第9話 目指す星々を、語り合う・2










「……そう言えば、何か探されてたんですか?」

 遥からのみっちりお説教が終わった後、少し憔悴した様子の紫雲だったが、
 他ならぬ遥に「分かったのなら頭を切り替えて。そういうのも大事よ」と言われ、
 今はほぼ……元々あまり表情が動かないので少なくとも表向きはそう見える……いつもの表情に戻っていた。

 そんな、周囲にダンボールなどが散らかった状況を見ての紫雲の問いに、皆はそれぞれ微妙で、曖昧な表情を形作った。
 何か、気軽には話せない事柄のようだ、と紫雲は気付く。
 困っている人を助けようと事情を尋ねた時に幾度か見た事のある、訳ありな……そういう表情だったからだ。

「話し難い事なら、気にしないでください。ただ、手伝える事があれば、と思ったものなので」

 なので、その際とほぼ同じ言葉を口にする。
 ただ、実際思った、思っていることそのままを口にしているだけなので、
 テンプレートな対応というわけではないし、本人には同じ言葉を口にしている自覚は殆どなかったが。

「いや、そのッスね……」
「なんというか、ね」
「そういうわけじゃないのよ、紫雲ちゃん。状況としてはシンプルで……」
「この事務所に所属していた、アイドルの衣装を探していたんですよ」

 紀草、遥、ルーナ緋渡が口篭る中、最終的に疑問に答えたのは、社長である速水柔一だった。
 穏やかな表情を崩さないまま、彼は答える。

「元々は古い衣装なんですが、改めて仕立て直せば君のものとして使えるだろうと、ね」
「その方や事務所の皆さんにとって思い出の品なんじゃないんですか? 保存しておくべきなのでは……」
「最初に着ていた本人の望みなんですよ。
 腐らせないで、可能なら受け継がせていってほしいって。
 自分の存在がずっと続いていくようで嬉しいからって」
「……そう、ですか」

 継承してほしいもの、継承すべき事……自身の家の事情もあって、ぼんやりと、少しだけだが分かるような気はした。

 だが実際には、本当には、少し程度にも理解出来ていないのかもしれない。
 草薙家の後継者としての自分はまだ中途だし、アイドルとしてはそれ以前、なんて言うのもおこがましい状態だ。

 受け継がせたい気持ち、というのは、
 しっかりとそういったものがカタチになってからでないと分からないものではないだろうか。

 それに、そもそもの所、自分がその衣装を受け継ぐのに相応しい気はしていなかった。

 アイドルになるという橙との約束は守るつもりだし、その為に全力を尽くすつもりではいる。
 だが、そういう衣装は、最初からアイドルになりたいと思い、志すような、
 純粋にアイドルの夢を見る誰かが受け継ぐべきではないのだろうか。

 そういう思考もあって、なんとも言えない言葉と表情になってしまう紫雲であった。

「まぁ、そちらはおいおい見つけますから気にせずに。
 話は変わりますが、どうですか調子は。アイドル活動には慣れましたか?」
「正直、よく分かりません。全力で出来る事をしているつもりですが……」
「そうですか。ただ、少なくとも私達は紫雲君のお陰様で助かっていますよ」
「ほ、本当ですかっ?!」

 正式な所属が決まって以降は、名前で呼ぶようになった柔一の言葉に、紫雲の顔がパアッと明るくなる。

「仕事でてんてこ舞い、とは嘘になるので言えませんが、
 以前よりはずっと仕事が入ってくるようになりましたよ。
 紫雲君のお陰です」
「それはよかったです……速水プロの足手纏いになってやしないかと不安だったので」
「考えすぎよ、それ。実際、あの仕事のお陰で、予想以上に依頼が来るようになったからね」

 あの仕事、というのは、
 少し前、アイドル群雲紫にとっての初仕事となったヒーローショーのお姉さんの事である。
 ちょっとした話題になった、あの仕事の影響で多少なりとも関連のある依頼が事務所に舞い込むようになったのだ。

 最初は、ご当地ヒーローを主役としたローカルな特撮番組への出演だった。

 当初紫の役柄は、ヒーローに憧れて若干ストーカー気味に付き纏う少女、という微妙に濃いキャラ付けだった。
 だが、全体的に爽やかな紫の容姿や、
 彼女の実感の篭った……何せ正義の味方を志して約十年なのだ……演技プランを見た監督が、
 脚本家と連絡を取って話し合い、方向性を調整する事となった。

 それにより、彼女の役柄は純粋にヒーローを目指す少女という形になり、より紫本人との親和性を増した。
 結果、紫は周囲の想像以上に好演し、番組に関わった人々、番組を見た人々両面から好評を博す事となった。

 ちなみに、付き添いの橙は紫の演技力について若干不安視していたのだが、
 演じる、という事柄について彼女は想定以上の才覚を持っていたようだった。

 勿論まだまだ俳優と呼べるレベルではないものの、
 ある程度の基礎力と才覚が合わさって、初めてにしては上々、という域には到達していたのだ。

 これについて本人は
「ずっと男装していたから、いつの間にかそういう面が磨かれていた、かもしれないですね」
 と珍しく冗談めいた調子で呟いていた。

 ともあれ、ヒーローショーとこの番組への出演により、一部で僅かに知名度が増した事で、
 紫にはより加速度的に……と表現するにはまだまだ緩やかだが……仕事依頼が舞い込むようになった。

 ヒーロー番組と同じ局の、ローカルなご近所情報番組のリポーターだったり、
 同じような、近場のご当地ヒーロー番組のチョイ役などの他、
 以前ヒーローショーで関わった人々からの『おねえさん』再演の依頼や、
 そこから派生した、スタントめいた撮影などもあった。

「いやー、結果としてはアレって適材適所だったんスね。オレンジ兄さん、偶然の名采配ッス」
「多少は考えてたんでしょうけど……ここまでの反響まで予想していたかは、どうなのかしらね。
 ま、実際仕事も入ってくるようになったし、捻じ込めるようにもなったからいいけどね」
「紫雲ちゃんの身体能力の高さのお陰でもあるわね」
「いえ、その、お褒めいただくほどではないと思いますが、皆さんのお役に立てたのなら何よりです」

 褒められた事で縮こまり、恥ずかしげにする紫雲に、皆が微笑む。

 知名度を上げた元々の原因が原因なので、
 紫への依頼はアクション面を期待した部分も少なからずあった……
 というかご当地ヒーロー特撮番組がもろにそうであった。

 だが、普通のアイドルであれば、危険な事はさせられない、怪我したらどうする、と避けるであろうそんな仕事も、
 人間離れした身体能力を誇る紫ゆえに危なげなくこなす事が出来るし、実際こなして見せていた。

 そして、そういった仕事をこなす事で、
 危険な事も飄々とやってのけるアイドル・群雲紫の存在をよりアピール、更なる仕事を呼び込もうとしている……
 というのが彼女達の現状であった。

 ただ、今ここにいない橙としてはこの売り方を完全に肯定したいわけではないらしく、
 紫雲には「本当に危ない仕事は請けないから」と宣言していた。

 ともあれ、こうした流れ、背景もあり、アイドル・群雲紫の仕事は着実に増えていた。

 ただ問題なのは。

「……ただ、今の所、明確にアイドルらしい仕事は、
 たまにくるマイナー誌の穴埋め的グラビアと、かろうじてリポーター、ぐらいしかないところかしらね」
「それも水着じゃないし露出は少ないから、今一つ反響少なめ……いや脱げといってるわけじゃないッスよ」

 グラビアについての方針は、社長と相談の末に橙が決めたものだった。
 紫雲の姉たる草薙命が怖いから、ではなく、現段階では勿体無い、そう判断しての事である。

 紫雲自身もグラビアと言えば水着なのでは……
 通っている男子校で、クラスメートと一緒に見た事が何度かあった……
 と疑問に思って橙に尋ねた所。

『そういうのは、売れてない時にするものじゃないんだ。
 明確に売れ出した時にやって初めて最大限の効果が出るからね。
 きっちり狙いすまさないと、うん』

 との事らしい。
 その一方で、長期的に見て周知が芳しくない場合は、そういった方向も積極的に考えなくてはならないだろうが、とも零していたが。

「じわじわ知名度は上がってるから今の路線も悪くはないんだけど、
 例のフェスの選考があるからね。アイドルらしい活動もしっかり増やしていかないと」
「アイドルっぽくない活動ばっかりだから選考で弾かれ、って可能性もあるッスからね」
「確かに、そういう懸念はありますね。
 そういった意味で、紫雲君はそろそろ次の段階に移る頃合なんですが……」
「そう、まさに今がその時です……っ!」

 柔一の言葉を引き継ぐかのように、ドアが開き、一人の男がズカズカと大股で事務所に入ってきた。
 他でもない、紫雲のマネージャーにしてプロデューサーでもある、岡島橙その人である。

「橙さん」
「いや、どういうタイミングなの? 話を聞いてスタンバってたの?」
「それはともかく」

 遥の突っ込みをスルーして、紫雲の方へと向き直って橙は言った。

「草薙、次の段階が決まったよ。
 今日はその報告を聞かせる為に来てもらったようなものなんだ」
「そうだったんですか。
 ……社長さんもそうおっしゃってましたが、次というのは?」
「アイドルといえば、欠かせないものがあるだろ?」
「???」

 なんだろう、と首を傾げ考え込む紫雲。
 ……三十秒程経っても答が出なかったようで、傾きの角度を反対に向けるも、それでも浮かばず、
 うーんうーん、と考え過ぎて徐々に顔色が青く染まっていく。

 最初はご機嫌な様子で見守っていた橙だったが、そんな彼女の様子を見かねてか、少し慌てて声を掛けた。

「いやいや、悩み過ぎだから。そんなに必死に考えなくていいから。
 歌だよ。歌。
 草薙の……いや、群雲のデビュー曲が決まったんだよ」
「ああ! なるほ……歌? デビュー曲?」

 思考の渦から解放された紫雲は、喜色満面、ポンと手鼓を打った時点で動きが停止する。

 そんな紫雲に、橙はピースサインを向けた。
 そこから中指を折り曲げ、人差し指だけを立てた状態で、言葉を続ける。

「まずは一曲ダウンロード販売する。
 その売れ行き次第で、カップリング曲をつけてCD化する」
「……えぇぇぇぇえっ!?」
「あ、やっと理解した」
「しうちゃんがここまで驚く声はじめて聞いた気がするッス」
「いやだって、驚きます、んん……驚くよ。
 えと、その、橙さん、ほ、ホントですか? 販売って、値段をつけて売るって事ですよね?」
「それ以外にないだろう?」
「いやいやいや、わた、私の歌……? 商品になるとはとてもとても……」
「草薙散々練習してきたじゃないか、歌う為の発声やらなにやら。
 いつか歌う為のものだって、君だって分かって練習してただろうに」
「そ、それはそうですけど、全然実感がないというか……」
「分かるわ。
 私もそうだったし。デビュー曲の事はあまり思い出したくないけど」
「ああ、遥さんのデビュー曲、凄い意味で媚びた歌だったですもんね」
「聞いたことあるッス。めっちゃ萌えに特化したアイドルソングで……」
「忘れろ」
「「はい」」
「で、紫雲ちゃんのデビュー曲はどういう路線で行くつもりなのかしら?」

 楽しげなルーナ緋渡の問いに、そして何処か不安そうな紫雲の視線に、橙は不敵な笑みを浮かべつつ答えた。

「よくぞ聞いてくれましたっ! 
 群雲紫のデビューソング……
 ギャップを狙って、こてこてのアイドルソングも考えましたが、それだと彼女の良さを引き出せないっ!」

 アイドル、というか芸能活動の日が浅い紫雲に、
 アイドルらしい曲で感情移入して歌えるかというと、難しいだろう。
 紫雲自身は努力するだろうが、一朝一夕ではいくまい。

 演技や歌への感情移入……
 心を込める事は、経験を積めば自身から離れていても想像などで十二分に可能となる。
 だが、経験不足の頃は、それを本人の馴染みやすいものや題材で埋めるしかないのだ。

「なので、ここは彼女の個性全開に出来るよう、ヒーロー・ヒロインを題材にした歌にしました! 
 作詞・作曲は、そちら方面の主題歌を数多く手掛けられてる方に頼んで、了解を貰って、殆ど出来上がってます」
「そ、そちら方面というと……?」

 戸惑いながらも、堪えきれず、紫雲は恐る恐る橙に尋ねた。
 その問いに橙が、ニコニコと作曲者、作詞者の名前を告げると、紫雲の目が大きく見開かれた。
 直後、あわわわ、と言わんばかりの様子、ごく小さな範囲で右往左往する。

「レ、レジェンドな方々じゃないですか……!! 特撮界のみならずアニメ界でも名曲を手がけられてるっ……!」
「そんなに喜んでくれたのなら、頼んだ甲斐があったな」

 普段物静かな紫雲が動揺し、狼狽しまくりつつ、目を輝かせる様子は、彼女の思いを如実に語っていた。
 なればこそ、方々を走り回った甲斐はあったし、報われた……
 紫雲のリアクションを目の当たりにして、橙は微笑ましさと共にそう思っていた。

「ふむ、かなり有名な方々ね……なのに、予算内で依頼できたの?」
「最近はそういう方面の依頼は少ないから嬉しいって、快く提示した予算で引き受けてくださったんです。
 それに、草薙の動画を見てくださっていたのも大きかったですね」

 アイドル群雲紫の第一歩となった、
 ヒーローショーでの立ち回りや噂は、今回曲を準備するに当たって、大いに力になった。

 彼女の話題は特撮絡みの仕事を多く引き受ける人々にはしっかり伝わっており、
 彼女なら、という言葉と共に引き受けてくれた人も多かったのだ。

 ……実は、群雲紫の所属が、かつてあるアイドルを擁していた速水芸能プロダクションだから、というのも後押しになったのだが、それは橙の知るところではなかった。

「んで、折角なんで、タイアップとして、
 またゲストで呼んでいただく事が決まったご当地ヒーローの挿入歌に使ってもらう事になりました。
 そちらも互いの宣伝になるだろうから、と快く了解をいただいてます」
「うんうん、互いに利があるのは素晴らしい事ですね」
「社長のお言葉には同意しますが……無理矢理になってないでしょうね? 
 そういう挿入歌って、作品の温度と全く違うものをぶち込むと炎上するわよ? 
 それを利用した宣伝もありと言えばありだけど、そのやり方は彼女には向かないでしょうし……」
「大丈夫です。あっちの物語の展開を織り込んだ上での歌詞と曲ですから。
 という事になってるが、いける?」

 予想外の状況に、ワナワナ、と慄いていた紫雲は、橙の呼びかけに気を取り直しつつ、答えた。

「……その、えと、驚きの連続の状況に驚いているというか。
 勿論、全力で当たらせていただきますが……いけるかどうかは、正直不安です」

 大枠の視線こそ橙に定まっていたが、自信のなさゆえか、言葉の最後の方では少し眼を泳がせる紫雲。
 橙は、そんな紫雲の肩を励ますように、宥めるように、ポンポンと優しく叩く。

「正直だなぁ、草薙は。
 そんな草薙に合わせて、正直に言わせて貰うが、自分も不安はあるよ。
 なにせ、自分も君も初めての事だらけだろうからね。どうやったって不安は付き纏うさ。
 だから、力を合わせて乗り切っていこう。
 自分も自分の出来る事で君をフォローしていくから。
 草薙は、草薙の出来る事をしてくれたらいい。
 それなら、いけそうかな? 
 自分と、草薙、互いに全力を尽くせば何とかなる、自分はそう思うんだけど」

 肩に手を置いたまま語り掛ける橙の視線は、真っ直ぐであった。
 語ってくれたようなな不安の中でも、懸命に自分を見据えようとしてくれている……。
 そう感じ取った紫雲は、僅かな瞑目の後、改めて橙の目を見据え返した。
 彼の、自身への信頼に少しでも応えよう、と。

「……なんとかなる、と軽率にお答えはできません。
 ですが、私なりに行ける気がする……なんとかなるような気はしてきました。
 なので、なんとかしてみせようと思います」
「うん、今はそれで十分だ。じゃあ早速……」
「……御人好しな紫雲ちゃんの、ああいう、信頼に無条件で応えようって姿勢は、危ないけど嫌いじゃないわね。
 でも、本当の意味での信頼関係を築くのはむしろこれから。
 先取りの、形先行の信頼で、これからの事が乗り越えられるのかしら」
「それこそ、不安じゃないと言えば嘘になりますね」

 俺達も協力するッスよ、とピョコピョコ動き回りつつアピールする紀草と、
 彼を見て苦笑する紫雲と橙……そんな三人から少し離れた位置で、
 ルーナ緋渡と遥が、彼らに聞き取り難い程度の声で言葉を交わす。

「ここから先は、紫雲さんにとって、本当の意味で未知の領域になる。
 そんな暗闇を歩くような状況で、頼れるのは、頼っていかなければならないのは他でもない橙君だけ」

 紀草が言ってくれているように、自分達も勿論、出来る限りの手助け、フォローはしていくつもりだ。
 だが、結局の所土壇場・本番で戦っていくのは、紫雲自身であり、その最も近くにいる橙でしかないのだ。

「その橙君が、ちゃんと紫雲さんを引っ張って、導いて行けるのか……
 強引過ぎて、信頼を失って、前みたいに引っ張ろうとした手を振り払われなきゃいいけど」
「……そうね。そうならないように、出来る限りの事はしてあげなきゃね」

 そう語り合う彼ら、そして紫雲達のさらに向こうにある、窓際の席。
 そこには、いつの間にやら会話から離れていた社長たる柔一が、自身の席に座っていた。
 彼は、自身のお気に入りの、この事務所を作って以来ずっと使っている椅子に身体を預け傾けながら、今事務所にある全てを眺めて、静かに微笑んでいた……。










「……どうですか?」

 それから一週間後、速水芸能プロのある雑居ビルの三階で、橙が呟く。

 問い掛けた先は、紫雲の歌関連のトレーナー担当の男性……寝崎自由(しんざき・じゆう)。
 問い掛けた内容は、今披露された、紫雲が歌い上げたデビュー曲の完成度。

 不安げな紫雲、期待を込めた視線を送る橙、二人を見回して、小さく息を吐いた後、彼は淡々と告げた。

「ただレコーディングする分には問題ない。この短期間で準備したとしては上々だ」

 彼の言葉に、二人はそれぞれ安堵の表情を浮かべる……が、それは直後、いとも簡単に別の色へと塗り替えられる事となる。

「だが、俺は認めない。
 レコーディングは許可出来ない。少なくとも俺はな。
 こんな、何処に向かってるのかも分からない、張りぼての歌じゃな」

 静かな、それでいて強い彼の言葉に、紫雲も、橙も、即座に何かを返す事は出来なかった。
 二人ともが、その瞬間は、ただ呆然と、彼に視線を送る事しか出来なかった……。
 
 








 ……続く。







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