旅人が立ち止まる街角・本編



・一日の始まり

往人「ああ、よく寝た・・・・・」

俺達がこの喫茶店に寝泊りするようになって、僅かながら時が流れていた。
この町での日々に慣れていく一方、旅人としての勘を失うのではないかと危惧しているのだが・・・

ドスッドスッ!!!

往人「・・・・・」
シエル「待ちなさいセブン!せめてこれを試食・・・試飲してから逃げなさい!!」
セブン「いやですよっ、そんなカレーコーヒーなんてっ・・・離して下さい〜」
シエル「捕まえましたよ・・・・この私に逆らえるとでも・・・・・?」
セブン「マスターその笑い方怖いです!怖いですってば〜!!」

目の前に刺さった剣(黒鍵というらしい)と、目の前の惨劇を見て思う。
旅人としての勘はともかく、生物としての生存本能だけは失う事は無いだろう。



・受け取り方

セブン「美凪さん〜!マスターが私をいじめるんですよ〜!」
美凪「・・・そんなことはありませんよ。あの方はとてもあなたの事を大切にしていますよ」
セブン「え・・・?」
往人「ほう?」
美凪「セブンがいるから私は生きていけると。おっしゃっていました」
セブン「マスター・・・」
美凪「セブンがいるおかげで、ストレスを貯めることなく日々を生きていけると」
セブン「・・・」
往人「・・・それ大切にしてないだろ」
美凪「・・・え?そうですか?」
セブン「・・・」



・二者択一

シエル「では、今度はこちらを掃除してください」
往人「・・・おい」
シエル「なんです?」
往人「前々から言おうと思ってたんだが・・・俺は旅芸人として契約したはずだが」
シエル「一応、今の私は商売人ですからね」
往人「どういう意味だ」
シエル「芸人としてより、この店の労働力としての方が、夕飯の元が取れるかなーと」
美凪「なるほど」
往人「・・・納得すんな」



・直死の魔眼

遠野志貴。
直死の魔眼を持つ青年。
彼の瞳に映る死の線をなぞれば、この世に切れない物は無い。
彼の瞳に映る死の点をつけば、この世に存在できるものは無い。

往人「おい、お前」
志貴「ん?」
往人「お前、どんなものでも殺す事ができるんだって?」
志貴「先輩から聞いたのか・・・まあ、嘘じゃない」
往人「だったら頼みたい事がある」
志貴「殺人はお断りだ」
往人「そんなんじゃない・・・・・・・」
志貴(この真剣な表情・・・よほどの事か・・・・?)
往人「だったら頼む!俺の・・・俺の芸の面白くなさ加減を殺してくれ!!」
志貴「いや、それは無理」(キッパリ)



・直死の魔眼2

遠野志貴。
直死の魔眼を持つ青年。
彼の瞳に映る死の線をなぞれば、この世に切れない物は無い。
彼の瞳に映る死の点をつけば、この世に存在できるものは無い。

シエル「あちゃ・・・」
志貴「先輩、どうかしましたか?」
シエル「遠野君注文のカレーに予定以上の香辛料が入っちゃいまして。
    すみませんが、その分の辛さを殺してくれますか?」
志貴「わかりました。俺も困りますしね」
往人「便利だな。ついでに向こうの粗大ゴミも解体してくれないか?」
志貴「ええ?まあ、いいけど・・・」
美凪「本当に便利」

・・・ただ、日常に生きる限り、能力の活躍の方向性としては地味だった。



・探求者

私はネロ・カオス。
かつて死徒二十七祖だった存在。

だが、そんな私も最早過去。
今の私は埋葬機関の女に拾われた、ただの探求者だ。

志貴「お前変わったな」
ネロ「そんなことはない」
志貴「・・・いや、変わっただろ」
ネロ「最近は味を探求しているものでな。食べるか?魔眼の少年」
志貴「いらねーよ。そんな混沌ライス」
ネロ「ぬう・・・食の道は険しいな」
志貴「・・・・・それ以前の問題だろ」
ネロ「”弓”はこれはこれでといっていたのだがな」
志貴「・・・」



・混沌ライス、その味

ネロ「む。そこにいるのは法術の男」
往人「・・・何か用か?」
ネロ「これを試食してくれまいか?」
往人「・・・あのな」
ネロ「食してくれれば、報酬として混沌内に保管していた金塊を譲ろう」
往人「マジか?!」
ネロ「どうせ、私には不要なものだ。くれてやろう」
往人「そういうことなら、いいだろう」

・・・

ネロ「どうだ?」
往人「・・・ドロドロとしたこの感触・・・・・・これは・・・・・・・」

『にはは』

往人「観鈴・・・」(脳内BGM青空)・・・後、失神。
ネロ「・・・・・ぬう。AIRエンドということか・・・?しかし、それでは話に矛盾が・・・」
志貴「・・・・・何の話だよ」

ちなみに金塊は、混沌内で保管していたつもりだったのだが、溶け消えてしまっていて往人が金塊を手にする事はなかったという。

往人「・・・そんなオチかよ・・・・」



・不幸

往人「はあ・・・」(店内掃除中)
志貴「どうかしたのか?」(同じく手伝い)
往人「溜息もつきたくなるさ。俺ほど不幸な男はいないぞ」
志貴「そうか?」
往人「路銀が尽きてやむなく降りた町で食い扶持は増えるし、努力はしてるのに芸は受けない。
   おまけに、何の因果かこんなジャングルでも遭遇しないような人外魔境な喫茶店のパシリ。
   これが不幸でなくてなんだ?
   俺こそ不幸の王だ」(やさぐれ)
志貴「・・・・・あれを見てくれ」
往人「・・・?」

シエル「いいですか?遠野君はこの喫茶店のアルバイトなんです。
    そして、私は彼にとって雇い主。
    ですから、彼をどう扱おうと、この喫茶店内ならば、この私の思うままなんです」
秋葉「私は兄さんのバイトを許可した覚えはありません。
   ゆえにそんな横暴は許されるはずがありません!!」
アルクェイド「妹の言う通りよ、シエル。
       それに、そもそも志貴は私のものなんだから」
シエル「な、何を無法な事を!」
秋葉「今すぐその言葉を撤回しなさい!」
アルクェイド「嫌だって言ったら?」
シエル「・・・・・第七聖典、武装形態に移行します」(フル武装)
秋葉「・・・・・全て、奪い尽くして差し上げます」(反転)
アルクェイド「・・・へえ・・・・そう来るんだ・・・・」(目が金色)

往人「・・・・・・・」
志貴「・・・・・・・これでも、そう思うか?」
往人「・・・・・・・俺が全面的に悪かった」



・遠野の名

秋葉「あなたも遠野とおっしゃるのですか?」
美凪「はい。お近づきのしるしにこれを進呈」
秋葉「こ、これは・・・・遠野印のお米券・・・・?!」

・・・・・

秋葉「美凪さん、紅茶でもいかがですか?勿論私がお金を支払わせていただきます」
美凪「あの・・・」
秋葉「ご遠慮なさらずに」

志貴「・・・・・いったい何があったんだ・・・・・・・?」
往人「・・・・・さあ・・・・・・・?」



・魅力

秋葉「美凪さんは国崎さんと付き合っていらっしゃるのですか?」
美凪「・・・ぽ」
秋葉「なるほど。しかし、あの方の何処に魅力が?
   はたから見ているとただの社会不適格者にしか見えないんですが」
美凪「確かにそうですが・・・それだけではないんです」
秋葉「・・・人形を動かす所に非人間的な魅力があるのかもしれませんね」
往人「あんたに言われたくない」
秋葉「なにか?(反転)」
往人「なんでもないです。お嬢様」
美凪(そんな往人を見て)「・・・ぽ」
往人・秋葉『え?』



・魔術

シエル「で、こうすると・・・」
美凪「なるほど」
往人「・・・また魔術の特訓か?」
シエル「はい。美凪さんは筋がいいですよ」
往人「ほう。で、今は何を習ってるんだ?」
美凪「火葬式典という、黒鍵に炎を付加させる魔術効果です」
往人「・・・一つ聞くがそれで何をするつもりだ?」
美凪「国崎さんが操る人形に呪刻を施して着火し、ファイヤーダンスをさせるのはどうでしょう?」
往人「・・・・・・・・・・・却下だ」





・魔術2

往人「さあ、人形劇の始まりだ・・・って、どうした遠野?」
美凪「今日からは私も芸をします」
往人「言っとくが足は引っ張るなよ」

・・・

美凪「では、行きます。鳥葬式典・・・・・」

バッサバッサ・・・・

ギャラリー『おお〜』
ギャラリーA「すげえ!カラスが集まってくぜ」
ギャラリーB「よく懐いてるなあ〜」
ギャラリーC「たいしたもんだなー」

シエル「この場合、誰が足を引っ張ってるんでしょうね」
往人「・・・・・うるさい」



・とりあえずのエピローグ

「ふう・・・」

力尽きた人形を拾い上げて、往人は息をついた。
今日も収入は少ない。
これでは、まだ旅立てそうに無い。

旅をしない旅人。
そこに意味はあるのか?
そんな問いが胸の中に浮かぶ。

だが。

「国崎さん」
「・・・遠野」
「明日も頑張りましょう」
「・・・ガッツか」
「・・・ガッツです」
「美凪さんの言う通りですよー」

そこにいる、普通の人間には見えない存在の笑顔を見て思う。

こういう愉快な暮らしも悪くない。
今まで、ずっと歩いてきたのだ。
たまには足を休めるのもいいだろう。

往人はそう納得する事にした。

「セブン、いつまで油を売ってるんですか」
「マスター」
「食事の準備ができましたよ。お二人もどうぞ中へ」
「・・・そうか」
「ありがとうございます」
「いえいえ」

いずれ、別れのときは来る。
その時までは。

そう思いながら、往人たちは店の中に入っていった。

そこは喫茶店”華璃唯”。
そういう店だ。



・・・・・とりあえず、終わり。



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