君は誰?
どうしてそこにいるの?
どうしてその姿なの?
何でその姿なの?
よりによって、何でその姿なの?
死んだと思っていたのに
もういないんだって思っていたのに
君は、一体誰なの?
何でお兄ちゃんの姿をしているの?
Worldend
of FallenAngels Presents
一年前、一人の少年が光と出会った
少年は苦しみ傷つきながらこの星を絶望に塗り潰そうとする者と戦った
何とか勝利を収める少年
だが、その代償は決して小さくはなかった
少年はその心を壊されていた
勝利の代償として少年はその心を奪い去られたのだ
物語はその一年後から始まる
世界は一年前の事件から大きく変わっていた
世界各地で現れる謎の怪物
人々の恐怖を喰らい成長するその怪物こそ一年前の悪夢の残滓
その怪物達に対抗する為に地球防衛軍は特殊部隊を設立する
対MSS殲滅特別機関、通称HUNTERS
とある国での任務中、彼らは再び見た
謎の怪物と戦う光の巨人の姿を
一年前、日本のある大都市で悪夢の根元と戦い、そして消えた光の巨人の姿を
「ここの桜って有名なんだよ。明日天気が良かったら一緒に見に行こうね」
少女がそう言って車イスに座っている少年の顔を覗き込む
少年は何処を見ているのか焦点の今一つあってない瞳でぼんやりとしているだけ
「さ……くら……」
しかし少女の声は聞こえていたのだろう、小さくそう反応する
「そう、桜だよ。凄いよね、ここの桜って一年中咲いてるんだって」
少年の様子に少女は少し悲しげな表情を浮かべて、それでも声はいつもと同じく元気に出す
「……さく……ら……」
少年はやはりぼんやりしたまま、ただ小さく呟くだけ
満開の桜の前に立ち、その青年は苦笑いを浮かべる
二度と帰ってくることはないと思っていた
二度とこの桜の前に立つこともこの桜を見ることもないと思っていた
逃げるようにこの島を出て数年
この島のことを思い出したことはほとんどない
思い出したくもない
だが、ここには思い出が多すぎた
「結局、戻ってきちまった訳か」
そう呟いて、桜の幹に手を押し当てる
青年の祖母が植えたと言う一年中咲いている桜
「結局は……逃げられないって事か」
満開の桜の花を見上げて青年は自嘲する
そう、彼は逃げたのだ
この島から
この島での思い出から
この島にいる最愛の人から
全てを捨てて逃げたはずなのにまたこの島に戻ってきてしまっている
「……にい……さん……?」
背後から聞こえてきた声に青年が振り返る
そこには一番彼が会いたくない人物がいた
だから、彼は顔をしかめ、無言でその場から逃げるように走り去ってしまう
「兄さん! 待ってください! 兄さん!!」
後ろから呼び止める声が聞こえてくるが彼は足を止めなかった
不意に島を襲う嵐
その嵐と共に謎の怪物が島の近海に現れる
更にそこには怪物の島への上陸を阻むかのように光の巨人の姿もあった
降りしきる雨、吹き荒れる突風
怪物と巨人の戦いは続く
そしてそれを海岸からじっと少年が見つめている
その目が捕らえているのは戦う光の巨人の姿
心を壊されたはずの少年の目にいつしか光が戻っている
「帰ってきた……いや、ずっといたんだ……」
地球に接近する謎の隕石
その接近に伴うかのように怪物達はその力を増していく
次々と現れる怪物に苦戦する光の巨人
そしてその前に現れる最強最悪の存在
それは謎の隕石と共に飛来する
炎に包まれる街
逃げまどう人々
泣き喚く子供
破壊をもたらす黄金の悪夢
それに立ち向かう防衛軍とHUNTERSだが圧倒的に不利
「行くんですか、その身体で?」
「行くしかないだろう。やれるのは俺だけなんだ」
「今のあなたじゃ無理だ。あいつには勝てない」
「だからと言ってこのまま見過ごすわけにもいかないだろう」
「でも! 今のあなたじゃ死にに行くようなものだ!」
「……お前だってそうしたんだろ? それに俺は決めたんだ。もう逃げないってな」
黄金の悪夢と対峙する光の巨人
だが、力は黄金の悪夢の方が遙かに上
苦戦を強いられる光の巨人
とあるお墓の前で彼女は手を合わせている
「死んだと聞かされていました」
そのままの姿勢で彼女は言う
「戦場で流れ弾に当たって吹っ飛ばされたって。跡形も残らずに死んだって」
合わせていた手を放し、ゆっくりと立ち上がる
「父さんも母さんもどれだけ悲しんだかわかりますか?」
目に涙を浮かべてゆっくりと振り返る
「私がどれだけ悲しんだかわかりますか?」
彼女の後ろに立っていた青年は何も答えない
ただ、申し訳なさそうな顔をするだけだ
「私だけじゃありませんよ? みんな、兄さんを知っている人みんな、どれだけ悲しい思いをしたか」
言いながら彼女は手を振り上げ、青年の頬を打った
「わかっているんですか?」
「……すまない」
打たれた頬をそのままに青年は短くそう言った
「生きているならどうして……今まで」
「……俺は本当に死んだんだよ」
ボロボロと涙をこぼす彼女のその涙をそっと指で拭いながら青年は続ける
「今ここにいる俺はお前の知っている俺じゃない。だからもう忘れろ」
そう言って青年が浮かべたのはやはり自嘲的な笑み
「俺は死んだんだ。そう思っておけ。もう二度とお前の前には現れない。だから早く忘れろ」
それだけ言うと青年は彼女の肩にポンと手を置いて歩き出した
「そんなこと……そんなこと出来ないよ!」
彼女が歩き去ろうとする青年の背中に向かって大声で言う
「忘れる事なんて出来ない! どうして、そこにいるのに……」
彼女の声は既に涙声
だがそれでも青年は歩みを止めようとはしなかった
黄金の悪夢がその手を伸ばし、少女達を奪い去る
為す術もなくそれを見ていることしか出来ない青年
「人質ってわけかよ……何処までも卑怯な手を」
彼女達を守れなかったことに彼が悔しそうに歯を噛み締める
だが、それでも彼はまだ諦めてはいない
「助けるさ。そう決めたんだ。絶対に助けてみせる!」
最愛の者を助ける為に青年が走る
その手に光を解き放つアイテムが握られている
「俺は……もう逃げない!!」
青年の決意が奇跡を呼ぶ
心を壊されたはずの少年が光に向かってその手を伸ばす
彼の目にはかつての光が戻っている
少女の危機に彼は遂に復活を果たす
「頼む! 俺にもう一度光を!!」
その思いが奇跡を呼ぶ
地球に迫る巨大隕石
地上を蹂躙する黄金の悪夢
必死の抵抗をする防衛軍とHUNTERS
刻一刻と迫る最悪の事態
その時、光は再び降臨する
人々の思いに答えて
青年の決意に答えて
少年の熱意に答えて
光の巨人は
ウルトラマンは再びその姿を現す
星より追われし者
-The
ULTRAMAN STORY 2nd-
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