに同じくゲッターチームの一人である、ハヤトが答えた。

「アイツらなら、さっきの戦闘で知り合いと再会したとか言って、そこの辺りで話してるぜ」

ハヤトが指した方向には、自分達の機体の下で親しげに話す、祐一達の姿があった……
 





「皆さん、お久しぶりです。そして、助かりました」
「お気になさらずに。そして、お久しぶりです、先輩」

佐祐理の一礼に対し、一同を代表する形で香里が頭を下げた。
すでに再会の挨拶……というか単なる大騒ぎだが……を済ませた後なので、改めてという事になるが。

「うんうん、川澄先輩も倉田先輩も無事でよかったよ。ね、祐一」
「まったくだな」
「でも、先輩達もパイロットになってたなんて……」
「あの光景を見せられたら、そうなる。現に祐一達もそうだ」

栞の言葉に対する舞の返事は、この場の全員が納得できる解答だった。
あの日の光景は、それだけ忘れがたいものだったから。

「しかし、あの街の知り合いがこうも集まるなんてな。
 後、あの頃の面子としては……」
「北川君……」
「……!」

何気無く呟きかけた北川を、香里が遮った。
あの頃の事をそれぞれ考えてしまったのか、少し重い空気が辺りによぎる。

「悪ぃ、皆、その……」
「気にするなよ北川。俺も同じ事を考えてたんだから。後は……真琴と、天野か」

北川を庇う為か、あえて祐一はその言葉を繋げた。

特に親しかった、というのであれば、その二人が上がる。

……皆、気付いていた。

もう一人、祐一達と親しかった少女がいた事を。
そして、その名前を祐一が言わない事の意味を。

「無事だと、いいけどな」
「……そうだね。でも皆生きてたんだから、きっと生きてるよ」

重苦しい空気を底上げするように、名雪は笑顔で言った。

「そうですね。佐祐理もそう思いますよ」
「だな。ここまで揃ったんだ。神様も気を効かせてくれるだろ」
「……どんな理屈よ、それは」

北川に突っ込む香里の言葉に、皆笑った。
祐一も笑っていた。

だが、彼らは知らない。
その『神様が気を利かせた』事が、彼らにとっての悪夢を生む事を。







「なあ……一体どうなってるんだ?」

問い掛けるように、折原浩平は呟いた。
アレキサンドリア級戦艦、その格納庫で。

「……まだあんた、そんな事言ってるわけ?」

自身の機体の整備を終えたばかりの七瀬留美が、呆れ気味に答えた。

「ここで首捻ったって、起こった事が変えられる訳じゃないでしょうに」
「んな事は分かってるんだよ。
 ただ、どう考えても解せないのは確かだろうが。
 それを考えずにいられるか?!いやいられまい!!」
「浩平、荒れてるね。っとと」

反語表現まで使い出した幼馴染に苦笑しつつ、長森瑞佳はワイヤー伝いに複製虎龍王のコックピットから、少し危なげに地面に降り立った。

「おいおい、大丈夫か?」
「うん。大丈夫だよ。
 ……話を戻すけど、浩平の言う通り、確かにおかしいね」
「お。やっぱり、お前もそう思うだろ?」 

彼らが言っているのは、先日の新型戦艦接収におけるティターンズ内の顛末である。

結局、新型戦艦『ナデシコ』はバリア衛星を強引に突破し、宇宙へ離脱。
現在火星に向けて航行中らしい。

わざわざ浩平達が時間稼ぎをしたにもかかわらず、ジェリド達の部隊がサセボに現れる事はなかった。
その事についてジェリドに連絡を取ると、作戦変更について連絡した際、彼らも突然中止命令が下されたらしく、不満気な表情を端々に覗かせていた。

気になるのは……

「なんでも、サセボでナデシコとやらが発進した時な、
 当然の事ながらっつーべきなのか、トラブル……戦闘が起こったらしいが……
 ナデシコと、案の定そこに来たロンドベル隊が遭遇したのは、例の木星蜥蜴だけじゃないらしい。
 正体不明の黒い翼の機動兵器が暴れ回ったらしいんだが……その辺りに何があるのかもな」
「……そうだね」

その浩平の言葉に頷いたのは、ドアの向こうから現れた川名みさき艦長代理。
ホバーボードに乗った彼女は、その場にいるであろうかつての後輩であり、今の部下を、盲目ながら『見渡して』言った。

「私達の機動兵器に特殊なものが多いのと、何か関係が有るのかもしれないね。
 その黒い機動兵器は……上層部ではヒュッケバインって呼ばれてるらしいし」
「……そりゃ、また奇遇なこって」

ヒュッケバイン。

浩平達のようなパーソナルトルーパー関連の機体に乗る者にとっては、知らない者が存在しないとさえ過言ではない機体名。
その量産型もこの艦には複数体存在し、彼らの眼前に並んでいる。

「まあ、その辺りはおいおい分かると思うよ。
 この小競り合いが続けば、否が応でもね」
「まあ、な。
 んで艦長代理。
 それはそれとして定時連絡が終わったんだろ。
 俺らの次の行く先は?」
「とりあえずは補給の為に最寄の基地まで。
 そこで新しいメンバーが加わるらしいから、皆仲良くしてね」
「え?そうなんですか?」
「今のまんまで十分じゃないのー?下手な奴入れるとチームワーク乱れそうだし……」
「そういう訳にも行かないんだよ。
 彼ら……ううん、彼女達、だね。その彼女達もパーソナルトルーパー乗りらしいから」
「ふむ。対ロンドベル戦へ向けての戦力増強か……
 それともパーソナルトルーパー乗り本来の役目が与えられるのか……
 いずれにせよ、これは、いよいよ始まるって事なのかね」

浩平の言葉に、その場の全員が複雑な表情を浮かべた。

始まる。
その言葉が示すのは……ただ一つ。

大戦の、始まり。

戦争という名の、悪夢の始まり。







「……解せません」

黒いヒュッケバインのパイロットは、呟いた。

「何故、目覚めたばかりの彼女をあの部隊に……
 よりにもよってロンドベル隊に差し向けるのですか?」
『必要だからだよ』

彼の呼び掛けに応えたのは、中性的な声。
男とも女とも取れる、何者かの声。

「ですが、あの部隊には……」
『彼のものがいる。そう、だからだ。
 これは確認事項でもある。
 彼女や、我々、そして君にとっての』
「…………」
『だから、手出しは無用だ。いいね?』

その言葉を最後に、声の気配は消えた。

男は、何も言えなかった。
ただ闇を見詰めるしかできなかった。

男は、見知っていた。
予感と確信が入り混じった、感覚。

その始まりを、男は知っていた。

悪夢というモノの始まりを。

だからこそ、動けないでいた。
選択肢に縛られて。

そして、その間にも時間は確実に流れていた。







唐突に『それ』は其処に現れた。
黒いヒュッケバイン……祐一達がそう呼ぶ存在の技術をより安定させたシステムで。

「……目標は、何処かな?」

パイロットが呟く。
情報によれば、この近くらしい。

「うぐぅ……細かい索敵は面倒臭いよね」

ならどうするか。

派手に行けばいい。
そうすれば向こうから現れるだろう。
そういう部隊に所属しているらしいのだから。

「せっかくの、再会だしね」

パイロット……少女は微笑んだ。
そうして、その微笑みに相応しくない行為の為に、操縦桿を握り締めた。







轟音が、響いた。
そして、爆発が起こる。

「……なに……?!」

祐一は、呆然と呟いた。
周囲にいた名雪たちも呆然としている。
いきなり起こったその事態に、頭がついていかなかった。

ココは曲がりなりにも一部隊が配置されている場所である。
だから砲撃や攻撃自体はありえなくはない。

ただ、それは異常だった。

『それ』は凄まじい破壊力を誇るかのように砲撃を続けている。

それが行われているのは、空。
上空から、白い光が一条、二条、と降っていく。

その度に地面が震え、規模の大きな爆発が巻き起こる。
それだけの攻撃を可能にする兵器の接近を探知できなかったのである。

それを証明するように、この場所で待機している部隊……ロンドベルメンバーと会話を交わしていた第5121独立駆逐戦車小隊の面々も驚きを隠せないでいた。

それは、味方の暴走か。
あるいは、いきなりその場所に現れたのか……

「……っ!!」

『それ』に思い当たった祐一は、即座に動いた。

跪かせていたゲシュペンスト……そのコックピットから伸ばしたままにしていたワイヤーに足を引っ掛ける。
その重量に反応して巻き取られたワイヤーは、祐一をコックピットに導いた。

「ゲシュα、機動開始。索敵確認」

シートに座ると同時に、念の為、いつでも発進できるようにと待機モードにしていたものが起動モード、そして、戦闘モードへと移行していく。

立ち上がっていく各種パラメーター。
とほぼ同時に、モニターに映る各種データ。
だが。

「……『ヒュッケバイン』じゃない……?」

いつもならば機体識別名称に上がるその名が示されない。
それどころか『UNKNOWN』……正体不明機と示されるばかりでしかなかった。

だが、いずれにせよ。

「このまま放って置けるかよ!!」

今は都市部から離れた、人気がない所に向けて射撃をしているようだが、いつそれが都市部、人が住む場所に向けられるのか、わかったものじゃない。

そして、もしそうなれば『あの時』の二の舞だ。

「それだけはさせるか……!!
 ゲシュペンスト・α、出る!
 危ねーから近くの奴はどけてろ!!」

周囲の人間にマイクでがなりたてた後、祐一は出力を高じて、機体を発進させた。

「って、俺だけか……?」

索敵結果が示した上空に向かって、機体を浮上させながら祐一は呟いた。
その結果を肯定するように、祐一の視界の向こうに、光の砲撃が落ちていくのが見えた。

……実の所。

名雪たちやロンドベル隊も即座に動き出してはいたが、すぐさま動けるように機体準備していたのは祐一だけだった。
それは別におかしい事ではない。
ただ、祐一が誰よりも用心深かっただけだ。

ともかく、祐一のゲシュペンストはあっという間に高度を詰め、その場所に到達した。

「……あれは!?」

其処に浮かんでいたのは……白い翼と白いボディを持った、異形の機体。
天使。
そう呼ぶに相応しく、相応しくない機体。

何故ならそれは禍々しかった。

『それ』は彫刻や絵画にあるような天使像を、機動兵器の形にすればこうなるだろう、というモノ。
だが、全身に走る赤と黒の複雑な紋様が、それを禍々しくさせていた。
それが、全体的には白いのに『闇』を滲ませているような、そんなイメージを生んでいた。

言うなれば、白い堕天使だろうか……

そんな事を考えながら、祐一は全周波通信を開き、叫んだ。

「こちら連邦軍、第13独立部隊ロンドベル所属、相沢祐一!
 何処の所属か知らないが、無人機でなければ今すぐ砲撃を止めて、こっちの言う事に従え!!
 さもなくば……」
「さもなくば、撃墜する、かな」
「……な……!!」

祐一は、停止した。

「それはできないよ、祐一君」

停まらざるを得なかった。

「ま……さか……!?」

強制的に開かれた通信ウィンドウ。

そこに現れたのは、祐一の見知った顔に他ならなかった。

三年前、祐一自身が、その死を見届けたはずの。

月宮あゆという名前の少女に他ならなかった……





……続く。



次回予告。

祐一の前に現れた、死んだはずの少女。
過去との交錯、真実の行方。そして、護るべきもの。
葛藤の果てに、祐一は『引鉄』の選択を迫られる……!!

次回「護るべきもの、倒すべきもの」

乞うご期待はご自由に!





第九話はもう暫しお待ちください

戻ります